第十二話 山を越える者(山形 後編)
山形編後編です。
山の主・天狗。
これまでとは明らかに格の違う相手。
今回のテーマは「力の扱い方」。
総力戦、そして第一章後半への布石です。
それでは決着。
白い衝撃が山を裂いた。
風刃が大地を抉り、杉林をなぎ倒す。
だが。
俺は、立っていた。
目の前には重なった力。
鬼気の炎。
氷の盾。
影の層。
水の膜。
怨念の衝撃。
因果の歪み。
蒼い守護領域。
全員の力が、辛うじて風刃を受け止めていた。
「……ほう」
天狗の目が細まる。
「群れの力か」
圧が強まる。
地面が沈む。
仲間の力が軋む。
だが、崩れない。
「主よ!」
九尾が叫ぶ。
「今のままでは押し負ける!」
分かってる。
これは総力戦。
だが、まだ足りない。
天狗は単体で山を背負っている。
俺はただ、仲間の上に立っているだけ。
「……違うな」
ぽつりと呟く。
九尾が目を向ける。
「俺は“上”じゃない」
風が吹き荒れる中、一歩踏み出す。
仲間の力の中心へ。
「一緒に進む」
胸の奥が熱くなる。
勾玉たちが共鳴する。
白、黒、蒼、赤。
光が重なる。
「融合――」
言葉が自然と出る。
「《霊脈解放》!」
光が弾けた。
全妖怪の力が、俺の中で一瞬だけ統合される。
背後に九本の光尾。
片腕に鬼気。
もう一方に氷の紋様。
足元に影。
周囲に水流。
背に蒼い守護陣。
天狗の目が見開かれる。
「それが……主の姿か」
風圧がぶつかる。
だが今度は押されない。
「山を越えるってのは」
拳を握る。
「奪うことじゃない」
一気に踏み込む。
風壁を突き破る。
氷が風を凍らせ、
影が流れを縛り、
水が圧を分散し、
鬼気が道を開き、
守護が背を支える。
「敬意を持って進むことだ!」
天狗の懐へ。
背の翼基部。
黄金に輝く核。
だが天狗は退かない。
「ならば問う」
天狗が真正面から拳を打ち込む。
衝撃が山を震わせる。
「お前は、この山をどう扱う」
力と力が拮抗する。
俺は答える。
「力としてじゃなく、道として」
核を掴む。
「越える。でも、壊さない」
黄金の光が激しく脈打つ。
山気が暴れる。
だが今は揺らがない。
「主、今だ!」
全員の力が一点に集中。
黄金が砕ける。
風が止む。
山が静まる。
天狗が膝をついた。
羽がゆっくりと消えていく。
「……見事」
赤い顔が柔らぐ。
「力を束ねるだけでなく、背負う覚悟か」
黄金の勾玉が浮かぶ。
それが胸へ吸い込まれる。
【天狗:加入】
能力: ・山気操作
・高速空間転移
・試練展開(一定領域強制強化)
山に静寂が戻る。
倒れた木々が、ゆっくりと元に戻る。
まるで最初から何もなかったように。
「山形、制圧完了」
九尾が静かに告げる。
俺は息を吐く。
全身が重い。
「今のは……反則だろ」
「章級の力だ」
ぬらりひょんが笑う。
「だが長くは保つまい」
確かに。
さっきの《霊脈解放》は一瞬だけだった。
常用は無理だ。
天狗が言う。
「最後の地、福島」
その声は重い。
「北の霊脈の核がある」
九尾の尾が静かに揺れる。
「第一章の終わりだ」
俺は南を見つめる。
福島。
境界が、さらに深い。
北の旅は、最終局面へ。
山形編、完結です。
ここで主人公は初の
《霊脈解放(仮覚醒)》
を使用しました。
これは第一章の山場用の力。
常時使用はできません。
天狗は章ボス級。
これで仲間は9体。
残るは福島。
第一章ラストバトルです。
読んでくださりありがとうございます。




