第3話 『称狼』
「これからはお前らのパートナーだ、よろしくな。で、今からどこに行くんだ?オレは・・・」
「おいっ!待てよ!ファング・・・だっけ・・?」
「なんだ?オレは一歩も動いてないぞ」
「そーゆーことじゃねんだよ・・・」
一人と一匹はその場で睨み合った。しばらく沈黙が続き、先に沈黙を破ったのはファングだった。
「ケッ!」
「・・・・・・!!!」
その明らかにバカにした笑いで、拓羅の怒り度はMAXとなった。
「テメェ!殺すぞ!このクソ犬、殺すぞ!あァン!」
拓羅が歯をキリキリとこすり合わせながらファングの頭上で「グー」を作った。しかしファングも怯まない。
「フン。誰がクソ犬だ、このクソガキ」
拓羅の頭の血管が切れる音が、真っ白な空間に響いた。そしてファングに飛び掛る。が、ファングはさらりとかわした。あっさりかわされてしまった拓羅は、頭から雪の中に突っ込んだ。
「・・・ちっくしょ・・・・んのヤロォ・・・!」
それでも拓羅は懲りてないようだ。自分の上に覆い被さってきた雪を払い除けると、またもファングに向かっていった。走ろうとした時、その頭を楓に殴られ、ひとまず終わった。
気絶したままの拓羅を引きずり、洞穴まで戻る。
「はー・・・先が思いやられるわ・・・」
「コイツが悪いんだぞ」
「はいはい、わかったわかった。・・・ってかファングさぁ、なんでここ来たの?パートナーとか言ってたけど・・・」
「称狼様の命令だからさ」
「ショウロウサマ?」
「んー・・・なんつーかな・・・、まぁオレらのボスって言うか、リーダーって言うか。称狼様の後ろにももう一人居るんだが、その人が称狼様のボス。でもオレはあまり好きじゃないんだ」
「ふぅん」
楓は、分かったような分かってないような曖昧な返事で済ませた。その時拓羅が目を覚ました。
「あ、タク」
「・・・ここ、どこだ?」
「最初に来た洞穴」
「・・・あー・・・」
拓羅がまだ眠そうにしている中、ファングが声をあげた。
「!あれ、なんだ?」
二人はファングの見ている方を見た。何故か地響きがしている。
よく目を凝らして見てみると、白い物体が押し寄せてきていた。緊迫感に包まれている中、拓羅が震える口を開いた。
「・・・あれ・・・、雪崩か・・・?」
それは今、楓もファングも一番言われたくない言葉だった。しかし、どれだけ願っても起こってしまった目の前の現実は変えられない。このまま穴の中に居たら、雪に出口を塞がれて凍死、又は飢え死にしてしまうだろう。そんなふうにして死ぬなんて、この世に未練たらたらで成仏なんて出来るはずが無い。
二人と一匹は、とにかく逃げた。全速力で逃げた。後ろからは、絶え間なく危険を告知する音が聞こえていた。少しでも気を緩めれば、すぐに白い怪物に追いつかれ、餌食となるだろう。ファングはそんな中考えた。ここで全滅してしまっては元も子もない。
(オレがコイツらを守ってやる・・・!)
そう決め、少しスピードを速める。数秒で二人の前へ出た。だがそれだけでは時間的に足りない。思い切り走り、二人よりも何キロか前に出る。雪崩の方を向き、肺がはち切れるほどに息を吸いこんだ。透き通るような冷たい空気が、喉を通って肺へと引きずり込まれる。
この吸った酸素を、ファングの体内で炎に変え、それを吐き出す。そうしてファングの魔法は成立するのだ。段々と口から煙があがってきた。準備OKの合図だ。丁度良く、楓と拓羅がそばに来た。
「お前らは先に行け。なるべくオレの真後ろ走って行け。真ん中だけしかガード出来ないかもしれない」
二人を先に行かせる。そして対決の時が刻一刻と迫ってきていた。タイミングを見計らい、口を大きく開けて、口内から体内から全ての炎を出した。




