第十四話 霊脈統合(北の終わり)
第一章クライマックス後編です。
福島――北の霊脈の結節点。
これまで集めた力が試されます。
そして、九尾の正体の一端も。
第一章、完結です。
雷が森を裂く。
炎と風が衝突し、地が崩れる。
巨大な鵺が咆哮する。
鵺(福島・境界妖)
猿の顔、虎の胴、蛇の尾。
混ざり物。
均衡を拒む存在。
「集めた力は歪みを生む」
鵺の雷が九尾を貫く。
尾が焼け、地に落ちる。
「九尾!」
「下がるな、主!」
九尾の炎が暴れる。
「これはお前の戦いだ!」
歯を食いしばる。
仲間が吹き飛ばされる。
雪女の氷が砕ける。
ヒグマの怨念が散る。
なまはげの鬼気が押し返される。
天狗の風が裂ける。
全部、バラバラになる。
「壊れる」
鵺が低く告げる。
「均衡を失えば、霊脈は崩壊する」
確かに。
これまでの戦いは“足し算”だった。
仲間を増やし、力を重ねてきた。
だが鵺は言う。
それでは壊れると。
「……違う」
俺は立ち上がる。
「足し算じゃない」
勾玉たちが震える。
「お前たちは、それぞれ違う」
雪女は冷たさ。
ヒグマは怒り。
海坊主は境界。
座敷童子は福。
なまはげは裁き。
天狗は試練。
ぬらりひょんは策。
鰐鮫は守護。
九尾は導き。
「違うから、意味がある」
勾玉が光る。
今度は反発ではない。
共鳴でもない。
重なり合いながら、干渉しない。
「《霊脈統合》――」
光が収束する。
《霊脈解放》とは違う。
暴れる融合ではない。
調和。
俺の背後に、九つの光が円を描く。
九尾が目を見開く。
「……それが、答えか」
鵺が雷を放つ。
だが光の円がそれを分散する。
壊れない。
「均衡は壊すもんじゃない」
踏み込む。
雷を越え、風を越え、闇を裂く。
鵺の胸元。
混ざり合った核。
歪な光。
「混ざってるから、歪むんだ」
拳を叩き込む。
「整理してやる!」
核を掴む。
雷鳴が轟く。
混ざった力が暴れる。
だが今は流れが見える。
怒り、裁き、守護、試練。
全部を、元の流れへ戻す。
均衡を再配置する。
「――終わりだ!」
光が爆発する。
森が静まり返る。
鵺の巨大な姿が崩れ、人型へ戻る。
金の瞳が穏やかに揺れる。
「……なるほど」
膝をつく。
「破壊ではなく、調和か」
白い勾玉が浮かぶ。
他とは違う、透明な光。
「北の霊脈は、お前を認める」
勾玉が胸へ吸い込まれる。
【鵺:加入】
能力: ・霊脈調律
・混合属性操作
・均衡維持領域
森が元に戻る。
折れた木が立ち上がり、空が晴れる。
九尾がゆっくりと近づく。
「……見事だ、悠真」
「九尾」
俺は息を吐く。
「お前、何者だ」
九尾は笑う。
「我は道を知る者」
その背後に、一瞬だけ巨大な影が重なる。
人の世を超える存在。
「だが今は、ただの同行者だ」
仲間たちが集まる。
雪女が静かに頷く。
ヒグマが低く唸る。
なまはげが腕を組む。
天狗が空を仰ぐ。
「北の霊脈編、終結だ」
九尾が告げる。
俺は空を見上げる。
北海道から始まった旅。
七県、制圧。
だが――
胸の奥が静かに脈打つ。
透明な勾玉。
「まだ終わりじゃない」
九尾が微笑む。
「次は関東」
南の空に、重たい気配がある。
都市の霊脈。
人の欲望。
さらに大きな均衡。
俺は拳を握る。
「行こう」
死んだ俺の旅は、続く。
第一章「北の霊脈編」完結です。
北海道から福島まで、全14話。
テーマは
・力の収集
・均衡
・調和
でした。
最終形は《霊脈統合》。
これは今後の軸になります。
そして九尾の正体は、まだ明かしていません。
第二章は「関東霊都編」。
都市型妖怪、権力型霊脈、
そして“人間側”の介入も始まります。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。




