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無事に家へと帰ってきて、冷房の効いたリビングで、真子はソファーに深く身を沈め、寛いでいた。
「もーぅ、帰ってくるなら、ちゃんと連絡してきなさいよー、ビックリするじゃなーい」
冷えた麦茶をトレイに乗せて母が入ってくる。
「タッタラー♪ 大成功ーっ」
真子の間抜けさに母はため息をつきながらソファーに腰掛ける。
「でっ? 修行の成果はどうだったの?」
「うん、色々とあって時間かかったけどバッチリだよ」
麦茶を飲みながら答える。
母は恐る恐る尋ねる。
「今も心の声・・聞こえてるの?」
「んー? 今は聞こえなーい、オフモードにしてるからねー」
真子の言葉を聞いて、母は安堵したように息をつく。
「そっかー」
「もーっ、めちゃ大変だったよー、あの住職、超スパルタだったよ・・思い出しただけでも寒気がする・・・・」
約2年半離れていたが、あの頃と変わっていない真子を見てクスクスと母が笑っていた。
そんな母の笑顔を見て、真子は改めて穏やかな場所に帰ってきたことを実感する。
修行は本当に厳しかった。
一つ目は、
完全な無音と暗闇の中で、何日も座り続ける修行。
外からの刺激を断ち切り、聞こえてくる無数の心の声を、ただ流すだけ。
反応した瞬間、やり直しだった。
二つ目は、
街中に立たされ、能力を使うことを禁じられる修行。
怒りも悲しみも、欲も不安も、すべてが押し寄せてくる中で、
「聞かない」ことを選び続けなければならなかった。
三つ目は、
自分自身の心の声と向き合う修行。
他人ではなく、自分の奥底から聞こえてくる声を、
逃げずに最後まで聞き切る――
これが一番、心を削られた。
etc・・etc・・
しかし、あの修行のおかげで心の声を聞く能力もオン、オフ、の切り替えが出来るようになったし、新たな能力にも目覚めることができた。
悪いことばかりではない。
麦茶を再び口に含み、今は穏やかな時間を、母と共に過ごしていた。




