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白い月夜の火  作者: temso
2/5

第二部

「じゃあ、また明日な!」

「またねーっ!」

 夕暮れの中、全身を泥だらけにした少年達が手を振り合って別れていく。

「じゃな、フィーズ」

「おう、また」

 二人もそれぞれ手にした棒切れを掲げて別々の方向に歩き出した。

 結局居残りをさせられてしまったが、十分に遊ぶ時間は確保できた。日が暮れるまで棒切れを振り回す剣の稽古。仲間のうちでもフィーズとクルトは腕っ節の強いほうで、『訓練』のときはいつも二人が中心にいた。

 夕焼け空。虫の飛び交う田舎道を歩く。

 家の近く、ちょっとした雑木林に差し掛かったときだった。

「……?」

 木々の合間に、人のシルエット。赤い逆光でよくは見えない。フィーズは近づいていって、そしてそれが少年であるということを確認した。

 見知った顔だった。華奢な黒髪の、鋭い目つき。

「あ……」

 その少年――ルクは顔をフィーズのほうに向けて、そのまま何も言わなかった。

「な、何してんだ。おまえ」

「……別に」

 そうとだけ答えて、彼はそのままフィーズに背を向けた。手にした何かを放り投げ、徐々にその背中が遠ざかっていく。

 不可解なヤツだった。いつもそうだ。

 皆で遊んでいるときにはいつもいないのに、外でこうして出くわすことが少なくない。週に三回ある学校のときも、誰とも口をきかない。そのくせルクは、気付くとこちらに目を向けている。

 足元に転がった棒切れを、フィーズは拾い上げた。ルクが捨てていったものだ。真っ直ぐな木の枝で、先端のあたりは皮が削れて木地が見えている。

「……」

 フィーズは自分の『剣』とそれを見比べる。

 同じ。

 一本の木に、何度も打たれたような傷痕が残っていた。


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