2 閑話
さっきの『決闘』に少しではない興奮をしながら自分のクランホームへ帰って来たグラン。その少々異様な様子にクランのメンバーが声を掛ける。
「どうしたんすか団長?」
団長。それはクランの長を表す言葉だった。何を隠そうグランは爬虫類系専門クラン『リザード』のクラン長だったのだ。『リザード』はそれこそランキングなどには載らないが、その道では有名なクランであったりする。そんなクラン長のグランが興奮した様子で帰って来たのだ。疑問にも思うだろう。
「ん?はは、いやぁな、すげぇ奴に会ったんだよ」
「すげぇ奴?」
「あぁ。初心者装備と初心者スキルだけで戦う奴に会った」
「・・・初心者?あぁっ!!」
「なんだ?知ってるのか?」
知っているのかと、少しばかり落ち込むグラン。知っているなら、この興奮の理由を語ることも出来ない。
「『バラバラのボロボロ』!!」
「はぁ?なんだそれは?」
あいつ、そんな名前だったっけ?いや、違う。そんなふざけた名前じゃなかったはずだ。
「団長知らないんですか?『オプサラス』の『散財家』!!『師範代』『先生』『初心者|(笑)』『トラウマメイカー』『大番狂』『初心者狩り狩り』!!どれか聞いたこと無いですか!?無いんですかそーですか!!」
「お、おう・・・で、なんだそれ?」
メンバーの迫力に押され若干引き気味のグラン。さっきまでの興奮は吹き飛んでしまったようだ。
「だからその初心者の事ですよ。会ったんですよね?どんな人でした?」
「あ、あぁ。まぁ普通の奴だったよ」
「なんだー・・・もっとおかしな人かと思ってたのにー」
「ただ」
「ただ・・・?」
「戦闘狂の類だなあれは。普段普通な分、余計性質が悪い」
「そうそう、そういうの待ってたんです!!話、聞かせて下さい!!」
「お、おう。だからはじめからそう言ってるだろう」
そうして、弟の様なメンバーに出会いから『決闘』までを語るグランだった。
そうして新たな二つ名『騎士王』が出来たのだった。そして、それが広まるのは早かった。
ギルド会館で悶える初心者装備の男が目撃されたが、無関係であろうと切って捨てられた。