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『十章 人間と救出劇』

あれから宛もなくさ迷う輝也、怒りに任せ走り続け、息があがり、ふと我に帰る。辺りを見渡せばそこは焼けた跡の圭也の別荘。


「やあ、若いの、どうかしたか?」


燃え跡の瓦礫に一人の女性がいた


「いや、ちょっと・・・人を探してて・・・」


そうだ、考えてみれば不夜城なんてどこに、クソッ!こうもしている間にユナが・・・


「へぇ、不夜城。懐かしいね」


「え?」


俺は不夜城なんて口にはしていない、なのになぜ分かったんだ。


「ん、確かに言ってない。だけど私には分かるのさ。不夜城ねえ懐かしい、私がまだ高天原にいたころは当主とよく遊んだもんだ」


とケラケラ笑う


「なあ高天原って・・・不夜城を知ってるんだな!?」


「ああ知っているさ、なんせ高天原はあたしの故郷さね」


占めた、これで高天原まで案内してもらえれば。


「案内?構わないさ」


まただ、なぜこの人には考えていることが分かるのか、いやそれより。


「本当か、なら早速──」


「そいつの言うことに耳を貸しちゃダメよ」


咲也の声が聞こえたと思うと目の前にいた少女目掛けて咲也が突っ込む。


瓦礫はさらに崩れ、土煙が辺りに立ち込める。


「大丈夫?輝也」


いつの間にか隣には咲也がいた。


「おい!なんで突然!」


「あんたは疑問に思わないの?」


土煙のなか、ゆっくりと少女が立ち上がるのが見えた。


「彼女は《覚》、あのままだと心を呑まれてたわよ?」


覚がよく分からないが、心を呑まれるとは?


「まあいいわ、私が不夜城まで案内する」


「行かせるか!あそこは私の思い出の場!私を受け入れてくれたあの方の城!」


「早く!覚自体に戦闘力はないわ!けどかつて山神だったもの、何をするかは分からない!」


「山彦ぉ!!そこの人間二人を逃がすなぁ!」


覚はそう叫ぶ、すると


「了解ぃ!!猫又たちぃ!!あの山に向かえ!!」


この山の向かいにある山から声が聞こえる。


「さて、あとはあなたたちが山から出れないようにすればいい」


ニャーと猫の鳴き声がしたかと思うと大量の猫が輝也たちを囲み、襲いかかってくる。


「私はまた山神となる、この山を使ってね、そしてあの方へ恩返しをするのだ」


「おいおい、なあ咲也、どうする」


襲いかかる猫又を振り払いながら言う、咲也はうーむと悩み。


「ダメだ、分からないわ」


「ちょ・・・」


その時だ


「対妖怪試作型戦闘兵器YASAKA、投入」


ドン!と空から人の形をした機械が落ちてくる、背中のハッチが開き出てきたのは。


「海・・・いや、ストーカー!」


「ククク、吸血鬼に勝つならばまずは妖怪の対処をせねばな。ここにいい実験所がある。行け、輝也。これは友人としてだ」


「海・・・!」


複雑な気持ちだがこれは助かる、二人は山を降り、咲也の案内に従った。


「ちぃ逃がしたか!」


「おっと、待て。お前さんたちの相手は俺だ、ではテスト開始───『対妖怪試作型戦闘兵器YASAKA───モード御柱』


腕を筒状に変型させ、辺りにいる猫又を吹き飛ばす。


「ふん、神の力を再現したつもりか人間め」


「カカッ、かつて山神だった身なら分かるだろ、諏訪を奪いし神の妻の恐ろしさ」


「だが貴様は分かっているのか?」


「第二派ぁ!!烏天狗ぅ!!」


遠くから山彦の声が聞こえる。


「貴様に味方はいない、と言うことを」















「ここは・・・」


咲也に案内され辿り着いたのは鶴野神社だった。


「ここに高天原への扉があるわ、ただ───いえ、ちょうどだわ」


「ちょうど?」


「今は逢魔時・・・高天原に行くことが出来る時よ」


咲也は輝也の腕を引っ張り、社の戸を開け、御神鏡のまえに立つ。


「お、おい。これで行けるのか?」


「・・・目を閉じて」


「うん・・・」


言われた通りに目を閉じる。それと同時に目を閉じても分かる光が二人を襲い、ぐらりとよろけるような方向が分からなくなる感覚に襲われた。















どのぐらい経ったか、目を開けるとそこは鶴野神社の社ではなく、見知らぬ森だった。


「着いたわね・・・」


やけに静かな森を歩くと突然明るくなった、太陽がそこにあるかのように。咲也はどこからか傘を取りだし体を守る。よく見れば城がある、これが─


「これが不夜城よ、やれやれ、ここに来る吸血鬼は私とユナで初めてじゃないかしら」


いざ城へ入ろうとした、そこに人が倒れているのに気づく。


「な、何があったんですか!?」


まだ意識はあるようだ、輝也は男を城壁にもたれさせる。


「何があったんですか・・・」


男はゆっくりと答えた


「ユリックが・・・危ない・・・あの野郎・・・他にも吸血鬼を・・・とにかく、少年、俺が人間に頼むのは癪だが、ユリックと、あの吸血鬼を助けてくれ!」


そう言うと男は気を失った、ユリック?それはいつの日にか聞いたユナの姉では・・・


「行こう、咲也」


「ええ、そうしましょ」













古城に踏み入れた二人はかび臭い臭いにムッとする。城内はやけに静かで人がいるのか疑わしいぐらいだった。


「覚ってやつがいうにはここに主がいるようだが」


「主ねえ、ここは数百年前に無人の城のはずよ」


「手当たり次第に探すか?」


「ええ、そうね。私は地下に、貴方は上をお願い」


「よし分かった、行ってくる」


そういい二人は別れた


「暗いなぁ・・・」


この城、やけに暗い。外は朝のように明るいと言うのに窓から一切の光が入ってきていない。不気味に思いつつ手当たり次第に進むと小さな光が見えた、占めた。と近づくとそれは蝋燭だった、誰かがさっき点けたのだろうか?まだ新しい。いやこれはありがたい、使わせてもらおう。と蝋燭を手にし、探索を続け、蝋燭があれば火を灯していく。そんなことをしている内に最上階にある大きな扉の前まで来ていた。


ゆっくりとその扉を開ける、そこは誰かの部屋のようで、ベッドや本棚が置かれていた。そのベッドに一人、少女が眠っている。


「あの・・・」


返事はない、熟睡しているようだ。輝也は少女に触れてみようと肩に手を伸ばす、手が僅かに触れたときだ。ブワッとシーツが舞ったと思えば少女の手は輝也の首を掴み、持ち上げていた。


「誰?あなた・・・」


「がっ・・・ぐっ・・・」


「・・・侵入者、じゃないようね」


パッと手を話す、ドサッと床に落ちた輝也はゲホゲホと咳き込み、少女を睨む。


「ごめんなさい、人間。ところで何か用かしら?」


「ユリック!ユナが!ユナが危ない!」


「え・・・ユ・・・ナ・・・?」


どういうことか思っていた反応ではない。


「ごめんなさい、私ちょっと記憶が・・・けど、ユナ、何か思い出しそうだわ・・・大切な・・・」


「そうか、記憶が・・・まあいい。早く!あいつは何をしでかすか!」


輝也はユリックの腕を掴み、階段を降りだす。


「ちょっと!何処へ行くのよ!」


「最上階まで来てあんたがいた、奴は地下だ!」


咲也・・・無事でいてくれ!





















「・・・ここが高天原、か」


朝日のように眩しい光のなかに佇む城を眺めて圭也は言う。


「さあ、悪を潰そうではないか」


グッと右手を握り締める、この右手に宿った力は・・・悪を消すことが出来る。


「やるしかない、待ってろ。輝也」



















「うわ、なんだこりゃ」


地下のある部屋に来た輝也は驚いた、壁や床は砕かれ、ボロボロになっている、誰かと戦ったのだろうか?


「咲也・・・」


彼女のことだ、だが本当に大丈夫だろうか。「ちょっと、ここは私の城よ。なんなのこれは」


「あのな、ここに一人吸血鬼を利用するやつが現れた、そいつはユナを拐い、ここに逃げてきたんだ」


「なるほど、この荒れ模様だとほんとに地下ね」


ユリックはずんずんと前を進む、こんなにも暗いのによくもまあ進める。


「吸血鬼は暗いところでも目が効くのよ」


「そうですか」


さらに地下へ、地下へと階段を下る二人、ふとユリックの足が止まる。


「ここが最下層、のようね」


重々しい鉄扉を開けると急に明るくなった、それは太陽の光ではなく、人工的な電気の光だった。その光のなかにシェリダンがいた、そしてその後ろには、ユナ、咲也、そして───


「清・・・香・・・?」


清香が捕らわれていた


「やあ、ようこそ。君たちはこの侵入者たちの仲間だな?」


「ああ、そうさ。返してもらおう」


「いやそれはダメだ、私はこの吸血鬼二人と──そこの吸血鬼に興味がある」


「じゃあ清香も含めて力ずくで奪ってみせる!」


黒い影が右腕を包む、それを見たシェリダンは悲しげな顔になる。


「・・・それは人が持つべき力ではないのを知っているのか?少年」


突然シェリダンの腕が伸び、輝也を襲う。輝也は不意を喰らい吹き飛ばされる。


「人が持つべきではない・・・?知らねえな!ユナを守る力に所有権はない!」


さらに黒い影を強くする


「・・・そうか、その《マガツチ》の力に呑まれる運命を選ぶか。ならば少年、貴様の目を覚まさせてやろう!自らを改造したシェリダンに勝るものはない!」


再び腕を伸ばしてくる、それをサッと避け一気に近づく!!だがシェリダンの腹から砲台が現れ、弾が打ち出される。体を襲う激痛、だが死んではいない、見ればユリックが弾を受け止めていた。


「ユリック!」


「ったく、ユナを助けるんじゃなかったの?」


弾を投げ飛ばし、シェリダンに歩み寄り、砲台をへし折る。そして腕をしっかりと掴んだ。


「吸血鬼、何のつもりだ!」


シェリダンは振りほどこうと動くが吸血鬼の力には敵わないようだ。


「さあ!今よ!」


「おおおお!!」


右腕を包む黒い影がだんだん大きくなる。そしてその渾身の右腕をシェリダンに叩き込んだ。


ドォン!と激しい衝撃によりシェリダンは気を失った、腕からは様々なコードが剥き出しになっている、恐らく動くことはないだろう。


「ユナ!咲也!清香!」


輝也は急いで三人を解放する。


「ユリック!思い出せ!ユナだ!」


しかし返事はない、ユリックはその場に倒れていた。


「ユリッ──」


「シェリダンを倒したか」


そこに圭也が現れる。


「圭也ぁ!」


「さぁ輝也、お前の悪を浄化する時だ!」


右腕から強烈な光が発せられる。思わず目を瞑る。


「さあ、始めようか。あのあと与えられた悪を滅ぼす太陽の力《八咫烏》お前は勝つことは可能か?」

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