そうじきおじさんと都会の星
カラスはひかるものが大好き。
キラキラの石、ぴかぴかガラス、かがやくものにはもう目がない。
都会のよるはあかりがいっぱい。
こうそうビルにお店のかんばん。
冬にはキラキラ、クリスマスのかざり。
カラスたちは、よるのまちをうれしそうにながめます。
「グワー、グワー。やっぱり都会のあかりはきれいだな」
木にとまったカラスたちは、くちぐちにまちのあかりをほめました。
そんなカラスたちから少しはなれた木のうえに、そらを見あげるいちわのカラスがいました。
「グワー。やっぱり、月のあかりはきれいだな」
このカラスはまちのあかりを見るよりも、空をながめることがすきでした。
「月はきれいだけど、やっぱりきょうも星がすくないな。なんだか、ひごとに星がへっていってる気がするな」
カラスは月のまわりにある星をながめました。
たしかに、星はかぞえるほどしかありません。
もともと都会ではまちのあかりがあかるすぎて、よく見ないと星は見えません。
それでも、もっとたくさんあったはずです。
「なんだかへんだなあ」
カラスはすっきりしないきもちで月をながめます。ところがそのとき、月のましたにあるビルのおくじょうに、かげがひとつあらわれました。
「なんだあのかげは? なんだかあやしいうごきだな。それになにかせおっているぞ」
カラスは気になってビルのおくじょうまでとびました。そこには、ネコのふくめんかぶったおじさんがいました。せなかには、そうじきをせおっています。
「こっそりこっそり、こっそりこっそり」
おじさんはつぶやきながら、しのびあしであるきます。
「なにをしているんだろう?」
カラスにきがつかないおじさんは、おくじょうのまんなかまでくると、そうじきをそらにむけました。
そしてつぎのしゅんかん……
びゅおーーーー
びゅおーーーー
びゅおーーーー
びゅおーーーー
そうじきは月のまわりの星をすいこんでしまいました。
そうじきのスイッチをきると、おじさんはそそくさとビルをでました。そして、じてんしゃにのると、まちからどんどんはなれていきます。
「あいつが星をぬすんでいたんだな」
カラスはおじさんをおいかけました。
やがておじさんは、じてんしゃをおりて山のなかにはいりました。あとをおうと、りっぱなやまごやがありました。
やまごやのまどには、きっちりとカーテンがしめられています。
「こんなところでなにをしているんだろう?」
カラスはくちばしでドアをあけました。すると、ドアのすきまから……
————ピカーン!!!!
きんいろのひかりがあふれでてきました。
「グワーっ!! まぶしいっー!!」
カラスはまぶしすぎてうごけなくなりました。
「おやおや、だれだい? あかりがもれるからドアをしめておくれ」
なかからおじさんがでてきました。カラスはおじさんのかたにのせられ、こやのなかにはいりました。
「まったく、どこからきたんだい? きょうは都会の星がぜんぶそろったから、みんなでおいわいをしようとしていたんだよ」
あかるさに目がなれてくると、カラスにもこやのなかが見えました。
そこには、かぞえきれないほどの星たちがいました。キラキラをふりまきながら、たのしそうにとびまわっています。
こやのカーテンがしめられていたのは、星のあかりをもらさないためでした。
「グワー。星をぬすんだのはおまえだな? 星を都会にかえしてくれ。おれは、星と月をながめるのがすきなんだ」
「なんと。きみは星がすきなのかい? それはわるいことをしたね。そういわれては、都会に星をかえさないといけないね。ただ、星たちがかえりたがるかかどうか」
「そんなの、都会にかえりたがるにきまっているじゃないか!」
「いやだよっ! ぼくたちはかえらないよ!」
星たちがいっせいにさわぎだしました。これにはカラスもびっくり。
星たちは、声をそろえてかえるもんかとくりかえします。
「グワー、グワー。なんでかえりたくないんだい?」
「都会はいやだ! ぼくたちよりも、まちのあかりがまぶしいんだ。それに、だれもぼくたちを見ようとしないんだ」
星たちは、そうだそうだとさわぎたてます。
これにはカラスもなにも言いかえせません。
なぜならカラスも、都会のあかりはまぶしすぎるとおもっていたからです。
「ほれ、このとおりじゃ。星たちは、ここのほうがいごこちがよいらしい」
「そうだよ! このこやにいれば、おじさんがいつもぼくたちをちゃんと見てくれるからね」
そうだそうだと、ほかの星たちもうなずきます。
カラスはあきらめて都会にかえりました。
するとまちにはひとがあふれかえり、なにやらおまつりのようなにぎやかさでした。
「グワー、なんだろう?」
カラスはまちのまんなかまでとびました。
そこには大きな大きなクリスマスツリーがありました。ツリーにはキラキラのかざりがかぞえきれないほどついています。クリスマスツリーのてんとうしきが行われていたのでした。
ひとびとが声をそろえてカウントダウンをはじめます。
————さーん
————にーい
————いーち……
「てんとーうー!!!!」
いっせいにツリーのでんきゅうがあかるく光りました。
大きな大きなかんせいがあがります。
ツリーはきんいろにかがやいて、まちのすみずみにまで光をとどけます。
————バン————
とつぜん、すべてのあかりがきえました。
あまりにもでんきをたくさん使いすぎたので、でんきが足りなくなったのです。
「ていでんだー!」
ひとびとはおどろいて、ないたりさけんだりと大さわぎ。
おまけにまっくらなので、いたるところでころんだりぶつかったりとだいこんらんです。
「グワー、グワー。たいへんだー。なんとかしないと、けがにんがでてしまうぞ」
月のひかりだけではあかるさが足りません。子供のなきごえまできこえてきました。カラスはかんがえました。
「そうだ! あのおじさんのところにいる星たちに、てらしてもらおう!」
カラスは山ごやへといそいでもどりました。
————ピカーン!!!!
「グワー、たいへんなんだ! まちがていでんして、まっくらなんだ。このままだと、けがにんも出てしまう。星さん、まちをあかるくてらしておくれ!」
「やだよー! まちのひとたちは、ぼくたちになんか見むきもしないからね」
ほかの星たちも、そうだそうだとはやしたてます。
「まあまあ、そう言わずに都会にいってみてらどうだい? 都会の空は、今はまっくらのはずだよ。まちのひとは、みんな空をを見あげるはずだよ」
「ほんとに? それならいってみようかな」
ほかの星たちもうんうんとうなずきます。
「よし。では、みんなで都会の空をてらしにいこう」
おじさんは言うと、せおったそうじきを星たちにむけました。
そしてつぎのしゅんかん……
びゅおーーーー
びゅおーーーー
びゅおーーーー
びゅおーーーー
星たちをひとつのこらずすいこみました。
じてんしゃにのって、えっさ、ほいさ。
まちについたおじさんは、夜空にむかってそうじきをかまえました。
そしてつぎのしゅんかん……
————シャララララララーン!!!!
夜空に数えきれないほどの星がちりばめられました。
「わー! きれい!!」
ひとびとのおどろいた声があがりました。
星のあかりにてらされたひとびとのかおは、みなキラキラとかがやいていました。
それからは、都会でもよるはひつようなあかりだけをつけるようになりました。いぜんのように、よるのまちはキラキラとあかるくありません。そのかわりに、夜空には星たちがキラキラとたのしそうにかがやいています。
まちのひとたちは、ねるまえに夜空を見あげて星を楽しみました。
「グワー、グワー。やっぱり、星はきれいだな」
もう空を見あげるカラスはいちわだけではありません。
————グワー、グワー
————グワー、グワー
————グワー、グワー
カラスたちは星のあかりをほめたたえます。
そして、ビルのおくじょうにも空を見あげるひとかげがひとつ。
そうじきをせなかにせおい、ネコのふくめんをかぶったそのひとかげは、星たちをやさしくみまもっているのでした。
[おわり]




