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endless battle  作者:
40/69

第40話 『新ママ誕生』

 みーなとファングは二匹で敵を挟むような形になった。

「おりゃっ!!」

 ファングが炎を放つ。だがやはり敵はそれを喰った。

「無駄だって言ってるのがわかんないのっ!?」

「バーカ」

 ファングの攻撃に集中していた敵の背後には、みーなが迫っていた。みーなは拳を握り締めると、敵の角めがけて振り下ろした。

「うわっ・・・!」

 しかし、敵が避けたのもあるが、角は思ったよりも硬く、なかなか傷を付けられない。みーなが着地した所を狙って、敵は角を伸ばした。

「痛っ!」

 後でファングが炎を当てた。こちらを向いていなければ喰いようが無い。敵がファングの方を向いた時、もうすでにまん前まで迫っていた。

「・・・・・・!」

 ファングは、伸びたままの角に思い切り噛み付いた。しかし敵は不敵な笑みを浮かべた。

「そんなんで・・・傷付けられるかっ!」

 頭ごと動かしてファングを振り落とそうとする。その間にも、ファングの口からは煙がもくもくと上がっていた。

「オレが噛み付くだけだと思ったか・・・?」

「え・・・・・・」

「うおらぁッ!!!」

 角に噛み付いたままの至近距離で、ファングは炎を放った。見事角は砕け、敵の顔は見る見る驚愕の色に染まっていった。

 弱点の角を砕かれ、敵はその場に崩れ落ちる。ファングも飛び降りた。角からは大量の血が流れ出ている。

「・・・・・・何故ここに来た?」

 息をするのがやっとの様子の敵を見下ろし、ファングが聞いた。

「・・・ボス・・・・・・」

「ボス?・・・ラングか?」

「・・・・・・退け・・・ママの所に帰らなきゃ・・・」

「無理だ。出血多量で死ぬぞ」

 ファングがそう言っても、立とうと足を踏ん張ろうとする。だが踏ん張れば踏ん張るほど角血が出る。

「ちょっ・・・」

 そこまで言い、ファングの視線は角へと移った。真っ二つに折れたはずの角は、どんどん元の形に戻ってきている。

(再生能力・・・!?)

「・・・よし・・・!」

「あ?」

 敵は急にファングの方を向くと、角を伸ばした。

「・・・!!」

「ファングッ・・・」

 みーながそう言うのと同時に、ファングの叫び声が空に響いた。敵の角はファングの腹を刺し、体ごと宙に浮かせていた。

「・・・の、ヤロォ・・・・・・!」

「仕返しだ!死んじゃえッ!!」

 攻撃しようにも口も届かず、息を吸う事すら困難なので魔法も出せない。みーなも敵に攻撃するが、やはり効いてない様子だ。

「くぉらッ!!」

 その時、後から声がした。拓羅と楓の声だ。振り向くと、拓羅はコワイ顔を見せ、楓は自分の後ろに当たり前のように居る拓羅を、「あれ?」と言う顔で見ていた。

「・・・・・・いつ帰ってきた・・・!?」

「ついさっき!」

 拓羅は前を向きながら答えた。二人のやり取りに緊張感を無くした敵が下を向くと、ファングの腹から角が抜けた。

 地面に落とされる寸前に、みーなが体を受け止める。そしてそれと同時に楓と拓羅は敵に向かって走り出した。

「ママの所に帰るんだっ!退けよ!みんな死んじゃえ!!」

「もう居ねぇよ」

 拓羅が攻撃を止めて言った。敵の動きも止まる。

「・・・なん・・・で・・・?」

「なぁ、「ママ」ってこれの事?」

 後に称狼が立ち、何かを掴んでいる。掴んでいたのは敵と同じストラント族だった。もう生きてはいないようだが、多分母親だろう。

「! ママッ!!」

「なん・・・なん、なんであんなん持ってんの!?」

 楓は眉をしかめて称狼を見た。称狼はケロッとした顔で、「そこに転がってたんですよ」と言った。そこに拓羅が割り込んできた。

「アイツ殺ったのって・・・・・・」

 拓羅は楓の耳元でコソコソと話した。

「・・・・・・何なんそれ?なんでよ?」

「知らねぇよ。急に出てきていとも簡単に・・・」

「・・・何?何話してんだよ?俺もまぜてよ。・・・なぁってば」

 真剣な顔で話す二人の後ろで、称狼がピョコタンピョコタン跳ねている。

「なぁ!何話してん・・・」

「称狼!!黙って」

「称狼!!黙れ」

 同時に二人にそう言われ、飛び跳ねていた称狼はショックを受けた顔でしゃがみ込んだ。しかしそんな称狼を無視し、二人は話を続けた。

「やってる事が矛盾しまくりじゃん」

「そうなんだよなぁ。マジで何が目的なんだろ・・・?」

「でも見たんでしょ?」

「おう」

「・・・っていうかさ、「それ」やった後どこ行ったの?」

「左!」

「もういいです」

「・・・お前らが・・・・・・」

 二人の後ろで、敵がノソリと動いた。

「お前らが殺したんだなッ!!?」

「ちょっと待て。違うぞ。話聞け?」

「うるさい!!お前らが殺したんだ!!ママはお前らに殺されたんだッ!!!」

「お前のがうるせぇよ・・・――――!?」

 敵の角が拓羅を攻撃した。幸い腕に軽く刺さっただけだった。

「・・・いってぇな、テメェ!!何すん・・・」

「ママの仇だ!!死んじゃえッ!!みんな死ねェッ!!!」

 もう一度角を伸ばそうとした時、敵の頬に殴られた痕が付いた。

「・・・・・・!?」

「ふざけんな、バカ。勝手な事ばっか言ってんじゃないわよ」

「!! ・・・かかか楓ッ!なんでお前はそうおいしいトコばっか取って・・・」

 顔だけ起こし、ファングは泣きそうな顔で楓を見た。だがそんなファングを無視して、今度は敵が泣きそうな顔で楓を見つめた。

「ママ・・・」

「・・・・・・あん?」

「ママだぁぁぁっ!!ママの口調だぁぁっ!!会いたかったよママぁぁぁっ!」

 急に楓を見て涙を流し、そのまま突進してきた。

「・・・あれ?うそ?・・・まぢ、で・・・・・・?」

 瞬きを繰り返してそう言ってるうちに、楓は敵にのしかかられ、下敷きとなった。

「うわぁぁっ!楓!!大丈夫かっ!!」

「・・・・・・うおっ・・・背中がっ・・・いて・・・いてて・・・」

 這い出てきた楓は、背中を押さえた後、何事も無かったかのように体のホコリを払い落とした。

 敵と本人以外の誰もがその姿を怪訝な顔で見つめた。

「・・・・・・何なんだ?お前大丈夫なのか・・・?」

「ママ!これから僕はママに付いていきます!!」

「・・・いや、困る」

「ありがとう!絶対離れないよ、ママ!」

「ちょっと待て!日本語理解して!」

「分かってるよ。ママってばいつからそんなに照れ屋さんになったの?」

「分かってねぇだろ、お前」

「楓、男口調になるな。今のコイツにゃ何言ったって無駄だろ。目の前に転がってる肉親の死体だって目に入ってねぇんだ」

「あー・・・。そだねぇ」

「それにお前んとこの空も入れりゃデカイ犬二匹だろ?何かと役に立つんじゃね?・・・おいお前、名前は?」

(・・・しまった。空忘れてた・・・・・・)

 敵に向かって名前を聞く拓羅の横で、楓の顔には大きくそう書かれていた。

「僕ね、僕ジーク!ママ名前忘れたの!?」

「ジークか。ジークな・・・・・・おい楓?」

「かえちゃんなら「空ゴメン」って叫びながらどっか行ったで?」

「・・・あ、そ」

 その後、楓は一週間程空のご機嫌をとりながら過ごした。しかしそれでもしばらくは空の機嫌が直ることは無かった。



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