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面接練習をしたり、面接に行ったりしていました。受かると良いなぁ。




その翌日、早速グランからウィスパーチャットが来た。ウィスパーチャットは個人間で出来る電話みたいなものだ。フレンド同士であればいつでも掛けることが出来る。


『ようワカ』

『何で知ってるんですかそのあだ名・・・』

『何でもいいじゃねぇか、それとも二つ名で呼ばれたいか?』

『いや、いいです!!あだ名でいいです!!』


ウチのクランは何かと目立つから、変な二つ名を付けられる事が多い。僕もこんなプレイをしているから、かなり目立っている。全貌は恐ろしくて把握していないが、一部だけでもかなり恥ずかしい二つ名が付いているようだ。話を逸らすために先を本件を聞く。


『で、何の用ですか?』

『あぁ、ウチのクラメンに獣使いビーストテイマーが居るんだが、そいつが昨日100レベになったんだ』

『それはおめでとうございます』

『おう。で、D-REXをテイムしたいって言ってんだよ。だが、生憎今日はログインしているメンバーが少なくてな・・・で、手伝って貰えねぇかと思ってな』

『ふむ、いいですよ。・・・どこで集合です?』

『そうだな・・・噴水前で一時、でどうだ?』

『はい、分かりました。噴水前に一時ですね』

『おう、よろしく頼む』

『こちらこそよろしくお願いします』


一時となると、少し時間がある。用意をしていくとするか。あ、これを見越しての時間設定なのか。グランさん、流石である。



■■■■■



昨日こそ、鉄の剣を樽で買うという豪快な大人買いをしたが、今日も似たようなものだ。投げナイフ、ポーション、爆弾といったアイテム類の購入が目的だ。そういった物は武器屋近くの道具屋に行けば大体揃うが、プレイヤーメイドでしか作れないアイテムであったり、クエストクリアの為に大量生産され安くなったアイテムなどはバザールでないと買えない。バザールは商人ギルドに金を払い予約するなら、定められた期間土地を貸し与えられ、そこで誰でも商売をすることが出来る。主に生産職プレイヤーが場を占めており、稀に行商人NPCや、自分で取って来たレアアイテムなんかを売っているプレイヤーもいる。行商人NPCからしか手に入らないレアアイテムがあるとかないとか。そんなバザールは誰もが通る道だ。僕もよくお世話になっている。バザールに行けば揃わない物は無いと言われる位だ、ただしレアアイテム以外。レアアイテムはバザールではなくオークションにかけられる事が多いからだ。逆に、バザールで売られているようなレアアイテムはレアじゃないという事でもある。つまり、紛い物か、本当にレアだが価値が無いとされている物だという事だ。


「ポーションポーションーっと、お」

「あ」


ろってぃがいた。ろってぃは薬師系ひいては錬金術師系の『スキル』を極めたプレイヤーだ。彼女は生産職系の一つの夢でもある、自分の店舗を構えるといったことはしない。根っからの研究者タイプでプレイ時間の殆どを薬剤の調合や精製、研究といった事に費やしている。その過程で出来たアイテムはウチの皆で使うか、こうして露店で売っている。ちなみに、僕がアルマさんにドラゴン肉を渡したように、僕らのクランでは各地で取れる素材を生産職の仲間に渡している。逆に、アルマさんの食堂の利益はアルマさんとクランに、ろってぃの薬の利益はろってぃとクランにといった風に還元されている。持ちつ持たれつだ。生産職のプレイヤーは戦闘能力を殆ど持たないので、守る必要がある。だから常に一人はクランホームに戦闘職のプレイヤーが居るようにしている。今週の番は師匠だ。僕?僕は違う。いつもいるから。一応ちゃんと僕の番もあるから、その時はべったりとホームに居座っている。暇だからトランプとかもする。デジタルの極みのようなゲームの中でアナログなゲームをする。非常に倒錯的だ。


「やほ」

「うん、やほ」

「何にする?」

「とりあえず全部ワンスロット分ずつ」

「だと思った。はい、20万」

「ん、はい」

「たしかに」


ろってぃは口数が少ない。ホームやウィスパーではそうでもないが、外に出ると途端に口数が少なくなる。その口数の少なさに、どうも僕は引きずられてしまうのだ。何故だ。


「ねぇ」

「何?」

「どこか行くの?」

「うん、昨日知り合った人と、砂漠に」

「そう」

「じゃ、僕はいくね」

「まって、これ持ってって」

「なにこれ?」

「融解剤と凝固剤、水に混ぜて使う。本当なら錬金に使うアイテムだけど、砂漠なら有効」

「へー」

「かも」

「なんだ」

「多分どこでも有効だと思う」

「ホントそれ?」

「何でも溶かすし、何でも固めるから」

「それって使い辛くない?」

「そうでもない。普段は少ししか使わないから」

「そうなんだ。ふーん、へー」

「本当の事言うと、余ってるから適当に使ってほしかった」

「・・・そう・・・なんだ」


一気に肩の力が抜けた。おっと、そろそろ一時だ。


「あ、そろそろ時間だし、いくね」

「いってらっしゃい」

「いってきます」


そうして僕はバザールを後にした。




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