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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜  作者: 相賜 奏合


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[5]

充電ケーブルに繋がれたスマホは、静かに画面を灯していた。

真子はソファーに座ったまま、その小さな画面をじっと見つめている。


未読500件。


数字だけで、胸の奥が少し重くなる。

指先を伸ばせばすぐに触れられる距離なのに、なぜか動けなかった。


「・・・・はぁ」


小さく息を吐き、真子は画面を操作する。

LIMOアプリを開き、一覧を表示した。


ずらりと並ぶトーク履歴。

懐かしい名前、見覚えのあるアイコン。

そのほとんどが、中学卒業の頃で止まっている。


真子は無意識に、画面を下へ下へと送っていた。


楽しげなやり取り。

他愛もないスタンプ。

『卒業おめでとう』の文字。


――そして、途中から途切れる。


ふと、ある名前の前で指が止まった。


野元 真実


(・・・・あれ)


トーク画面を開く。

しかし、そこにはメッセージが思ったより少なかった。


最後の表示は、中学を卒業した日のまま。

メッセージは、それ以降は、何も残っていない。


(・・・・入って、ない?)


違和感が胸に残る。

何かが欠けているような、空白だけがそこにあった。


真子は画面を戻し、次のトークを開く。


裕子。


そこには、時間を隔てて送られた、いくつかのメッセージが残っていた。


『元気してる?』


少し間が空き、文面が変わる。


『西岡高校で大きな事件があった』

『テレビ観た?』

『いじめがあって・・・・』

『真実くん、学校辞めたんだよ』


短い文章が、淡々と並んでいる。

感情を抑え込んだような言葉。


真子は、画面を見つめたまま動けなかった。


(・・・・やっぱり)


胸の奥で、野元家のあのモヤが、はっきりと形を持ち始める。


次に開いたのは、麻耶とのトーク。


そこも、中学卒業の日で止まっていた。

最後のやり取りは、他愛もないスタンプ。


――ただ、一通だけ、違う日付があった。


去年の夏、7月下旬。


『まことと別れた』


それだけ。


余計な説明も、感情もない。

一行だけが、画面にぽつんと残されている。


「・・・・そっか」


小さく呟き、真子はスマホを膝の上に置いて天井を見上げる。


点と点が、静かに繋がっていく。

母の話。

野元家で見たモヤ。

空白が続いている真実のトーク画面。


(・・・・連絡、できなかったんだ)


理由は分からない。

けれど、メッセージを送れなかった事情があったことだけは、伝わってくる。


真子は、深く息を吸った。


(文字じゃ・・・・足りない)


スマホ越しでは、何も分からない。

既読か未読か、それだけで測れる話じゃない。


「・・・・行くしか、ないか」


そう呟いて、真子は立ち上がった。


向かう先は、1つしかない。


――野元 真実の家。


胸の奥で、小さな緊張が広がっていく。

それでも、足は止まらなかった。


止まっていた時間を、動かすために。

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