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『十六章 吸血鬼とお泊まり』

我々は一つの島に来ていた、島には館が一つ佇み、カモメが辺りを飛んでいる。


「さぁ、着いたわ。ささ、なかに」


咲也は先陣を切ってドアの鍵を外す、なかは綺麗に掃除されており、ついさっきまで使われていたような感じだ。


「さて、もう夕方なんだけど、ご飯どうしようか」


「材料あるなら作るか、無いわけないだろう」


「ああ、確か冷蔵庫に―――」


と咲也は冷蔵庫を開け、中身を探索する。ちょっと待て、冷蔵庫に入れてるからって無事ってわけじゃあないぞ。


「うわ、全部腐ってる」


案の定全滅のようだ、まぁこんなことだろうと材料は持ってきた。


「お、この牛乳、ヨーグルトになってるよ!飲む?」


「お前が飲め、そして苦しめ」


「分かった、飲む」


そういい牛乳パックの飲み口を口に当て―――


「待て、バカだろお前は」


輝也は牛乳パックを奪い取り飲むことを阻止した。


「冗談だよ、ジョークだよ」


「ああ、分かったから。材料は持ってきた、カレーでも作るか」


「えー、ハンバーグがいいー」


「えーじゃないだろ、カレーの材料しかねぇよ」


「だって輝也のハンバーグ美味しいもん」


不覚にも胸が高鳴った。


「ま、カレーも美味しいけどね」


咲也は鍋を取り出し、用意をする。


「さ、作りましょ」










「それ!爆弾置くよ」


「ちょ、剥ぎ取りちゅ――ギャー」


その頃、ユナとネラプシは部屋で携帯ゲーム機で遊んでいた。


ユナはユリックも連れていけばよかったと後悔していた、こんなにも楽しいのはいついらいか。


ゲームを終え、部屋で二人は本を読んでいた、結構放置されているであろう館のくせに本は埃を被っていないのだ。


「ねぇ、ユナ」


突然ネラプシが声をかける、何?と振り返るより先にネラプシはユナに抱き着いた。


「なな何?」


ユナは突然のことに慌てる。


「フフ…可愛いねユナは」


と首筋をペロリと舐める、ゾクッとしたが振りほどこうにも振りほどけない。


「好きよ、私は貴女のこと…とても…」


普段のネラプシからは考えられない、穏やかな口調だった。ネラプシはユナの肩に噛みつく、傷付けられた肩からは出血し、ネラプシはそれを吸っていく、血を吸われる感覚にユナはボッーとしてきた。


ある程度吸うとユナをこちらに向けさせた、力が入らずされるがままである。ネラプシはユナを押し倒すとゆっくりと服を脱がせ―――――――


「おい」


甘い時間は一人の男によって遮られた。


「何よ、これから『いいところ』なのに」


ネラプシは輝也を睨む。


「じゃあ俺がその『いいところ』を見させてもらうから続けて」


「…用件はなに?」


「飯だ、行くぞ」


「へーい」


ネラプシは仄かに頬を紅く染めたユナを立たし、食卓へ連れていった。その潤んだ目や紅く染まった頬、それらがネラプシを興奮させた。


「可愛いわ、本当に…」


「おい!早くしな!」


「はーい!」


そくささと食卓へ向かった。


食卓にはカレーが並べられており、いい匂いがする。席に着くと手を合わし、カレーを食べ始める。


「うめえ!うめえ!」


ネラプシが騒ぐ。


「静かに食えんのか」


「あ、そう言えばネラプシ」


咲也がネラプシに言う。


「貴女、浮気ってどう言うこと?」


ネラプシの顔色が青くなる、ユナとのことだろう。


「そんなホイホイ手を出して…これからは貴女が攻めね?」


「すみませんでしたー!」


ネラプシは床に頭を付けて謝った。


「フフ、じゃあ今夜は少し激しくしちゃうわよ?」


「おい、ちょっと待て、お前は客人がいるなかで愛を確かめ合うとでも言うのか」


すかさず輝也がつっこむ。


「愛に時間も場所も関係ないわ!」


「なんてやつだ」


呆れたのでカレーを食べる。


食事を終え、それぞれの部屋に戻る。風呂はシャワーらしく勝手に使っていいようだ。


「さ、誰の部屋に行こうか」


ユナは隣の部屋だ、向かいの部屋に咲也、その隣にネラプシがいる。ネラプシは咲也の部屋だろう、一度扉が開く音が聞こえた。


二人を邪魔するわけにはいかない、ユナの部屋へ向かう。


二回ノックしたあと、ドアが開き、ユナが姿を見せる、暇なので来た。と伝えるとユナは部屋へ招き入れる。


「…」


「…」


会話が始まらない、ユナは無口なやつであまり会話をした記憶がないな。


「なぁユナ」


「なに?」


「吸血鬼は皆あんな感じなのか?」


あんなとは咲也とネラプシのことだ、あれが恐れられてた吸血鬼とは思えないが。


「ううん、私たちは人間と仲良くしてる吸血鬼なだけで…人間を食糧としか見てない吸血鬼も…」


「そうか、皆仲良くは難しいか」


少し残念だ。



「で、でも私たちは人間が大好きだよ?」


ユナはぎこちない動きでこちらに歩み寄り、輝也の後ろに着く。


「そ、その…輝也…!」


「…ッ!?」


ユナは輝也の首に噛み付いていた、マズイ、俺の血は毒に等しいものではなかったか?


「お、おいユナ。やめとけって!」


「……ん……美味しい…」


ダメだ聞いていない、血を吸われたせいでだんだん体が痺れてきた、いやいくらなんでも吸いすぎだ、死ぬ、これは死ぬ。


「ちょ、ユナ…そろそろやめないか?」


するとユナは口を離した、半身がビリビリと痺れている。


「どうしたんだ?急に…」


「…分からない…輝也を見てたら急に…その…」


顔は真っ赤になり、俯いていた。


「そうか、でも大丈夫か?俺の血は毒らしいし」


「…うん、美味しいけどちょっと気分が…でも……私は輝也のこと………………スー…」


ユナは眠ってしまった、気分が悪くなりながらも吸い続けるのは何故なのかは分からなかったが。


俺はユナをベッドに寝かせ、部屋をあとにした。咲也の部屋からは何か声が聞こえる、お取り込み中のようだ、ソッとしておこう。


部屋に戻り、シャワーを浴びに行く、外は静かな闇に包まれ星がよく見える。


「烏か」


そのなかに一羽の烏を見た、闇夜の烏とはこのことか、全く見えない。


シャワー室に入りシャワーを浴びる、セワンワシリー号での出来事が夢のように思えた。


さっぱりしたあと、部屋に戻りベッドに入る。暫くすると眠気が襲い、それに任せて眠った。

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