第二十話 港の影(神奈川 前編)
東京での衝突から一夜。
管理局との関係は“監視付きの休戦”。
次なる地は神奈川。
港町――横浜。
ここは“海外の気配”が混じる場所。
そして、都市霊脈とはまた違う流れが待っています。
それではどうぞ。
潮の匂いがする。
東京湾を南へ下り、辿り着いたのは横浜。
高層ビルと赤レンガ倉庫。
夜景が海面に揺れる。
「……少し落ち着くな」
宮城の海とは違う。
ここは人の港だ。
「気を抜くな」
九尾が低く言う。
「この港は“外”と繋がっている」
「外?」
天狗が空を見上げる。
「海の向こうの気配が混じっている」
確かに。
都市霊脈の流れの中に、異質な線がある。
日本の霊とは違う。
重く、絡みつくような気配。
その瞬間。
港のクレーンが軋む。
海面がざわつく。
「……来るぞ」
海坊主が前へ出る。
だがこれは、海坊主とは質が違う。
黒い霧がコンテナの間から溢れる。
低い囁き声。
聞き慣れない言語。
そして。
赤い瞳が闇に浮かぶ。
吸血鬼
長いコート。
白い肌。
鋭い牙。
だが和の妖怪とは明らかに違う。
西洋の“怪”。
「……ほう」
男は笑う。
「霊王か」
背筋が冷える。
「地獄の噂は本当らしい」
九尾の尾が揺れる。
「海外の干渉か」
吸血鬼はコンテナの上に降り立つ。
「この港は便利だ」
手を広げる。
黒い霧が広がる。
港湾労働者の気配が揺らぐ。
「魂を少し借りるだけ」
「させるか!」
なまはげが鬼気を放つ。
だが霧がすり抜ける。
物理でも霊体でもない。
「都市霊脈と海外魔脈が混じっている」
ぬらりひょんが分析する。
「厄介ですな」
吸血鬼が俺を見下ろす。
「君は均衡を整えるのだろう?」
不気味に笑う。
「ならば試そう」
次の瞬間、消える。
速い。
天狗並み。
背後から衝撃。
俺は吹き飛ばされる。
影が防ぐが貫通する。
「血は甘いか?」
耳元で囁く。
冷たい牙が迫る。
「主!」
雪女が凍結させる。
だが凍らない。
「体温がない……?」
吸血鬼が笑う。
「不死は厄介だろう?」
海坊主が水流を叩きつける。
ヒグマが突進。
だが霧化して回避。
再び実体化。
「面倒だな」
俺は立ち上がる。
「海外からの干渉」
地獄の黒幕。
都市管理局。
そして今度は吸血鬼。
世界は、確実に広がっている。
「港は“穴”だ」
九尾が言う。
「ここから外の霊が入り込む」
「封じるか?」
「いや」
九尾が俺を見る。
「お前の力を見せろ」
《霊脈統合》を展開。
都市霊脈と港の流れを読む。
海からの線。
海外魔脈の接続点。
そこに吸血鬼の核がある。
「見つけた」
吸血鬼の目が細まる。
「ほう?」
地面を蹴る。
霧の中心へ。
雪女が冷気で霧を押し留める。
なまはげが鬼気で道を開く。
天狗が上空から封鎖。
海坊主が海側を遮断。
仲間の連携。
吸血鬼が初めて眉をひそめる。
「……面白い」
だが次の瞬間。
空が暗くなる。
港の上空に、黒い影。
巨大な蝙蝠の翼。
吸血鬼は一人ではない。
「歓迎しよう」
低い声が響く。
「霊王よ」
港の戦いは、まだ序章。
神奈川編、本格開始。
第二十話でした。
神奈川は
・港
・海外との接続
・魔脈の侵入
がテーマです。
いよいよ“世界編”の伏線が本格化。
吸血鬼は単体ボスではなく、
海外勢力の前哨です。
次回、
・吸血鬼との決着
・黒幕のさらなる示唆
に進みます。




