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追憶
◆
「どうした? 水野。 話って」
「先生・・・」
私はずっと、先生のことが好きだった。
先生は覚えてないだろうけど、先生と初めてあったのは、
学校じゃないんだよ・・・
いつだったかな・・・
凄くたくさん雨が降っていた日。
たまたま雨宿りに入った本屋さん。
高校受験をひかえていた私は参考書を探していた。
(あ、あれいいかも・・・)
それは、べたな出会いだった。
たとえるなら、少女漫画の王道的出会い。
(届かない・・・)
平均より少し背の低い私。
それでも、背伸びをしたらとれる位置だった。
けど、本はぎゅうぎゅうに詰まっていて、手が届くだけじゃ取れないような状況。
ふと、大きな手が伸びてきて、
「これ? はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「いいよ。 受験生? 頑張ってね」
「は、はい・・・」
一目惚れだったと思う。
かっこいい人だった。
大人って感じの清潔そうで、優しい人。
もう、二度と会うことはないって思ってた。
なのに・・・
「受験番号とお名前を教えて下さい」
自分の目を疑った。
こんな偶然ありえないと思ってたから。
こんな、”運命”的な偶然なんて・・・・・