第一話 白き氷原の支配者(北海道 前編)
はじめまして、作者です。
本作『妖転覇道』は、
✔ 不慮の事故で死亡
✔ 妖怪が見える世界に転生
✔ 実在妖怪とバトル
✔ 倒した妖怪が仲間になる
✔ 47都道府県制覇
✔ そして世界へ――
という、作者の「好き」を全部詰め込んだ作品です。
舞台は日本全国。
各都道府県を【2話完結】でテンポよく進めていき、
地方ごとに章を分けて物語を展開します。
第一章は【北海道・東北編】。
雪女を皮切りに、土地に根付いた実在妖怪たちが続々登場します。
バトルは能力バトル寄り。
仲間妖怪との連携や戦術も増えていきます。
主人公・悠真が
「天国に戻る」ことを目標にしながら、
次第に“別の願い”に気づいていく物語です。
どうぞ、北の霊脈編をお楽しみください。
目を開けた瞬間、肺に刺さるような冷気が流れ込んだ。
白。
ただ、白。
空も大地も区別がつかない銀世界の中、俺はひとり立っていた。
「……寒っ」
吐いた息が凍る。
だが不思議と、死ぬほど辛くはない。
「魂の器だからな。完全には凍らぬ」
隣に現れた九尾が尾を揺らす。
九本の尾が、雪を払うたびに空気がわずかに歪む。
「ここが最初の地、北海道」
「いきなり難易度高そうなんだが」
「北の霊脈は強い。主級も強い」
その言葉が終わる前に――
吹雪が巻き上がった。
視界が一瞬で奪われる。
耳鳴りのような風音。
その中心に、白い影が立っていた。
雪女
白無垢のような着物。
雪よりも白い肌。
長い黒髪が風に溶ける。
そして、氷のように澄んだ瞳。
「……また、生者」
声は静かだった。
だが、その一言で気温がさらに下がる。
足元が瞬時に凍結した。
「動くな」
冷たい命令。
次の瞬間、地面から無数の氷柱が突き上がる。
「うわっ!?」
横に飛ぶ。
だが遅い。
氷が脇腹をかすめ、痛みが走る。
血が、凍る。
「主、距離を取れ!」
ぬらりひょんの影が足元から広がる。
黒い霧が氷柱を絡め取り、動きを鈍らせる。
「小細工を」
雪女が指を滑らせる。
その動きに合わせ、吹雪が刃へと変わる。
風そのものが切り裂いてくる。
影の幕が削られていく。
「主よ、冷気が侵食する……!」
まずい。
長期戦は不利。
頭ではわかる。
でも――どうやって近づく?
「悠真」
九尾が低く言う。
「雪女は“奪う”妖怪だ。熱を、命を、希望を」
「だから?」
「奪われる前に、触れろ」
簡単に言うな。
あれは“死”だぞ。
雪女がこちらを見つめる。
「あなたも、凍る?」
優しい声。
眠りに誘うような響き。
その瞬間、足の感覚が消えた。
氷が膝まで覆う。
やばい。
これ、普通に死ぬやつだ。
いや――
俺、もう死んでる。
だったら。
「もう一回くらい、死んでもいいだろ!」
影を踏み台に跳躍。
ぬらりひょんが叫ぶ。
「無茶だ、主!」
吹雪が真正面から襲う。
視界が白に塗り潰される。
皮膚が裂ける。
だが、止まらない。
雪女の目がわずかに揺れた。
俺は、その胸元へ手を伸ばす。
冷たい。
凍りつくほど冷たい。
だが――
確かにそこに、鼓動がある。
「見つけた!」
氷の奥で輝く魂核。
白い光。
それを、握る。
「――ッ!!」
雪女が苦しげに声を漏らす。
吹雪が乱れ、空が割れる。
「なぜ……触れられる……」
「言ったろ。俺、一回死んでる」
力を込める。
冷気が逆流し、腕を凍らせる。
感覚が消える。
それでも、離さない。
「主!」
九尾の尾が風を裂く。
ぬらりひょんの影が雪女の足元を縛る。
「今だ!」
俺は叫ぶ。
「終わらせる!」
核を引き抜く。
吹雪が止む。
世界が、静かになる。
雪が、ゆっくりと落ちるだけ。
白い勾玉が、俺の手の中で淡く光っていた。
雪女は膝をつき、俺を見上げる。
「……なぜ、消さぬ」
その声に、敵意はなかった。
ただ、疲れのようなものがある。
俺は息を整えながら答える。
「一緒に来い」
沈黙。
やがて、雪女は目を伏せた。
「……あなたの熱は、不思議」
勾玉が光り、胸へと吸い込まれる。
冷気が収まる。
【雪女:契約仮成立】
頭の中に、静かな声が響く。
『主よ。命じよ』
空が青を取り戻す。
だが――
九尾の耳がぴくりと動く。
「終わっておらぬ」
地面の奥から、低い振動。
遠くで、獣の咆哮。
雪原の奥に、巨大な影が立ち上がった。
黒い毛皮。
赤い瞳。
氷を踏み砕く巨体。
「土地の怨念だ」
九尾が低く告げる。
「北海道の真の守り手」
ヒグマの怨霊。
雪女が小さく呟く。
「……主、あれは強い」
俺は拳を握る。
仲間になったばかり。
ここで逃げるわけにはいかない。
「行くぞ」
北の空の下。
第二戦が、始まろうとしていた。
――第二話「氷と怨念」へ続く。
北海道編前編、読んでいただきありがとうございます。
第一章は「北の霊脈編」として、
北海道+東北6県を描きます。
北海道はスケールが大きいので、
主級妖怪に加えて“土地の怨念”も絡ませています。
今回登場した妖怪:
・雪女
・ぬらりひょん
・九尾の狐
どれも実在する日本妖怪です。
今後は、
青森:恐山・死者信仰系
岩手:座敷童子
宮城:海系妖怪
秋田:なまはげ
山形:山の妖
福島:境界妖怪
など、地域色を強めていきます。
「この県はこの妖怪出してほしい!」などあれば
ぜひ感想で教えてください。
次回、北海道後編。
ヒグマの怨霊との決着です。
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よろしくお願いします。




