贖罪
元に戻ると同時に戻らないものが一つだけある。
それは、高野智子本人だ。
何故なら死んでいるから。
この世にはもういないから。
私が殺してしまったから。
今まで、夢で叶った幸せの数々。
でも一つだけ違った。
私の全身が赤く染まっていたあの日。
たしかに私が高野智子を殺した。
人を殺したことが恐ろしかったのだろう。
私は高野智子を殺してしまったという事実を隠したかった。
だから、自分自身が高野智子になってしまったのかもしれない。
結果、愛する人が手に入って好都合となった。
そう考えるのもおかしくはない。
私に人を愛する資格はない。
生きている資格もない。
私は罪を犯した。
これは、けじめとして、死んで償うべきだろう。
私もここから消えようと思う。
こんな私でも先生はまた、思い出してくれるだろうか。
先生の心の中に私はいるだろうか。
私を先生の思い出の一部にしてほしかった。
・・・だけだったのに・・・
今度目を瞑ると永遠に目覚めることはない。
いくら、幸せな夢を見ても、もう目は開かれない。
逆に、辛い、苦しい夢を見ても、目は開かない。
永遠に覚めない。
私は一人、夢の中を彷徨うことになる。
でも、どんな時でもいつも私は先生のことを想っているからね。




