第33話 『ラング』
一行は日本へと帰ってきた。ユキも連れて楓の家に入ろうとしていた。鍵を開けるため、ドアノブに手をかける。
「・・・・・・あれ?」
しかし何故だか鍵が開いている。恐る恐るドアを開けてみる。中は電気も付いていない。
「なん・・・なんで・・・?」
「お前鍵掛け忘れたんじゃねぇの?」
「違うよ。ちゃんと掛け・・・」
その時、中で何かが動いた。それを見た瞬間、楓は固まった。彼女はホラー系が大嫌いなのだ。だが、中から出てきたのはホラーでもなんでもない、笑顔の称狼だった。
「称狼!」
「あー称狼様やッ!」
「楓、大丈夫か?」
みんな一斉に別々の言葉を発した。楓は固まった名残とショックで言葉が出てこなかった。
「おかえり」
満面の笑みで皆に手を振る。やっと喋れるようになった楓は、驚きの顔で当たり前な質問をした。
「アンタどうやって入ったわけ?」
「フッ・・・。凋婪さん、俺をナメちゃいけませんよ」
「や、ナメるとかそういう問題じゃないし。しかもその名前嫌なん・・・」
「凋婪?凋婪ってなんだ?お前の名前か?」
ファングが口を挟んだ。楓はファングを見ると、「中国での名前」と言った。それはファングの興奮を更に引き立てるものとなった。
「中国での?じゃあじゃあ拓羅が「菁氾」ってゆうんだな?」
「ああ」
今度は拓羅が言った。ファングは「へぇー!」と言い、それ以上は何も言わなくなった。そして称狼が続ける。
「まあ、鍵開けを身につけた、と言う事で」
「ちょちょちょちょっちょっと待て!そうゆうのが一番困る!すっごい困る!本当に困る!っていうか人の話聞け!」
「実は管理人にマスターキーを借りたんです」
「聞けっちゅうに」
小声でそう言って、楓は続けた。
「まあマスターキーを借りるとはなかなか考えたもん・・・・・・・・・・・・って・・・んな簡単に渡していいのか・・・?」
「ダメですね!」
「ダメじゃん!管理人もアンタも!よくもそんな平然と言えたもんね!」
「でも貸してくださいって言ったらすんなり貸してくれましたよ。「今出かけてるしね」って」
「出かけてるから貸すって・・・じゃあ鍵掛ける意味ないじゃないのよ。鍵も必要ないし管理人も必要ないなぁ・・・」
「あ、今有り得ない事言いましたね!そんな事言っちゃ管理人さんが可哀相・・・」
「有り得ないのはアンタの行動だろがっ!」
「んまあそんなカッカしなーい」
「・・・っつかなんで鍵借りてまで人の家に上がりこむんですかー。その辺の理由がわかんないんですけどー」
「決まってるじゃないですか。凋婪さんに会いたかったからですよ」
称狼はニッコリと笑った。
「称狼ったらかーわいー」
と言って、楓は笑いながら称狼の腹に重いパンチを入れた。
「なっ・・・何すんですかっ・・・」
「こないだの仕返し。鳩尾に一発入れたでしょ」
「・・・まだ覚えてたんですか・・・・・・」
「これでおあいこ!さー中入ろー」
「いってぇ・・・ちょっと凋婪さんッ!」
腹を押さえながら称狼も中に入った。




