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姉よ。

姉よ。 (2)

作者: 荒城夢兎

 姉よ。

 何故今回に限り、母や私に任せず自分で洗濯をしようと思ったのか。


「姉さん。 柔軟剤って、何?」


 ソファーの上でうつ伏せに寝転がりながらり〇んを読んで居る高校二年生の姉に聞いてみた。


「うん? 服とか、やわやわになるんじゃん?」

「なるわよね。」

「なるーん。」


 びきっ! と、私が持って居るコーヒーカップが音を立てた様な気がする。

 そのままでは危ないので、カップをテーブルに避難させて深呼吸する私。


「姉さん。 ワイドハ〇ターって、何?」

「やわやわになるって言ったじゃん。」

「柔軟剤を英語で言ってもワイドハイ〇ーじゃないわ。」


 ワイド〇イターも英語では無いが。


「まじか!?」


 ばさ! と、〇ぼんを閉じる姉。 毎月買うなよ。 そんで表紙がくしゃくしゃになるまで何回読むんだよ。 ほんと、何してるのかしら高校生二年生。

 男子が大人になってもジャ〇プ買うのと一緒の感覚じゃないわ。 あたしら乙女なのですよ。

 姉が読み終わった後、こっそり私も見て居るのだが、それは内緒だ。

 いや。 それよりも漂白剤の話だ。


「じゃあ……ワイドバイター?」

「姉さん。 ハ〇ターに濁点付けても柔軟剤には進化しないわ。」

「ワイドハイッター?」

「ツッコミ難いボケはやめて頂戴。」


 姉はニヤニヤ笑っている。 こいつ、自分の非を認めずに延々とボケるつもりだ。

 私は大きく溜息を付いて、洗濯籠を洗濯機の横から居間に持って来た。

 

「これ、なんだか分かる?」

「あんたのパンツじゃん。」


 もう、直球で行くしかないと、私は洗濯された自分のパンツを、姉に見せた。


「これ、もう少しピンクだった。」

「ふーん。 え? 白いじゃん。」

「そりゃ白いわよ。 姉さんが漂白剤入れたんだから。」

「白くて良いじゃん。 綺麗じゃん。」

「…………もう良い。」


 この姉には何を言っても無駄である。

 こうなってしまえば、私が何を言おうが、姉の屁理屈によって返されてしまうのだ。

 ちなみに姉の下着は全て白である。

 パンツもカップ付きキャミソールも靴下も全て白という世界の王女なのだ。


「わーったよ。 色が付けば良いんだろ?」

「は?」


 てくてくと、台所の、冷蔵庫に歩いて行く姉。

 嫌な予感しかしない。


「やめて。 何をするの姉さん。」

「色付けるじゃん? あんた幸せじゃん?」

「そんな生臭そうな幸せフィールドは私の世界には必要無いわ。 やめて姉さん。」


 後ろから姉を羽交い絞めにする私。

 姉の手にはケチャップ。 ケチャップは赤いわ。 ピンクにはならないわ。


「あっ! 何すんだ!」


 姉が持って居るケチャップを取り返した。


 ………………………。


 ぶちゅううううううう!!!


 キャップを開け、姉の口にケチャップを絞り出す私。


「おぶぶぶぶ!! おぼぼぼぼ!!」

「直美!! お姉ちゃんに何してんの!?」


 そして、その光景が母に見つかった。

 目の前には、ケチャップで口の周りが真っ赤に染まった涙目の姉。


 姉よ。

 せめて絵の具というアイデアは出なかったのか……。

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