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本作は「恋愛をやり直しますか? ~YES or NO~」の続編です。
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あの事件から、ちょうど1年後――。
暁月駅のホームに、ひとりの女性が降り立った。
キャリーバッグの車輪が、ガラガラと乾いた音を立ててホームに響く。
「・・・・暑っ」
思わず小さく呟き、額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
見慣れたはずの駅の空気は、どこかよそよそしく、それでいて懐かしかった。
『3番線に到着した電車は、折り返し運転となります――』
機械的なアナウンスが流れ、乗客たちは次々とホームを後にしていく。
「え、3番線?」
彼女は案内表示を見上げ、眉をひそめた。
「マジでーっ! 前と停まる場所変わってるしー・・・・」
改札口までは階段を登らなければならない、
キャリーバッグをちらりと見下ろし、軽くため息をつく。
「・・・・登らないといけないじゃん」
憂鬱な気分のまま、ガラガラと音を立てて歩き出す。
ホームの床に描かれた黄色い点字ブロック、少し色あせたベンチ、
昔は気にも留めなかった風景が、ひとつひとつ目に入ってくる。
階段の手前まで来た、その時だった。
「・・・・あれ?」
視線の先、見覚えのない銀色の扉。
「・・・・わあーー!」
一気に声が弾む。
「エレベーターできてるじゃーん!
暁月駅、最高かっ!」
さっきまでの憂鬱はどこへやら。
迷いなくエレベーターに乗り込み、上昇する感覚に身を任せる。
静かに上がっていく箱の中で、心拍だけが少し速くなる。
(帰ってきたんだなー)
そう実感しながら、新しいエレベーターの匂いをクンクンしていた。
エレベーターの扉が開く。
線路の上を通り、出口へ向かうため、もう一度エレベーターに乗る。
改札口を通り、駅を出て立ち止まる。
むわっとした夏の空気と、強い日差しが一気に全身を包み込む。
全身で太陽の光を浴びるように、大きく背伸びをした。
「ふーーっ! 着いたーー!!」
青空を仰ぎ、満足そうに笑う。
「2年4ヶ月振りの凱旋っ!」
「石本真子様のお帰りだよーー!!」
誰もいない駅前ロータリーで、
彼女はひとり、テヘペロポーズを決める。
もちろん、見る人はいない。
それでも――
ここから、また何かが始まる気がしていた。




