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endless battle  作者:
38/69

第38話 『ボケボケ少女』

 良真探しに出たファングは、まず川原を見に行った。楓と話した、あの川原だ。川原全体を見渡したが、良真は見当たらない。次にビルの隙間などを見ていく。

 しかしやはり居ない。ファングにとって良真は嫌な存在だが、何故か放っておけなかった。

(あの寂しそうな目が気になるんだよなぁ・・・)

 ファングに突っ掛かってきたときも、目の奥は寂しさを訴えているように見えて仕方が無かった。

 だがファングの心配とは裏腹に、良真は一向に見つからない。行きそうなところの見当もつかないため、見つけ出すのは困難極まりなかった。

 捜しに来てから二時間は経っている。ファングの足にも段々と負担が掛かってくる。気が付くといつの間にか、またあの川原に戻ってきていた。

「ふぅ・・・。少し休むかな」

 そう言って、ファングは芝生の上に寝そべった。ため息をつき、目を閉じる。

(・・・眠いぞコノヤロウ)

 睡魔に負けそうになった時、足音がした。ファングの目も一気に覚めた。

「良真!?」

 思わず振り返る―――しかし、そこに居たのは、一人の少女だった。

「・・・髪生えた犬だ」

 少女の第一声だ。ファングは少しムッとした。

「誰だお前?それにオレは犬じゃな・・・」

 ファングは目を凝らした。よく見てみると、少女の耳は尖っている。人間には有り得ない牙も少し見えている。口を開くとその牙は完全に姿を現した。どう見ても人間の持ち物には分類されない。

「・・・・・・人間じゃあないな・・・?」

 確かめるように言った。その瞬間、少女の目がギラリと光った気がした。ファングは攻撃態勢に入る。

「うん!」

 返ってきたのはその二文字だった。しかも少女はヘラヘラと笑っている。

「・・・う、うんっておま・・・」

「あたしね。狼!」

「狼ぃ?じゃあ狼・・・・・・少女・・・?」

「あっ、それいいね!あたしも次からそうやって呼ぶ!」

「や、いいねぇって自分の事だろ・・・」

「おじちゃん名前は?」

 ファングは「おじちゃん」と言う言葉にショックを受けた。

「おじ・・・おじちゃ・・・違う!オレはまだまだ「おにいさん」だ!」

「うん!わかった。それでおじちゃん、名前は?」

「・・・・・・もういい・・・」

 小声でボソッと言い、続けた。

「名前はファングだ」

「ファング・・・。あたしみーな!あのね、狼なの。・・・じゃなくて狼少・・・」

「さっき聞いた。歳は?いくつだ?」

「えっとね・・・十ヵ月!」

 こちらも良真と同様、「十ヵ月」とは犬の歳でだ。人間の歳で言えば十五歳くらいだろう。

「・・・今はどうやって人の姿になってるんだ?」

「わかんない」

「・・・・・・・・・。わかんないのに人になれるのか?」

「だって寝てただけなのにこうなってたんだもん。あのねおじちゃん、この世はね、リクツじゃない事で溢れてるんだよ」

「うるせぇ!ガ、ガキに言われんでもわかってんだよ!オレはもう三年も生きてんだ!それにお前、「リクツ」の意味も知らねぇで・・・」

「え、じゃあおじちゃん知ってるの?教えて教えて!」

「・・・え、えっとな・・・だから、その・・・リクツ・・・ってのはだな・・・。り、理由とか・・・道理とか・・・論理とか・・・」

 ファングは顔をそらして切れ切れとそう言う。ドンドンとボリュームが下がっていくのが分かる。

 だがみーなはわけが分かっていなかった。

「リユウ?ドウリ?ロンリ?」

「・・・そ、そうそうそう!そうだよ!ロンリーユウだ!うん。そう!リクツってのはロンリーユウで、ロンリユウ。意味わかるか?どうよどうよこれ・・・」

「おじちゃん、それを言うならオンリーユーだよ」

「・・・・・・う、うるせぇな!ギャグだよギャグ!そんくらい分かれよな!」

「いわゆる親父ギャグだね?」

「お兄ギャグだ!親父じゃねぇ!」

「でも三年も生きてりゃもうそろそろ頭の毛も抜け落ちる頃・・・」

 みーながそこまで言うと、ファングは目の前の少女めがけて炎を何発も放った。

「そういう事はあと十年してから言えッ!!」

「うわっ・・・わっわっわっ・・・」

 絶対に避けられないだろうと思っていた炎を、ギリギリではあったものの避けてしまった。バック転だ。

「・・・マジかよ・・・?」

 それを目の前で見ていたファングは目を疑ったが、すぐにみーなの前に座った。

「お前さぁ!」

「え?あっ・・・はいっ・・・」

「オレ達の仲間になれ!」

「・・・・・・・・・え?」

 みーなは顔をしかめた。



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