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『十四章 吸血鬼と安息』

あれから数日が経ち、いつもの日常?が帰ってきた。傷は癒え何事も無かったかのように腕や足は動く。そんなある日咲也

が言った。


「海行こうか」


「今は秋だ、それに吸血鬼だろうが」


「いや泳げないだけで」


「海ったら外だろうが、太陽どうするんだ」


「あ・・・」


「はぁ・・・」


「ごめんねー」


「うぜぇ。ああ、それはそうとなぜ俺はユナに噛まれても吸血鬼にならなかったんだ?」


「吸血鬼はね、神聖な、神の加護があるものは苦手なのよ、聖水とか聖餅とかね」


「えーとつまり?」


「貴方はマガツチの力を持ってるでしょう?厄の神とは言え神は神。吸血鬼なんて穢れた存在にはならないわ」


「なるほど・・・神ね」


「海行けないわねぇ・・・プールにしようかしら」


コロコロと話題が変わる奴だ。


「室内プールなら大丈夫だな、だけど秋だぞ」


「温水プールでしょ?問題ないわ」


まぁ温水プールでも貸切状態だろう、誰が秋にプールに行くか。


「分かった、分かった。じゃあ今週の日曜日な」


「わーい!じゃあユナをぺろぺろしてくるね!」


と言うと咲也はユナの部屋へ駆け込んだ、待て、あいつなんて言った?ユナをぺろぺろ?


「ユナあああ!」


「キャアアア!」


遅かった、ユナの部屋から悲鳴が聞こえてくる。勢いよく戸を開ける、そこには咲也に襲われているユナの姿があった。


「やめんか」


コツンと咲也の頭を叩き、ユナから引き剥がす。見ろ、呆然としてるじゃないか、可哀想に。


「おお、神よ!貴方は私たちの恋路を邪魔しようと言うのですか・・・!」


べたな演技をしてみせる。


「邪魔する、それはもう再起不能なぐらいに」


「あ、そこまでしちゃう」


咲也は大人しくなり、俺の部屋でゲームをしだした。俺は放心状態のユナを起こす、ユナは泣き出し俺はそれを慰めた。


「よくも私のユナを泣かせたわね・・・」


部屋からユリックの声がする。


「あら、妹が襲われてるのに助けに来ないようじゃあすぐに盗られるわよ?」


どうやら言い争ってるようだ。


「じゃあこれでどちらが宝を取れるか勝負よ!」


なんだ、ゲームで勝敗を決めようと言うのか?俺は泣き止んだユナを部屋に残し自分の部屋を覗いた。


「ちょ、輝也!これデータ消えてるんだけど!」


電源を点けると画面に表示されたのは0%0%0%の文字、本来そこは俺の努力により100%100%100%なのだ。


「ああ、そのゲームはデータ消えやすいんだよ、てかなんでそのゲームで勝負しようとする、格ゲーがあるじゃないか」


「そうだった!じゃあ格ゲーで勝負よ!ユリック!」


咲也はそう言うとパソコンの電源を点け、インストールされていた格ゲーをクリックし、始める。俺は放っておこうというわけでユナを連れどこかに出掛けることにした。


すっかり夏の暑さはなくなり、冷たい風が吹く季節になった。


「さみーな、服買っていてよかったな」


清香から貰った服は夏服ばかりだったので冬服を買っておいた、ここで役に立つとはな。


「あら、輝也ちゃんに・・・」


ちょうどそこに清香のお母さんと出逢う、手にはサツマイモの入った袋が。


「あ、おばちゃん。こいつはそのー居候というか・・・」


なんと説明すべきか、妖怪であることがバレれば厄介なことになりそうだ。


「へぇ居候、ねぇ」


とニヤニヤする、なんだ、別にそれ以上の関係では。


「ま、いいわ。今から神社で焼き芋するんだけど、どう?」


と言うので御言葉に甘え焼き芋を頂くことにした。


鶴野神社はすっかり秋模様になっており、清香のお婆ちゃんが落ち葉をかき集め火を着けていた。


「おぉ!輝也に――」


「あ、ユナ。っていいます」


「なんじゃ!婿に入る身と言うのに女がいるのかえ!?」


「お母さん!まだ婿に入ると決まったわけじゃ!」


「ハハハ・・・」


暫くすると焼き芋のいい香りがしてきた、頃合いを見てお婆ちゃんは落ち葉の山から焼き芋を取り出すと新聞紙にくるみ、二人に渡した。


上手に皮を剥くと濃い黄色の中身が姿を見せ湯気が勢いよく立っている。アチアチと言いながら四人は焼き芋を食べる。


「そうじゃ、清香は元気だったかの?」


突然そんなことを聞き出すお婆ちゃん。


「へ?清香・・・」


なぜそんなことを突然・・・


「見知らぬ女と社に駆け込む姿を見りゃ分かるわい、高天原へ行ったのだろう?」


全てお見通しのようだ。


「ええ、元気にしてましたよ。それに助けてももらいました」


「それはよかった、ただ気になるのは――」


とお婆ちゃんは輝也をじっと見つめる。


「その暗い、混沌とした禍々しい気じゃ。じゃがその気は決して妖怪のものではない・・・それはなんじゃ?」


まさかマガツチのことを見抜くとは。


「それは・・・」


「いや、言わんでええ。その力をどう使うかはあんた次第、わしゃ口出しせんわ。さ、豊穣の神様に感謝せんとな」


と手を合わせる、俺も手を合わせるがユナだけはしなかった。そうして二人は神社を跡にした。


「フフ」


「何を笑っておる」


「いえ、妖怪を前にして戦わないお母さんが珍しくって」


「わしゃ無害な妖怪は退治せんでの、輝也の妖怪は無害にも無害。あまりにも無害じゃ」


「本当にそれだけですか?」


「や、喧しいわい!家に入るぞ!寒いわっ!」

















「ただいまぁー」


「おかえりー、飯」


家に帰ると迎えに来たのはユリックだ。勝敗はどうなったのだろう。


「わーかった、飯な、飯」


「今日はカレーだって」


ユナは買い物袋を見せて言う、ユリックはわーいと喜び部屋へ戻る、どっちが姉だろうか。


「さ、作るか、ユナも手伝って」


「はーい」


着々とカレー作りを進めていく二人、するとユナが


「ねぇ輝也」


「なんだ」


「その・・・迷惑じゃないかな・・・?」


「なに言ってる、お前らがいて迷惑だと思ったことはねーよ」


するとユナの顔はパァと明るくなり、恥ずかしそうにまたカレーを作る作業へ戻った。


考えてみればユナは俺にとっての何なのだろうか、ただの居候。で済ますことが出来ない感じもする、だからと言って恋人?いやそこまでは・・・だが守るべき人であることに変わりはないな。


そんなことを考えているうちにカレーは出来上がり、ユリックを呼ぶ。どたどたと階段を降りてくると椅子に座り、テーブルに並べられたカレーを食べ始めた。


カレーを食べる吸血鬼二人を見てふと思う、ユナはともかくユリックは血を吸っているのだろうか?深夜に出歩く姿も見ないしそれらしい雰囲気もない。そもそも血なら俺を吸えばよいのではないだろうか、うーむ、よく分からない、直接聞いてみるか。


「なぁユリックは血は吸わないのか?」


するとユリックは含み笑いをして答えた。


「さぁ、どうかしらね」


「なんなら俺の血を」


「あのね、あんたはマガツチの力を持ってる、多少なら構わないけど貴方の血は毒に変わりないわよ」


「そうか、吸い続けたらどうなるんだ?」


「さぁね、死ぬんじゃない?」


「そうか、なるほどな」


「でも・・・輝也の血は美味しかったよ・・・?」


ユナはそう言う、フォローのつもりなのだろうか?いや別にフォローされるような状況では。


「何よ、人間のくせに」


ユリックは焼きもちを妬いたようだ。


「さて――ごちそうさま」


夕飯を済ませ、自室へ戻ると酷い荒れようだった、これがユリックと咲也の仕業なのは考えるまでもない。


ユリックを呼び出すとげんこつを一つ、そして部屋を片付けさせた。吸血鬼は人間よりも永く生きているのにどうも子どもっぽい。


「ほい、片付けたよ」


綺麗に片付けられた部屋、そしてユリックは立ち去る。しかしその手に持っているものはなんだ。


ユリックを引き戻し手に持っているものを引き剥がした、それは紛れもない俺のエロ本だった。


「何盗むつもりだったんだ!」


「これをカツラにしようと思ったんじゃ」


どこまでも惚ける奴である、しかし言い訳が下手なのには程がある。


「分かった分かった、戻れ」


そう言いユリックを部屋から追い出す、ふとネラプシを思い出した、元気にしているだろうか。少し咲也に聞いてみるか。


携帯電話を取りだし登録された咲也の番号へ発信する、数回のコールのあとに「もしもし」と咲也の声が聞こえた。


「ああ、咲也か。ネラプシは元気か?」


『まるで親ね。元気にしてるわよ、あの娘結構わがままだけど私の前じゃネコだからね』


ネコ?一体どういうことだろうか。


『昨日なんか大変よ、ずっとべったり引っ付いて、それから――――』


それから数十分、ネラプシの話を聞かされた。適当なところで電話を切る。わあ、電話代が凄いことに。


しかしこの短い間に色々あった、死にかけたこともあった。だがこのマガツチの力で生き永らえたようだけど、もしかしたら既に死んでいるのでは?と疑問に持った、だけどこの胸の鼓動は紛れもない生きている証である。


「この力をどう使うかは自分次第、か・・・」

このままだと永遠に続きそうなので一旦区切る。誤字脱字があれば教えてください。

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