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『妖転覇道(ようてんはどう)』  作者: パーカー
第一章 北の霊脈制圧編

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第四話 境界を越える者(青森 後編)

青森編後編です。

前回、悠真は恐山の湖へ沈みました。

今回のテーマは「死の受容」。

力で押し切る北海道とは違い、

青森は“理解”が鍵になります。

それでは決着です。

冷たい。

 音がない。

 光もない。

 湖の底。

 沈んだはずの俺は、暗闇の中に立っていた。

 いや、立っている感覚だけがある。

 足元も、水もない。

 ただ黒い空間。

「……ここが、死?」

 違う。

 これは境界。

 生と死のあいだ。

 目の前に、無数の影が浮かぶ。

 知らない顔。

 知っている顔。

 母。

 友人。

 事故現場。

 赤いブレーキランプ。

 止まらないトラック。

「まだ終わってない」

 そう言い聞かせる。

 だが、影が囁く。

 ――帰れない。

 ――やり直せない。

 ――お前は死んだ。

 胸が締め付けられる。

 その奥で、黒い光が脈打っている。

 巨大な核。

 湖そのものの心臓。

「理解したか」

 背後から声。

 振り返ると、海坊主が立っていた。

 ここでは湖と同化していない。

 僧の姿で、静かに俺を見る。

「死とは終わりだ。戻れぬ」

「……分かってる」

「未練を抱えたままでは、境界は越えられぬ」

 拳を握る。

「未練があるから、進むんだろ」

 海坊主の目が細くなる。

「ほう?」

「後悔がある。謝れなかった。伝えられなかった」

 胸が痛む。

 でも、逃げない。

「だから、終わらせに行く」

 俺は一歩踏み出す。

 黒い核へ向かって。

「俺は死んだ。でも」

 声を張る。

「だからって止まる理由にはならない!」

 影が俺を掴む。

 引きずり込もうとする。

 だが――

 白い冷気が走る。

「主」

 雪女の声。

 氷の光が闇を照らす。

 足元が凍り、沈まなくなる。

 さらに影が伸びる。

「主よ、現実に戻れ」

 ぬらりひょん。

 黒い影が俺を支える。

 そして、九尾の声。

「悠真。死を否定するな」

 はっとする。

「死を受け入れ、その上で進め」

 ……そうか。

 俺は死んだ。

 それは変えられない。

 でも。

「だったら、死んだ俺でやる」

 黒い核に手を伸ばす。

 今度は冷たくない。

 ただ、重い。

「海坊主」

「なんだ」

「お前は境界の主だろ」

「いかにも」

「だったら、俺を見極めろ」

 核を掴む。

「俺は逃げない」

 力を込める。

 闇が震える。

 湖面が激しく揺れる。

 現実世界――

 宇曽利湖が渦を巻く。

 湖の中央から、光が立ち上がる。

「……見事」

 海坊主が静かに目を閉じる。

 黒い核が、手の中で収束する。

 闇が晴れる。

 水が引く。

 俺は湖岸に立っていた。

 全身ずぶ濡れの感覚だけが残る。

 だが呼吸はできている。

 海坊主は膝をついた。

「主として認めよう」

 黒い勾玉が浮かぶ。

 それが胸へ吸い込まれる。

【海坊主:加入】

能力: ・水域支配

・死霊波動

・境界転移(短距離)

 恐山の風が静まる。

 曇天の隙間から、わずかに光が差す。

 九尾が言う。

「青森、制圧完了だ」

 雪女が静かに頷く。

「主よ。あなたは強い」

「いや」

 俺は首を振る。

「まだ弱い」

 でも。

 少しだけ、分かった気がする。

 死を背負って進むこと。

 境界を越えること。

「次は?」

「岩手」

 九尾が空を見上げる。

「家に棲む福の妖怪――座敷童子」

 俺は拳を握る。

「行こう」

 北の霊脈は、さらに南へ続く。

青森編、完結です。

北海道=物理バトル

青森=精神・境界戦

と、戦い方を変えてみました。

海坊主を恐山に配置したのは、

「湖=あの世への入り口」

という解釈からです。

ここで主人公は

・死を受け入れる

・未練を否定しない

という一歩を踏み出しました。

次回、岩手編。

登場は――座敷童子。

ですが、単なる可愛い妖怪では終わりません。

第一章は後半戦に入ります。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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