第十七話 首都の主
管理局との衝突を経て、
ついに“東京の主級妖怪”が姿を現します。
都市は自然霊だけで成り立っているわけではない。
長い歴史の中で、怨念もまた積み重なっている。
関東霊都編、本格バトル開始です。
夜の東京。
ネオンが雨に滲む。
管理局の女が去ったあとも、空気は張り詰めていた。
「視られている」
天狗が低く言う。
ビルの屋上から周囲を睥睨している。
「人ではないな」
九尾の尾がゆらりと揺れる。
「都市霊脈の“核”が動いた」
その瞬間。
地面の奥から、低い振動。
地下鉄の走行音とは違う。
もっと古い。
もっと湿った気配。
「……来るぞ」
ぬらりひょんの影が広がる。
アスファルトに亀裂が走る。
マンホールの蓋が吹き飛ぶ。
黒い霧が噴き上がる。
その中から、細長い影が立ち上がる。
大百足
巨大な百足。
節ごとに赤く光る眼。
鉄のような外殻。
東京の地下を這う怪。
「……でけえな」
ヒグマが低く唸る。
大百足がビルの壁をよじ登る。
その足がコンクリートを砕く。
「都市の地下霊脈を喰らう存在だ」
九尾が告げる。
「古くは武将に討たれたが、怨念は残る」
大百足の頭部がこちらを向く。
無数の眼が、俺を捉える。
『……集めし者』
直接、頭に響く声。
『均衡を乱す者』
「乱してない」
俺は睨み返す。
「調整してるだけだ」
『都市は人の檻』
百足の体がしなる。
『解き放て』
次の瞬間、突進。
速度が異常だ。
「散開!」
ヒグマが体当たりで軌道を逸らすが、弾かれる。
雪女の氷槍が外殻で砕ける。
なまはげの鬼気も滑る。
「硬い!」
天狗が空から斬撃を放つ。
だが外殻が弾く。
大百足が地面に潜る。
アスファルトが波打つ。
「主、地下に霊脈集中!」
海坊主が叫ぶ。
地下鉄のトンネルが振動する。
このまま暴れれば、大惨事だ。
「上に出せ!」
鰐鮫の守護領域を展開。
ビル街の上空に防壁を張る。
座敷童子が因果を調整し、一般人への被害を最小化。
だが百足は止まらない。
ビルの柱を巻き付く。
崩落寸前。
「都市霊脈を喰わせるな!」
九尾が炎を放つ。
百足の顔面を焼く。
だが再生する。
「……再生能力か」
俺は息を整える。
地下霊脈を喰う?
つまり。
「供給を断てばいい」
天狗が頷く。
「地下の流れを一時的に遮断できる」
「やれ」
天狗の風が地下へ潜る。
海坊主の水流が地下トンネルを満たす。
雪女が凍結。
霊脈の流れを鈍らせる。
大百足が暴れる。
『奪うか』
「奪わない」
俺は踏み込む。
《霊脈統合》を都市仕様に展開。
地上と地下の境界に、自分の力を差し込む。
百足の核を探る。
胴体中央。
暗い紫の光。
怨念と飢餓の塊。
「東京に縛られてるな」
『縛るのは人だ』
怒りが流れ込む。
土地を削り、地下を掘り、流れを縛った人間。
自然霊脈を閉じ込めた都市。
百足は、その歪み。
「だからって、壊させない」
ヒグマが押さえつける。
なまはげが鬼気で動きを鈍らせる。
天狗が風で視界を奪う。
雪女が節を凍らせる。
仲間が道を作る。
俺は跳ぶ。
百足の胴へ。
鋼の殻を殴る。
ひびが入る。
紫の核が露出する。
『止めるか』
「止める」
核を掴む。
強烈な反発。
だが離さない。
都市霊脈がうねる。
管理局の結界も反応する。
東京全体が震える。
次の瞬間。
背後から声。
「やめなさい!」
振り向く。
管理局の女。
さらに、その背後に――
スーツ姿の男。
強烈な霊圧。
「それ以上は、都市全域が不安定になる」
男の目が俺を射抜く。
「主級干渉許可を出せ」
低い声。
管理局の“上”。
大百足の核が暴れる。
俺は迷う。
倒すか。
止めるか。
東京が、試している。
関東霊都編、次局面へ。
第十七話でした。
東京の主級妖怪は
「大百足」
都市地下霊脈の歪みの象徴です。
今回は単純制圧ではなく、
・都市構造
・管理局上層部
・霊脈の政治性
が絡んできます。
次回は
・管理局幹部との交渉 or 衝突
・東京主級決着
どちらかに進みます。
読んでくださりありがとうございます。




