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真子は真実の部屋のベッドで横になっていた。目の前には真実が横になって眠っている。
泣き疲れたのか、安心したのか、まるで小さな子供のような寝顔を見ながら、真子はにこやかに寝顔を眺めていた。
そんな時、頭の中に声が入ってくる。
【あら?・・女の子の靴?・・誰か来てるのかしら?】
(真弓さんだ・・)
真子は真実を起こさないようにそっとベッドから離れて部屋から出る。
そして、階段を降りて真弓のいるダイニングへと足を進めた。
「真弓さんこんにちは」
そう言ってダイニングに入る。
真弓は振り返り、そこに真子が立っているのを確認して驚いた。
「真子ちゃんだったのー!久しぶりねー、いつぶりかしら」
「2年と4ヶ月ぶりになりますね」
そう言いながら会釈をする。
「そんなになるのねー、びっくりしたわー」
「まことに会ったの?」
「はい、会って話をしました」
「あらそー、それはよかった」
真弓は真子に座るよう促した。
【あの子、まこちゃんは泣かせなかったみたいね・・・・まやちゃんは泣いて出て行ってしまったから・・】
真子は何知らぬ顔でダイニングテーブルの椅子に腰掛けながら真弓を観察する。
(真弓さんだいぶん疲れてるなー、しかも、今後の流れもよくない・・・・)
真弓はお茶と真子が大好きなバームクーヘンを差し出して椅子に腰掛けた。
真子はバームクーヘンをひと切れ口に入れ、お茶で流し込んだ後、話を切り出した。
「真弓さん、これから、信じられない話をしていきますが、しっかりと聞いてください」
真子の前置きに真弓はとても大事な話と察してくれたのか背筋をピンと伸ばし、真剣な顔で真子を見て頷いた。
「まず、私なんですけど、この2年4ヶ月、歌山県のある場所で修行していました。何故かというと・・・・人の心の声が聞こえるようになったからです」
いきなりのカミングアウトに真弓は困惑する
(えっ?人の心の声が聞こえる?)
(そんなこと、あるわけない)
「えっ?人の心の声が聞こえる?」
「そんなこと、あるわけない」
真弓の心の声を真子は代弁する。
真弓は絶句する
(えっ?うそ・・、今、私の思ったこと読んだの?)
「えっ?うそ・・、今、私の思ったこと読んだの?」
真弓は顔が青ざめていく
(やだっ、この子、怖い・・・・)
そう思った瞬間、思ってしまった事を後悔する。
真子は微笑む。
「真弓さん、怖いと思うのは自然ですよ」
「信じてもらえましたか?」
穏やかに話す真子の顔を見ながら、真弓は口を開く事ができずに頷くことしかできなかった。
真子は微笑んでいる顔から急変、真剣な表情を見せる。
「実は・・まことも私と同じく人の心を読むことが・・できるようになりました・・・・。
キッカケは吉田晴美さんが自殺した時です」
真子からの衝撃発言に真弓は雷が頭に落ちるような感覚で、全身に電気が走り回った。
それと同時に、秀壱の言葉、
『不満や愚痴は、言わないでやってくれ・・・・そして、思わないでやってくれ』
あの言葉が、すっぽり空いた隙間に、カチリとハマった。




