第六話 家の外へ(岩手 後編)
岩手編後編です。
前回、座敷童子の結界に閉じ込められた悠真たち。
今回のテーマは「因果の断ち切り」。
壊すのか、救うのか。
それでは決着です。
家が、唸っている。
畳が波打ち、廊下がねじ曲がる。
出口はない。
窓の向こうも、また座敷。
「主よ、この家そのものが妖だ」
九尾が低く言う。
「座敷童子と一体化している」
天井から梁が落ちる。
ぬらりひょんの影が支えるが、長くは持たない。
「力で壊せば、座敷童子も砕けるぞ」
「それはダメだ」
俺は即答した。
座敷の奥。
赤い着物の小さな影が、膝を抱えている。
「家が壊れたら、わたしも終わる」
小さな声。
震えている。
怒りではない。
恐れだ。
北海道のヒグマは怒りだった。
青森の海坊主は試練だった。
でも、これは違う。
これは――孤独。
「福を与えた家が、争いで壊れた」
九尾が言う。
「その因果に縛られている」
畳の下から黒い糸が伸びる。
家族の怒号。
金の争い。
欲望の残滓。
それが家を縛っている。
「主、あれが核だ」
座敷の中央。
床下に脈打つ暗い光。
家の“心臓”。
「だが触れれば、因果が流れ込む」
ぬらりひょんが警告する。
俺は一歩踏み出す。
「流れ込ませろ」
「主?」
「受け止める」
床を踏み抜く。
地下へ落ちる。
暗い空間。
中央に黒い塊。
触れた瞬間――
怒号が脳を貫く。
「金は誰のものだ!」
「出ていけ!」
「福を独り占めするな!」
胸が痛む。
座敷童子の声が重なる。
「笑ってたのに」
「みんな、笑ってたのに」
視界が歪む。
因果が俺を縛る。
動けない。
でも――
「雪女!」
白い冷気が走る。
怒号が凍りつく。
「ぬらりひょん!」
影が黒い糸を絡め取る。
「海坊主!」
湿った気配が地下を満たす。
「境界を切れ!」
黒い塊が揺らぐ。
因果が薄れる。
俺は核を掴む。
「家は壊れた。でも」
力を込める。
「お前は外に出られる!」
光が弾ける。
家全体が震動する。
畳が裂け、廊下が崩れる。
だが崩壊ではない。
結界の解除。
光が座敷を包む。
赤い着物の少女が、目を見開く。
「……外?」
家の壁が透ける。
その向こうに、青い空。
「一緒に来い」
俺は手を差し出す。
小さな手が、ゆっくりと伸びる。
触れた瞬間。
黒い勾玉が浮かび上がる。
今度は濁っていない。
澄んだ光。
それが胸に吸い込まれる。
【座敷童子:加入】
能力: ・福因子強化(味方能力底上げ)
・因果反転(悪影響を跳ね返す)
・家屋結界(拠点生成)
家は消えた。
残ったのは、ただの空き地。
風が静かに吹く。
座敷童子が隣に立つ。
もう泣いていない。
「主」
「ん?」
「……ありがとう」
その言葉に、胸が少し熱くなる。
九尾が尾を揺らす。
「岩手、制圧完了」
ぬらりひょんが笑う。
「主の配下も増えてきましたな」
雪女が静かに言う。
「因果を救うとは、珍しい」
俺は苦笑する。
「壊すより、そっちの方が楽じゃない」
九尾が目を細める。
「本当に天へ帰る気があるのか?」
その問いに、すぐ答えられない自分がいた。
仲間が増える。
居場所ができる。
それでも――目的は天国。
……のはずだ。
「次は?」
「宮城」
九尾が空を見上げる。
「海と龍の気配がする」
北の霊脈は、まだ続く。
だが今は。
俺たちは一歩、南へ進んだ。
岩手編、完結です。
今回は初の
・完全救済型契約
でした。
これで現在の仲間は
九尾
ぬらりひょん
雪女
ヒグマの怨霊
海坊主
座敷童子
計6体。
戦闘バランスも徐々に広がってきました。
次は宮城。
海系妖怪が中心になります。
第一章も後半戦。
ここから戦闘規模が少しずつ大きくなります。
読んでくださり、ありがとうございます。




