失恋の箱~1~
~1~
「嫌い。」
そう吐き出した。初めてついた嘘。
いつだって本当のことしか言えなかった私の、最後の嘘。
「……亜美。あのな、」
「うるさい。名前呼ばないで。」
「……ごめんな。」
「うるさいって、言ってんでしょ?……翔太なんて大嫌い。」
好きだった。翔太のことを心から。
好きだったけど、あいつに好きな人が出来たなら、私は、
「え?翔太が浮気?」
「うん。一緒に帰ってるところを見た子がいるんだって。」
「ただ一緒にいたとかじゃなくて?」
「さぁ……私か見たわけじゃないし。」
友達に聞いたことを、その日に翔太に問いただした。
「友達がさ、言ってたんだけど。まじ?」
どうせ翔太のことだから、ただの友達だとか、普通の知り合いだとかでしょ?
あ、妹とかオチやめてよね?従姉妹とか。
「……悪ぃ。」
「は……?」
そう言いかけて、目を見開いた。
なんで、なんで謝んのさ。
「好きな奴が、出来た。」
「……。」
「最初は本当にただの友達で。」
「でも俺から少しずつ惹かれていって。」
「亜美に悪いから忘れようと思ったんだけど。」
「告白されて、嬉しくて。」
「返事はしてないんだけど、でも。」
そう言う翔太の目に迷いはなくて。
「その子が好きなんだ。」
私は、そんな翔太の前では泣けなくて。
「亜美のことは、本当に好きだったけど、」
好きだった。そうね、過去形なんだね。
「……ごめん。」
「謝んないでくれる?」
「亜美、」
「うるさい。何も言うな。」
泣かない。まだ。まだここでは。
「……もう、いいや。」
「え?」
「飽きた。」
そう言えば傷ついたような顔をする翔太。
なんて顔してんのさ。傷ついているのは、あんたじゃないでしょ?
「……亜美?」
「、うるさいな。あんたなんて、最初から本気じゃなかったつーの!」
「……。」
「遊びのつもりで告っただけだし!勘違いしないでくれる?」
「亜美、俺は、」
「うるさいっつってんでしょ?早く、あの子のところ行けば?馬鹿同士お似合いじゃん。」
「……。」
「……っ、早く、行けっ!」
早く、早く消えてよ。私が、あんたを引き止めようとする前に。
「あぁ…………悪ぃ。じゃあな。」
「っ……!」
最後まで優しかったあいつ。最後まで本当に私が好きになったあいつのまま。
ばーか。
嫌いなわけないじゃん。
泣かないわけないじゃん。
「っ……!ふっ……!」
声を押し殺して泣いた。
ぼろぼろぼろぼろ、涙が止まらない。
「嫌い嫌い嫌い嫌い……!翔太なんか……!」
このまま、この気持ちも一緒に流れてしまえばいいのに。
「っ……好き、に決まってんじゃん……!」
君を嫌いになれればよかったのに




