第41話 『良真みっけ!』
ジークの件も片付き、ファングとユキは改めて良真を探していた。
「もう県内に居なかったりしてなぁ」
「良ちゃんカワエエのに・・・。惜しい男を逃すことになってまうやないの」
「・・・リョウチャン・・・?もしかして、良真の事?」
「当ったり前やないか!他に誰がおるっちゅうの?」
「いや、一応聞いてみただけ・・・。お前ってホント、あだ名とか付けんの好きだよなぁ」
「ファングにも付けたろか?」
「遠慮しとく・・・」
暢気に喋りながら歩いていると、二匹の目の前を黒いものが通り過ぎていった。
「! 良真か!?」
「え?」
「あっちに行った・・・。追いかけるぞ!」
「わかっとる、わかっとる」
二匹は走り出した。少し行った所で、その「黒い物」に追いついた。
「くそっ! ・・・良真ァァッ!!!」
ファングが叫ぶと、ソイツは振り向いた。急に止まった為にファングもユキも激突した。
「いちち・・・。良真・・・?」
「・・・・・・!お前・・・」
「ドコ行くつもりだったんだ?どうせドコにも行く所なんて無いんだろ?」
「・・・」
「良ちゃん、帰ろ?・・・な?」
「・・・・・・どうせアイツらも・・・オレの事怖がって気持ち悪がるだけだ」
良真は下を向いた。
「どうしてだ?お前は気持ち悪いのか?」
「違ぇよ!!ただ・・・オレの目も牙も・・・他の奴らとは違うんだ・・・」
「目・・・?」
ファングは部屋で自分に向けられた目を思い出していた。確かに他の犬達とは全く違う。
「だけど・・・」
「お前だって気持ち悪いって思ったんだろ!?お前ら皆偽善者なんだよ!」
「・・・オレは・・・偽善を語ってるつもりは無い。・・・この際ハッキリ言おう。確かに他の奴等とは違うだろうな。だけどオレは、怖いとは思ったけど気持ち悪いなんて思って無いぞ!それに他の奴等と違って何が悪い?」
「だから!違うと気持ち悪がられるんだよ!!」
「オレは気持ち悪いなんて思わなかったっつってんじゃねぇかよ!!」
「だけど怖いとは思ったんだろ!?」
「あぁ思ったさ!!そりゃ思うだろ、普通は!!だけどなぁ!じゃあ他と違ってダメならオレはなんだ!?髪生えて魔法出せて・・・ユキだって魔法出せるぞ!?」
「・・・なんであたしを引き合いに出すん?」
ファングの後ろでユキがボソッと呟いた。しかしそんな事無視して二匹は続ける。
「だからなんだよ!?」
「っあーもー!なんで分かんねぇかなぁ!!オレらだって怖がられて当然の生き物なの!だけどアイツらは怖がったりしなかったの!!気持ち悪がったりしなかったの!!!普通に接してくれたんだよ!!・・・エセケルベロスとか、クソ犬とか言われる事もあるけど・・・」
「アンタ段々ボリューム下がってってるで?」
またもファングの後ろでユキが言った。更にまたも二匹は無視して続けた。
「アイツらはなぁ!お前が思ってるほど嫌な奴等じゃねぇんだよ!そりゃあ男勝りな無駄に強ぇ変な女だし!?女に尻に敷かれっ放しのマヌケな弱い男だし!!?」
「褒めてんの?けなしてんの?」
もう言うまでも無いだろうが、後ろで問うのはやはりユキだ。
「あぁじゃあ良かったじゃねぇか!いいお仲間さんがいてよぉ!」
「羨ましいんじゃねぇのかよ!?・・・お前も仲間になれよ!!!」
そう言ったファングを、良真は「え?」と言う顔で見た。
「・・・・・・第一、それが目的だったんじゃねぇのかよ?」
「そう、だけど・・・」
「お前が変にいじくりまわすからいけないんだぞ?オレから称狼様を奪おうとしやがって・・・。称狼様はなぁ、オレのご主人様なの!称狼様だけは絶対渡さねぇの!・・・・・・楓と拓羅は好きにしていいぞ」
「かえちゃんもたっくんもなんか可哀相やな・・・」
「べっ別にオレはソイツらが欲しいわけじゃ・・・」
「まだ意地張るか!?もういいだろ?帰るぞ、仲間!」
そう言うとファングは後ろを向いた。「仲間」と言う言葉で感激している良真を置いて、さっさと行ってしまった。
「良ちゃん、行こ!仲間は多い方が楽しいからなぁ!」
「・・・・・・」
「行かへんの?」
「アイツ・・・。オレ、なんか・・・嫌な事しちゃって・・・・・・だから・・・」
「ファングはもう怒ってぇへんよ。ファングとアンタの間で何があったんかは知らんけど、ファングも、かえちゃんもたっくんも。みんなアンタをもう仲間と思うとるんよ?」
「・・・・・・」
「男やったらそんくらいでメソメソすな!ホラ、早よ帰るで」
「・・・・・・うん・・・」
半べそ状態の良真を連れて、ユキもファングの後を追ってマンションへと帰っていった。
「おう、おかえり」
マンションに帰ると、待っていたのは称狼だった。
「称狼様だけ・・・ですか?拓羅は・・・」
「自分家帰ったぞ」
「あ。そうですか。・・・あれ?あと何か足りないような・・・・・・」
「・・・・・・お前それ本人の前だったら殺されてるぞ。凋婪さんだろ」
「あっ!そうだ、そうだ!楓・・・」
「バカ!静かにしろ!もう寝てるから・・・」
「ケッ。仲間の帰り待たないで寝るなんていい度胸してるぜ・・・」
ファングが顔をそむけていじけたように言うと、称狼はフッと笑った。
「そいえば称狼様はどうして・・・?」
「帰ってきて誰も居なかったら嫌じゃねぇ?それに・・・・・・あ、見つかったんだな?」
「え?・・・あぁ。良真ですか。ちょっと喧嘩になりましたけどね。ちゃんと見つかりました!」
「そっかそっか。良真・・・だよな?こっち来いよ。お前真っ黒でカッケェじゃん!」
称狼は笑いながら、恐る恐る近づく良真の頭を撫で回した。その後ろでブスッとしたファングが居たが、「オイ」とユキに肩を突付かれて無理矢理笑い顔を作った。




