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endless battle  作者:
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第7話 『称狼』5


 ファングの影も見えなくなると、拓羅がノロノロと口を開いた。

「・・・楓、俺らどうなると思う?」

「さぁ?まぁ一番重要そうなのは称狼の言ってた三日待ってくれ、って言葉じゃない?」

「ふんふん」

「称狼はさ、なんで愛知に来てまであたしらをここに連れてきたんだと思う?」

「そりゃお前、ゲームに参加させるためだろう?」

「それだけじゃないと思うんだよねぇ・・・」

「なんでだ?」

「だってゲームって言ったって、じゃあなんであたしらなワケ?他にも近場に色んな人が居んのにさ。参加人数稼ぎたいだけならもっと別の人だって良かったわけでしょ?でも愛知にまで来た。で、あたしらを連れてきた。嘘までついてね。そうなったら裏があるとしか考えらんないっしょ」

「・・・確かにな。・・・もしかして、「ボス」って奴は俺らを狙ってる・・・?」

 楓は、首だけを動かして拓羅の方を見た。そして頷く。

「その可能性はあるかもね」

「でもなんのためだよ?メリットなんてなんもねぇじゃねーか」

「さぁねぇ。ソイツが考えてる事なんてあたしにわかるわけ無いじゃん」

「まぁ・・・そっか。んでもどんな奴なんだろーな?」

 ウキウキした顔で見つめる拓羅をチラリと見てから、「知るわけない」とでも言うような顔で、ため息をついた。そんな楓を放って拓羅は続ける。

「きっとブクブク太って、メガネかけて・・・」

 そこまで言うと、拓羅の動きが止まった。同時に楓も止まる。二人でドアの方をじっと見つめたまま、ピクリとも動かない。部屋にはピリピリとした空気が漂っている。そんな中で、ようやく拓羅が口を開いた。

「今・・・音、したよな?」

「うん・・・」

 そう言うと、楓は何かを感じたかのように布団から飛び出た。そのまま後ろへ下がる。

 本当に次の瞬間だった。物凄い音をたて、部屋の壁が砕けた。今まで楓が居た場所は、ガレキで埋まってしまった。

 拓羅と楓が顔を見合わせたその時、外から何者かの足音が聞こえてきた。足音は迷わず二人の居る部屋に向かってきていた。二人とも、瞬きもせず、息を殺して穴の開いた壁の外を睨んだ。

 その足音は人間の物ではなかった。聞き覚えがある。

 足音の正体は―――

「ゴーレムッ!」

 ファングの声だ。同時に穴からゴーレムが姿を現した。その後ろからファングが駆け寄ってきた。ゴーレムの上を高くジャンプし、二人の前に立った。

「何してんだゴーレム!おま・・・」

 ゴッ、という音と共に、ファングの体は壁に叩きつけられた。そのままずり落ちる。よろめきながらも四足で踏ん張り、体制を立て直す。そしてゴーレムに向かって口から炎を吹き出した。

しかし、どうやらゴーレムは自分の体の周りにバリアのような物を張っているようだ。ダメージを受けていない。

「くっそ!これじゃあ攻撃の仕様がねぇっ・・・!」

 もう一度炎を出そうとするファングの後ろから、坤が走ってきた。

「ファングーッ」

「坤・・・!」

「ゴーレムの奴、操られてるぜ!」

「なんとか助ける方法無ぇのか?」

「ダメだ。もう体内にPBDが注入されてる・・・!」

「PBDだと?・・・一体誰が・・・」

「多分、ボスだと思う」

「くそっ!あの野郎・・・!どういうつもりだ!」

 ファングの顔は、怒りの感情で溢れていた。そこに、ゴーレムの攻撃を避けながら楓と拓羅も来た。

「ファング、アイツ・・・」

「あぁ。ゴーレムだ。PBDが入って操られてる」

「・・・なんだ?PBD?」

「『puppet・battle・die』の略だ。PBD。操って戦わせ、死ぬ・・・。PBDは体内に注入されたが最後、殺さない限り治らないんだ」

「セコイな、おい」

「んな事言ってる場合じゃねんだよっ!なんとかしてゴーレムの暴走を止めねぇと!」

「二匹で攻撃すりゃいいじゃねぇか」

「ダメだ!ゴーレムの周りにはバリアが張ってあって・・・」

「ファング!」

 声がした。後ろを振り向くと、称狼が走ってきていた。

「!・・・称狼様、危険です!向こうに・・・・」

「ゴーレムのバリア・・・」

「・・・え?」

「アイツのバリアは前や横からの攻撃に強い代わりに、後ろからの攻撃は弱いんだ。しかもゴーレムが攻撃をする時、一瞬だがバリアが解かれる!そのタイミングを狙え・・・!」

「・・・なるほど・・・。ありがとうございます!坤、行くぞッ!」

「おうっ」

 ファングと坤は、並んでゴーレムの方へ走っていった。

(楓達の居る部屋には称狼様も居る・・・。なんとかしてゴーレムを他のとこに行かせねぇと!)

 考えているファングに向かって、坤が言った。

「ファング、オレがオトリになる。オレがゴーレムを引きつけて、攻撃させるようにしてみるからその間にお前が・・・」

 それ以上言う必要は無かった。坤と目を合わせ、ファングは力強く頷いた。






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