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未来予想


 それからいろんなことを教えてもらった。アルテさんのスキルは記憶の改変。簡単なものしか出来ないけどね、と寂しそうに笑うけど、僕とぶつかった運転手さんの記憶を改変して何にもなかったことにしてくれたらしい。これで、僕が事故った事実はこの世界ではなかったことになった。なんて便利なんだろう、スキルって。

 あとは、この2人が双子だ、とか今は20歳だ、とかそんな話を聞いた。確かに、よく見ると2人は似ている気がする。特に、笑うと眉が下がるところ。性格は真逆と言ってもいいほどだけど。

 2人とも美形だし外国っぽい名前だから、日本人じゃないのかと聞いたら、


「はあ!?めちゃくちゃ日本人ですけど!私たちからすれば、アンタたちが古臭いのよ!」


 なんて馬鹿にされた。古臭いって……僕の方が若いんだけどなあ。僕の脳内では完全にカタカナで変換されていたけど、"歩輝(アルテ)"、"來楽(ライラ)"という漢字表記だったらしい。


「それで、2人はどうして僕を助けてくれたんですか?」

「ああ、そうだったね、話が逸れすぎた。それじゃあ本題に移るね」


 にこやかだったアルテは、少し真剣な顔になって姿勢もほんの僅か正した。なんだか、嫌な予感がする。わざわざ僕の寿命を伸ばすためだけに助けてくれたのか、と少しだけ信じていたけど、どうやらやっぱりそれだけではないようだ。


「世界を救って欲しいんだ」

「世界を救って欲しいんだ?」


 まんま、オウム返しすることになるとは。


「救うも何も、何から?」

「スキル持ちはスキル持ちを殺すと殺した相手のスキルが奪える。それに気付いた悪い奴らが強くなろうとこれからたくさんの人を殺すんだよ。」

「えっ、誰がスキル持ってるかとかわからないのに?」

「そう。だからスキル持ちも、ノーマルの人もたくさん殺されるんだ。そういう悪事を働く奴らのことを俺らはダークって呼んでる。そしてどんどんいろんなスキルを手に入れて、強くなって俺らは勝てなくなるの。完全バッドエンド」


 俄に信じがたい話だ。だってそんな話、聞いたこともない。日頃からニュースは見ているけれど、特殊能力の話や大量殺人事件なんてものは見たことがない。

 変な違和感を感じる。アルテさんの口ぶりは、まるで未来がそう確定されているようなのだ。良くないビジネスに誘うとき、誰でも稼げます!だの、幸せになれます!だの、根拠のない未来を断定して話すのが特徴だ、なんて何処かの記事で見たことがある。それに近しい何かを感じるぞ……。それとも宗教的な何か?どっちにしろ、今僕って危ないことに誘われようとしてる……?


「君にはスキル持ちを片っ端からとっ捕まえてもらいたいんだよ」

「とっ捕まえるったって、僕戦うとかよくわからないんですけど……」

「これはダークじゃないスキル持ちの確保も兼ねてるんだ」

「話をすればすんなりついて来てくれる人もいるってわけよ!」

「でもスキル持ちかどうかってわからないんじゃ?」

「その辺りは俺らがなんとかするから問題ないよ」

「すんなりついて来ない人は?」

「男の子なんだから力尽くで!」

「だから、僕にはそんな力ないですって……」


 それについては大丈夫、とアルテさんが一粒のカプセルを出してきた。

 疑い始めたらそれが最後、もう2人の言うことの全てが怪しい。こちらの質問を上手くかわすところも、答えられない質問はゴリ押しで行く感じも、やっぱり悪いビジネスの勧誘っぽくて嫌だ。

 アルテさんは僕の手にそのカプセルを握らせた。

 怖いって!"なんと!初回限定で今なら300円で購入いただけます!でも中毒性があるのでお気をつけくださいね、2回目の購入は10万円です!"みたいな、そんなことを言い出すんじゃないかと僕はヒヤヒヤしていた。

 最初は、事故から助けてくれてありがとう!命の恩人!なんて気持ちだったけど、今はもうあのトラックの運転手さえも仲間なんじゃないかと思えてきた。

 ダメだ、もう何も信じられない。ああもう、体が痛む。


「あの、僕そろそろ帰らないと……」

 『ビービービービー。東京都緋色区鴇町(ひいろく ときちょう)2丁目にスキル反応あり。座標を表示します。』


 僕がベッドから立ち上がったその時、部屋の外から警報音のようなものが聞こえてきた。


「見つかったみたいだね、スキル持ち」

「あ、丁度いいじゃん!ほら、早くその薬飲んで!はい、水!」

「その薬のはスキルの成分が入ってる。飲むだけで30分間はスキルが使えるようになるよ」

「いや、そんなのあるなら貴方たちが飲めばいいじゃないですか!」

「私たちじゃ適合しないの!」


 ストーリーが出来すぎてはいないか?僕が帰ろうとしたときに都合よくこんな流れになることある!?

 というかそういうドッキリかなんかなのかな?どこかにカメラとか……。


「えいっ!」

「うわあ!」


 僕がキョロキョロとカメラを探している間に、ライラさんは僕からカプセルを奪うとポイ、と僕の口に投げ入れた。その勢いのまま水も流し込まれ、僕は驚きでそのまま薬を飲み込んでしまった。ああ、終わった。どうしよう、この先僕は、この違法の薬物の中毒になってしまって、幻覚とか見え始めそのうち精神を蝕み……


「それじゃあ、いってらっしゃい!」

「え、ちょちょちょ!」


 ライラさんに手をかざされ、僕の視界は光に包まれた。


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