第十六話 管理される霊脈
東京編続きです。
初の「人間側」との本格衝突。
都市霊脈では、これまでの《霊脈統合》がうまく機能しません。
力ではなく“構造”の戦い。
それではどうぞ。
刃と拳がぶつかる。
火花が散る。
高層ビルの隙間を、霊線が走る。
「……強いな」
俺は後退する。
相手は人間。
だが、ただの人間じゃない。
「都市霊脈は管理されてるの」
女が冷静に言う。
「自然の流れじゃない。契約と結界で編まれている」
再び印を結ぶ。
空中に幾何学模様の陣が展開される。
その中心に俺。
「拘束術式――展開」
光の鎖が伸びる。
「主!」
九尾が炎を上げるが、結界に弾かれる。
なまはげの鬼気も、雪女の冷気も通らない。
都市の霊脈が“許可”していない。
「この街で妖気は優先順位が低い」
女は淡々と告げる。
「人の秩序が上位」
鎖が絡みつく。
体が動かない。
《霊脈統合》を発動しようとするが――
都市の霊線が干渉する。
均衡が乱れる。
「主、強引にやるな」
九尾が低く言う。
「ここでは調和の仕方が違う」
違う?
確かに、北海道や東北は“土地”の霊脈だった。
だがここは――
ビル、道路、電波塔、信仰、企業。
人が作った流れ。
「あなたは均衡を乱す」
女が近づく。
「北で何をしたかは把握している」
「……全部監視してたのか」
「当然」
女の瞳が鋭くなる。
「あなたは危険。妖怪十体を従える存在なんて」
鎖が締まる。
呼吸が浅くなる。
「俺は壊してない」
「でも制圧した」
言葉が詰まる。
確かに、制圧はしてきた。
「都市は違うの」
女が言う。
「ここは“共存”じゃなく“統制”で成り立ってる」
その瞬間、頭の中で何かが繋がる。
統制。
管理。
上下関係。
北海道では対話だった。
青森では受容。
岩手では救済。
宮城では継承。
秋田では裁き。
山形では試練。
福島では調和。
だが東京は――
「支配構造か」
俺が呟く。
女の目がわずかに揺れる。
「正確には“管理”」
「同じだろ」
鎖を握る。
霊脈を読む。
流れを感じる。
自然ではない。
だが流れはある。
信仰の流れ。
参拝客の祈り。
オフィス街の焦燥。
夜の街の欲望。
無数の感情が都市霊脈を形成している。
「……なら」
俺は目を閉じる。
「管理を壊さない」
女が眉をひそめる。
「何?」
「上書きもしない」
《霊脈統合》を微調整する。
融合ではなく、分散。
都市霊線の“隙間”に、自分の力を流し込む。
均衡を奪わない。
干渉しすぎない。
寄り添う。
鎖が、きしむ。
「なに……?」
女の式が乱れる。
完全な支配ではない。
都市霊脈は巨大すぎて、全体統制はできていない。
隙間はある。
「ここでも通じる」
鎖を引きちぎる。
光が弾ける。
だが暴走はしない。
都市霊線は崩れない。
女が後退する。
「……適応?」
「調和の形は一つじゃない」
九尾が笑う。
「ようやく理解したか、主よ」
女は短剣を構え直すが、迷いがある。
「あなた、本当に壊す気はないの?」
「ない」
即答する。
「俺は通るだけだ」
沈黙。
風が吹く。
ネオンが揺れる。
「……局に報告する」
女は短く言った。
「東京は簡単じゃないわ」
「分かってる」
「次はもっと上が来る」
それだけ告げ、霊符を散らし、夜に消える。
結界が解ける。
仲間たちの気配が戻る。
なまはげが腕を組む。
「人も鬼だな」
「鬼より厄介かもな」
天狗が街を見下ろす。
「山より複雑だ」
九尾が俺を見る。
「第二章の敵は、妖怪ではない」
「管理構造か」
「それだけではない」
九尾の目が細まる。
「この街には、もっと古い“核”がある」
胸の奥の勾玉が、かすかに震える。
東京は、序章に過ぎない。
関東霊都編、本格始動。
東京前編決着でした。
第二章は
・都市霊脈
・人間側組織
・管理 vs 調和
がテーマです。
主人公は今回、
《霊脈統合》を“適応型”に進化させました。
戦いは単純な制圧ではなくなります。
次は――東京主級妖怪の登場。
そして管理局の“上位存在”。
読んでくださりありがとうございます。




