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『妖転覇道(ようてんはどう)』  作者: パーカー
第一章 北の霊脈制圧編

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第五話 福の家(岩手 前編)

青森を越え、次の地は岩手。

岩手といえば――座敷童子。

幸運をもたらす子供の妖怪として有名ですが、

今回は“福”の裏側も描きます。

北海道は力、青森は境界。

岩手は――因果。

それではどうぞ。

岩手の山あいは、妙に静かだった。

 風が柔らかい。

 青森の乾いた死の気配とは違う。

 生きた土地の匂いがある。

「……普通だな」

「油断するな」

 九尾が尾を揺らす。

「この地の主級は“家”に紐づく」

「家?」

 ぬらりひょんが影を揺らす。

「座敷童子は家に棲む福の妖怪。だが――」

「家が滅べば、妖も歪む」

 雪女が淡々と補足する。

 俺たちが立っているのは、古びた日本家屋の前だった。

 瓦は欠け、庭は荒れ、人気がない。

 だが。

 障子の向こうで、何かが動いた。

「いるな」

 俺が一歩踏み出した瞬間。

 玄関が、ひとりでに開いた。

 ――ぎい。

 冷たい空気が流れ出る。

 家の中は暗い。

「お邪魔します……って、言うべき?」

「律儀だな主よ」

 九尾が呆れる。

 畳は古く、足音がやけに響く。

 奥の座敷。

 そこに、小さな影が座っていた。

座敷童子(岩手主級妖怪)

 赤い着物。

 おかっぱ頭。

 幼い顔。

 だが、その目は笑っていない。

「……また、来た」

 鈴のような声。

 青森で見た子供の影と似ている。

「お前が主か?」

 俺が問う。

 座敷童子は首を傾げる。

「ここは、わたしの家」

 床が軋む。

 次の瞬間――

 空間が歪んだ。

 座敷が増える。

 廊下が伸びる。

 出口が消える。

「結界だ!」

 ぬらりひょんが叫ぶ。

 家そのものが迷宮に変わる。

「この家に福を与え続けた」

 座敷童子の声が響く。

「でも、人は争った。欲しがった。壊した」

 畳が波打つ。

 柱が伸びる。

「だから、もう誰も出さない」

 襖が閉じる。

 闇が落ちる。

 家の中なのに、外の気配が完全に消えた。

「主、この家は“因果”を反射する」

 九尾が言う。

「欲を持つほど、迷う」

 つまり――

 力で壊すのは難しい。

「座敷童子!」

 俺は声を張る。

「なんで家に縛られてる!」

 沈黙。

 そして、かすかな声。

「わたしは、家が好きだった」

 廊下の奥、障子の向こうに小さな影。

「笑ってる顔が、好きだった」

 空気が重くなる。

 ぬらりひょんが囁く。

「主よ、これは単純な敵ではない」

 その瞬間。

 天井から巨大な梁が落ちてくる。

「危ない!」

 雪女が氷壁を張る。

 衝撃。

 家全体が揺れる。

 座敷童子の気配が変質する。

「でも、もう壊れた」

 声が冷たくなる。

 畳の隙間から無数の手が伸びる。

 足を掴まれる。

「福を求める人間は、みんな同じ」

 圧迫感。

 呼吸が重い。

 ここは“家”。

 守る場所のはずなのに、牢獄になっている。

「主、核は家の中心にある」

 九尾が告げる。

「座敷そのものが心臓だ」

 つまり――

 座敷童子に触れるだけでは足りない。

 家の因果を断ち切らなければならない。

 俺は立ち上がる。

「なら、壊すんじゃない」

 ぬらりひょんと雪女を見る。

「道を作る」

 座敷童子の目がわずかに揺れた。

「出たいか?」

 小さな沈黙。

 ほんのわずか。

「……外は、怖い」

 家が唸る。

 迷宮が閉じ始める。

 時間がない。

 俺は拳を握る。

「だったら、一緒に来い」

 その言葉と同時に、家が大きく軋んだ。

 結界が強まる。

 畳が牙を剥く。

「主、反撃が来る!」

 岩手決戦、開幕。

岩手前編でした。

今回は「戦う=倒す」ではなく、

・家の因果

・福の裏側

・縛られた妖怪

をテーマにしています。

座敷童子は本来、福を呼ぶ妖怪。

ですが、家と運命を共有する存在でもあります。

後編では、

・どうやって“家”を攻略するか

・座敷童子は仲間になるのか

が焦点になります。

次回、岩手決着。

第一章もいよいよ中盤です。

読んでくださりありがとうございます。

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