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そうじきおじさんと都会の星

作者: 獅子唐麦香
掲載日:2025/12/20


 カラスはひかるものが大好き。

 キラキラの石、ぴかぴかガラス、かがやくものにはもう目がない。


 都会のよるはあかりがいっぱい。

 こうそうビルにお店のかんばん。

 冬にはキラキラ、クリスマスのかざり。


 カラスたちは、よるのまちをうれしそうにながめます。

「グワー、グワー。やっぱり都会のあかりはきれいだな」

 木にとまったカラスたちは、くちぐちにまちのあかりをほめました。


 そんなカラスたちから少しはなれた木のうえに、そらを見あげるいちわのカラスがいました。

「グワー。やっぱり、月のあかりはきれいだな」

 このカラスはまちのあかりを見るよりも、空をながめることがすきでした。

「月はきれいだけど、やっぱりきょうも星がすくないな。なんだか、ひごとに星がへっていってる気がするな」

 カラスは月のまわりにある星をながめました。

 たしかに、星はかぞえるほどしかありません。

 もともと都会ではまちのあかりがあかるすぎて、よく見ないと星は見えません。

 それでも、もっとたくさんあったはずです。

「なんだかへんだなあ」

 カラスはすっきりしないきもちで月をながめます。ところがそのとき、月のましたにあるビルのおくじょうに、かげがひとつあらわれました。

「なんだあのかげは? なんだかあやしいうごきだな。それになにかせおっているぞ」

 カラスは気になってビルのおくじょうまでとびました。そこには、ネコのふくめんかぶったおじさんがいました。せなかには、そうじきをせおっています。


「こっそりこっそり、こっそりこっそり」

 おじさんはつぶやきながら、しのびあしであるきます。

「なにをしているんだろう?」

 カラスにきがつかないおじさんは、おくじょうのまんなかまでくると、そうじきをそらにむけました。


 そしてつぎのしゅんかん……


 びゅおーーーー

 びゅおーーーー


 びゅおーーーー

 びゅおーーーー


 そうじきは月のまわりの星をすいこんでしまいました。

 そうじきのスイッチをきると、おじさんはそそくさとビルをでました。そして、じてんしゃにのると、まちからどんどんはなれていきます。

「あいつが星をぬすんでいたんだな」

 カラスはおじさんをおいかけました。


 やがておじさんは、じてんしゃをおりて山のなかにはいりました。あとをおうと、りっぱなやまごやがありました。

 やまごやのまどには、きっちりとカーテンがしめられています。

「こんなところでなにをしているんだろう?」

 カラスはくちばしでドアをあけました。すると、ドアのすきまから……


 ————ピカーン!!!!


 きんいろのひかりがあふれでてきました。


「グワーっ!! まぶしいっー!!」

 カラスはまぶしすぎてうごけなくなりました。


「おやおや、だれだい? あかりがもれるからドアをしめておくれ」

 なかからおじさんがでてきました。カラスはおじさんのかたにのせられ、こやのなかにはいりました。

「まったく、どこからきたんだい? きょうは都会の星がぜんぶそろったから、みんなでおいわいをしようとしていたんだよ」

 あかるさに目がなれてくると、カラスにもこやのなかが見えました。

 そこには、かぞえきれないほどの星たちがいました。キラキラをふりまきながら、たのしそうにとびまわっています。

 こやのカーテンがしめられていたのは、星のあかりをもらさないためでした。

「グワー。星をぬすんだのはおまえだな? 星を都会にかえしてくれ。おれは、星と月をながめるのがすきなんだ」

「なんと。きみは星がすきなのかい? それはわるいことをしたね。そういわれては、都会に星をかえさないといけないね。ただ、星たちがかえりたがるかかどうか」

「そんなの、都会にかえりたがるにきまっているじゃないか!」

「いやだよっ! ぼくたちはかえらないよ!」

 星たちがいっせいにさわぎだしました。これにはカラスもびっくり。

 星たちは、声をそろえてかえるもんかとくりかえします。

「グワー、グワー。なんでかえりたくないんだい?」

「都会はいやだ! ぼくたちよりも、まちのあかりがまぶしいんだ。それに、だれもぼくたちを見ようとしないんだ」

 星たちは、そうだそうだとさわぎたてます。

 これにはカラスもなにも言いかえせません。

 なぜならカラスも、都会のあかりはまぶしすぎるとおもっていたからです。

「ほれ、このとおりじゃ。星たちは、ここのほうがいごこちがよいらしい」

「そうだよ! このこやにいれば、おじさんがいつもぼくたちをちゃんと見てくれるからね」

 そうだそうだと、ほかの星たちもうなずきます。


 カラスはあきらめて都会にかえりました。

 するとまちにはひとがあふれかえり、なにやらおまつりのようなにぎやかさでした。

「グワー、なんだろう?」

 カラスはまちのまんなかまでとびました。

 そこには大きな大きなクリスマスツリーがありました。ツリーにはキラキラのかざりがかぞえきれないほどついています。クリスマスツリーのてんとうしきが行われていたのでした。

 ひとびとが声をそろえてカウントダウンをはじめます。


 ————さーん


 ————にーい


 ————いーち……


「てんとーうー!!!!」


 いっせいにツリーのでんきゅうがあかるく光りました。

 大きな大きなかんせいがあがります。

 ツリーはきんいろにかがやいて、まちのすみずみにまで光をとどけます。


 ————バン————


 とつぜん、すべてのあかりがきえました。

 あまりにもでんきをたくさん使いすぎたので、でんきが足りなくなったのです。

「ていでんだー!」

 ひとびとはおどろいて、ないたりさけんだりと大さわぎ。

 おまけにまっくらなので、いたるところでころんだりぶつかったりとだいこんらんです。

「グワー、グワー。たいへんだー。なんとかしないと、けがにんがでてしまうぞ」

 月のひかりだけではあかるさが足りません。子供のなきごえまできこえてきました。カラスはかんがえました。

「そうだ! あのおじさんのところにいる星たちに、てらしてもらおう!」


 カラスは山ごやへといそいでもどりました。


 ————ピカーン!!!!


「グワー、たいへんなんだ! まちがていでんして、まっくらなんだ。このままだと、けがにんも出てしまう。星さん、まちをあかるくてらしておくれ!」

「やだよー! まちのひとたちは、ぼくたちになんか見むきもしないからね」

 ほかの星たちも、そうだそうだとはやしたてます。

「まあまあ、そう言わずに都会にいってみてらどうだい? 都会の空は、今はまっくらのはずだよ。まちのひとは、みんな空をを見あげるはずだよ」

「ほんとに? それならいってみようかな」

 ほかの星たちもうんうんとうなずきます。

「よし。では、みんなで都会の空をてらしにいこう」

 おじさんは言うと、せおったそうじきを星たちにむけました。


 そしてつぎのしゅんかん……


 びゅおーーーー

 びゅおーーーー


 びゅおーーーー

 びゅおーーーー


 星たちをひとつのこらずすいこみました。


 じてんしゃにのって、えっさ、ほいさ。

 まちについたおじさんは、夜空にむかってそうじきをかまえました。


 そしてつぎのしゅんかん……


 ————シャララララララーン!!!!


 夜空に数えきれないほどの星がちりばめられました。


「わー! きれい!!」

 ひとびとのおどろいた声があがりました。

 星のあかりにてらされたひとびとのかおは、みなキラキラとかがやいていました。


 それからは、都会でもよるはひつようなあかりだけをつけるようになりました。いぜんのように、よるのまちはキラキラとあかるくありません。そのかわりに、夜空には星たちがキラキラとたのしそうにかがやいています。

 まちのひとたちは、ねるまえに夜空を見あげて星を楽しみました。


「グワー、グワー。やっぱり、星はきれいだな」

 もう空を見あげるカラスはいちわだけではありません。


 ————グワー、グワー

 ————グワー、グワー

 ————グワー、グワー


 カラスたちは星のあかりをほめたたえます。



 そして、ビルのおくじょうにも空を見あげるひとかげがひとつ。

 そうじきをせなかにせおい、ネコのふくめんをかぶったそのひとかげは、星たちをやさしくみまもっているのでした。




[おわり]






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