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第48話 暇があるなら修行!

 ルビエラ曰く、光一が死に物狂いで討伐したあの魔熊は「ウォー・ベア」と名で、魔獣の中では中の上くらいの脅威らしい。なかなか微妙だが、光一の年頃で倒せるのはお手柄であるようで、確かな成長を光一は感じている。


 今は、狩場を変えるために、森の外縁に沿って移動している。同じ場所で狩りをしていると、魔獣がそこに近寄らなくなり、森の中のパワーバランスが崩れて宜しく無いためだ。




「えへへ。えっへへへ」




 首輪の鎖を光一に引かれる変異幼体は、ここ最近、非常にご機嫌だ。


 先述の「ウォー・ベア」との戦いの直後は、光一に雑に扱われたことを不満に思っていたくせに、五日ほど経つと妙に笑顔を浮かべるようになった。その五日の間は股間を痛がり、移動も光一に引き摺られることが多かったが、その痛みが治まると、笑顔でいることが増えた。


 その理由は至極単純で、股間からイチモツが再生したのだ。


 フハ・フ・フフハに切り落とされ、傷口を縫われて再生しなくなっていたが、その傷口が開いたことで再生されたらしい。股間が痛かったのは、再生に際して体内の構造も変化していたからだろう。外科的に改造したことを、フハ・フ・フフハが言っていたし。




「えへへ、ねぇ、見て見て! 僕のチン◯ン、可愛いでしょ!」




 食事の時、休憩の時、何かしらで立ち止まる度に変異幼体はイチモツを自慢してくる。ルビエラも光一も無視しているのに、臆することなく、挫けることもなく、何度も自慢する。




「歩くとね! 右や左にプルプル震えてね! それがとても可愛いの!」




 少し離れた位置の木に鎖を巻き付けられ、座って雑草を食べながら、イチモツを撫でる変異幼体。


 昼食を食べるルビエラと光一は見向きもしない。




「オシッコする時にね! 先端の皮がプクって膨らむのも可愛いよ!」




 そう言いながら、立ち上がった変異幼体は小便を垂らす。


 無言で立ち上がる光一。


 それを見て、変異幼体は光一へ向き直る。




「見たいの? じゃ、お水ちょうだい! そしたら、また、オシッコ出せるから!」




 無言で歩み寄る光一。




「それとも触ってみる? プニプニしていて可愛いんだよ!」




 変異幼体は笑顔で光一を見上げ、イチモツを自分の掌に乗せて、光一に見せる。


 光一は無言のまま、変異幼体の腹部を蹴り飛ばす。「殺しても良い」と言われているが、仮にもフハ・フ・フフハから預かっているので、死なない程度には手加減する。




「う……ぐ……。……な、何……するの……?」




 腹部を押さえ、苦しそうに変異幼体は言う。


 そんな変異幼体を見下ろし、光一は手を伸ばす。変異幼体の上体を起こし、歩み寄る際に拾った掌サイズの石を振り上げる。


 そして、石を振り下ろし、変異幼体のイチモツに叩きつけ、それを潰した。




「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 痛っ、や、やめ! いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




 変異幼体の悲鳴を無視して、光一は何度も石を振り下ろす。何とか止めようとする変異幼体だが、ナキウ程度の力で止められるわけが無い。逃げようにも首輪のせいで逃げられず、手でガードしても構わずに石は振り下ろされる。足を閉じても、やはり、お構い無しだ。


 光一が石を投げ捨てる頃には、変異幼体のイチモツはグチャグチャになり、すっかり形を失っていた。石を打ちつけられた手も歪な形に変形している。太腿からも酷く出血している。




「食事中に汚えモン見せてんじゃねぇよ」


「じ、じゃあ、そう、言えばいい、じゃない」




 光一は無言で立ち上がり、変異幼体の手の上から、思いっきり傷口を蹴り飛ばした。


 再び、変異幼体の悲鳴が響く。




「返事は『はい』とだけ言え。分かった?」


「つ、潰すなんて、ひど、酷いよ……!」




 再度、傷口を蹴り飛ばす光一。


 泣き叫ぶ変異幼体。頭に脳が入っていないから、物分りが悪いのだろうか。




「分かった?」


「う……ぐすっ……は、はい……ひっぐ……」


「行くぞ」




 泣きながら蹲る変異幼体には目もくれず、光一は鎖を引いて歩き出す。


 変異幼体は股間の痛みが引かず、立ち上がるのにも苦労しているが、光一が気を使うことは無い。引き摺られ、体中に傷が付いても、ルビエラも光一も気にも留めない。


 この変異幼体が、自分の立場を理解するまでには相当に時間がかかりそうだ。




 そして、結界を張り続ける修行にも慣れ、ルビエラを相手に実戦修行を行いながら十日が経った時、ルビエラが「うん」と言って森を指差した。




「ここがいいかな。魔獣の気配も適度に散っているし。光一、行ってみる?」


「そうだね。うん。行ってみるよ」




 光一が頷き、鎖をルビエラに預けようとすると、変異幼体も同行の意思を示した。


 前回の、どこか自暴自棄のような雰囲気ではなく、興奮しているような雰囲気を帯びている。熱気のようなものも感じる。手や足で隠しているが、再生したイチモツが関係しているのだろうか。




「早く! 早く行こう!」


「お前が急かすな。邪魔になれば捨てるぞ」


「うん。頑張って合流するよ!」


「いらねーんだけど」




 そう言いつつ、光一は鎖を引いて、森へと足を踏み入れた。


 することは前回と変わらない。木々を切り倒し、この辺りを縄張りにしている魔獣を挑発する。


 しかし、数十本と木を切り倒しても、魔獣は姿を見せず、気配も感じ取れない。風の魔力を用いた索敵にも引っ掛かる気配は無い。


 慎重なのか、臆病なのか。或いは、支配者のいない空白地帯なのか。


 呆気にとられながらも光一が進んでいると、目の前に木が生えていない場所があり、その先にはぽっかりと口を開けた洞窟が見えてきた。その入り口の周辺には、ナキウの幼体や少年体がいる。少年体が外に出ているのは珍しいが、幼体の面倒を見ているようだ。


 ナキウを殺すのも、縄張りの主への挑発にうってつけだ。


 とりあえず、変異幼体を投げつけるか。


 そう思った光一が変異幼体に手を伸ばすと、変異幼体は興奮冷めやらぬ様子で走り出した。


 予想外のことに、光一は思わず、鎖から手を離す。




「なんだ? 殺すって雰囲気でもないな」




 成り行きを見守ることにした光一。いつ、縄張りの主に襲われてもいいように、周辺への警戒は怠らない。




 光一の元から駆け出した変異幼体は、一直線に少年体へと駆け寄る。性器でしか性別を判断できない光一には分からなかったが、少年体はメスだ。




「はぁー、はぁー」




 両手を万歳をするように振り上げ、頭に血が上ったような様子の変異幼体は、他の幼体たちを押し退けて、少年体へと抱きついた。




「ピィ!? ピギ! ピコピコ!?」




 突然の襲来に驚くメスの少年体。


 抗議の声を上げるその口に、変異幼体は自分の口を押し付けた。


 要は、キスをした。




「…………はあ?」




 てっきり痛めつけるなり、殺すなりすると思っていた光一は脱力する。


 そんな光一には構うことなく、変異幼体は少年体の手を抑えつけて、所謂「合体」した。




「ピィ!? ピギィィィィィ!?」




 いきなり見知らぬ相手に「初めて」を奪われた少年体は、涙を浮かべて暴れる。


 しかし、変異幼体はそれを抑え、少年体の様子を無視して、腰を叩きつけるように前後に振る。


 その乱暴な行いに、痛みと屈辱でメスの少年体は泣くことしかできない。




「ピコ!? プコプコ?」


「プッコ!? ピコピコ」


「ポコポコ! ポロンポロン!」




 周囲にいた幼体たちは、変異幼体の行いが何なのか理解はできていない様子だが、姉が襲われていることだけは分かった。我先にと、巣へと駆け戻り、成体を呼ぶ。




「はぁー! はっ! うっ、うぅっ!」




 変異幼体が感じる快楽が頂点に達しようとした時、顔を横から蹴り飛ばされた。




「きゃっ! え? な! なに!?」




 痛みは快楽に打ち消されたようだが、思ってもいなかった妨害に、変異幼体は驚きを隠せない。


 そこに立っていたのは光一だ。


 呆れたような、見下すような表情を浮かべている。




「な! 何するのさ!」


「俺はな、修行のためにここに来たんだ。テメーの交尾を見に来たわけじゃねーんだよ」


「じゃあ、見なきゃいいじゃない! 邪魔しないでよ!」


「あ? 口の利き方忘れたか?」


「どいてよ! もう少しだったのに!」


「テメェ……」




 光一は剣を引き抜き、足元にいるメスの少年体を斬り殺した。ついでに、胴体を切り刻む。




「あぁ! 何するのさ! 勿体ない!」


「返事は『はい』だけだろ?」


「うるさい! どうするのコレ! もう、我慢できないのに!」




 そう言う変異幼体のイチモツは、一丁前にも勃起している。大きさ的には大したモノじゃないが、明らかに性的に興奮している。森に入る前に興奮していたのは、こういうことだったのだろう。


 それが分かったとて、光一が許すことは無い。


 剣を振り下ろすと、ギロチンのような風の刃が変異幼体の頭上からイチモツへと落下し、勃起したソレを斬り落とした。




「きゃぁーぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」




 噴き出す血は、変異幼体の小さな手では抑えきれない。地面に倒れ伏し、股間を押さえながら、土下座のような姿勢で痛みに耐える。


 そんな変異幼体の頭を踏みつけ、光一が尋ねる。




「おい、フハ先生のとこにあるお前の脳味噌は思い出したか? 十日ほど前に俺が教えたことは何だった?」


「うっうぅぅぅっ! 痛い、痛いよぉぉぉぉ」


「聞いてんのか?」




 光一は足で軽く蹴り、変異幼体を仰向けに変える。


 変異幼体は滂沱のように涙を流し、片手は股間、もう片手には睾丸ごと斬り落とされたイチモツを握っている。




「十日ほど前に俺が教えたことは?」


「うっうっうっ……せっかく、せっかく、また、交尾できると思ったのに……」


「ちっ、ナキウってのはここまで」




 会話にならないことに苛立つ光一の背後から、幼体に呼ばれた成体が現れる。


 惨殺されたメスの少年体の死体を見て、成体は怒り心頭のようだ。




「フゴ! フゴォ! フゴフゴ!」


「うるさい。黙れ」


「ビキィ! ビキビキ!」


「黙れ!」




 光一が一喝し、光一を中心に暴風のような風が周囲を襲う。近くに生えていた木は薙ぎ倒され、成体も数メートルは吹き飛ばされた。変異幼体は木にぶつからなければ、どこまで吹き飛ばされたか分からない。


 地道に修行を積み重ねてきた光一の魔力は、その総量だけなら並の魔術師を上回るレベルになっている。だからこそ、ルビエラはその制御に重点を置いて修行している。




「フ、フギッ!? フギフギ」




 光一に対して恐怖心を抱く成体のナキウ。


 光一は「鎌鼬」を纏わせた剣を振り上げ、その成体に向かって振り下ろした。風の斬撃が放たれ、成体の体を真っ二つに斬り裂いた。




「あ、あぁ……!」




 小さな呻き声。


 その声の主は変異幼体。


 斬り落とされたイチモツを握り締め、光一を精一杯に見開いた目で見つめている。血が抜けて冷静に戻ったのか、性的興奮以上の恐怖心を抱いたのか。




「おい。俺が教えたこと思い出したか?」


「返事は『はい』だけ……です」


「今回は特別に選ばせてやる。その股間の傷口に焼き印押すか、洞窟の中のナキウを皆殺しにしてくるか」


「み、皆殺しは無理だよ。成体には勝てないもん。助けてよ」


「選べ」


「成体だけでもやっつけてよ」


「選べ」


「ねえってば!」


「選べ」


「ひっ……た、助け」


「焼き印な?」


「や、やだ! み、皆殺しにしてくるよ!」




 そう言って、イチモツを大事そうに地面に置き、変異幼体は洞窟へと突撃して行った。


 二十分後、ボコボコにされ、ボロボロになった変異幼体が成体に摘み上げられ、洞窟の外へと投げ捨てられた。六匹ほどの成体が、地面の上の変異幼体を囲んで、口々に罵詈雑言のような言葉を放っている。




「おい!」




 光一が一声掛け、変異幼体が置いていったイチモツを蹴り飛ばした。


 イチモツは放物線を描いて、変異幼体の目の前に落ちる。




「あ……あ……」




 変異幼体はイチモツへと手を伸ばす。


 成体は、ボコボコにする過程で変異幼体の股間にイチモツが無いことを知っており、光一が蹴り飛ばしたモノが変異幼体のイチモツだと理解した。




「フギ!」




 一匹の成体がソレを取り上げる。




「あ!」




 変異幼体がフラフラと立ち上がり、イチモツを奪った成体へと歩み寄る。




「か、返して!」


「フゴフゴ〜? フゴッ!」




 プラプラとイチモツを振って、別の成体へと投げ渡した。


 受け取った成体も同様にイチモツを振り、変異幼体を挑発する。


 変異幼体が向かってくると、また、別の成体へと投げ渡す。




「返せよ〜! ひっぐ、返してよ〜!」




 それを変異幼体は追いかける。


 身長差もあって、簡単には取り返せない。


 延々とイタチごっこをしている成体と変異幼体を見ながら、光一は考える。




(魔獣の縄張りがひしめき合う中で、空白地帯なんてあり得るのか? 空白地帯こそ魔獣が縄張り拡大に狙うだろ。もしかして、縄張りの主は地上にはいない?)


「地上にいないなら、もしかして」




 嫌な予感に光一が冷や汗を流していると、低俗なイタチごっこは終わりを迎えるようだ。


 一匹の成体がわざとイチモツを取り零した。


 ペチョリとイチモツが地面に落ちる。




「ッ!」




 チャンスとばかりに変異幼体が駆け寄る。


 あともう少しで手が届く。


 それこそが、成体の狙いだった。




「フゴッ!」




 足が滑ったとでも言うような、下手くそな演技をして、イチモツを踏み潰した。正確には断面から中身が飛び出しただけだが、原型を留めていないという点では同じだろう。




「あっ!」




 変異幼体が悲鳴を上げると同時に、他の成体たちも群がるようにして、イチモツを踏みつける。幼体から話を聞いて、成体たちはこのイチモツが憎くて堪らなかった。群れの大事なメスを傷物にしたのだから当然なのだろう。




「やめて! やめてよ!」


「フゴッ!」


「フギッ!」




 止めようとする変異幼体を突き飛ばし、延々とイチモツを踏みつける成体たち。




「やめて! やめてってば!」




 変異幼体が号泣しながら叫ぶと、ようやく成体たちの動きが止まった。成体たちが、イチモツの成れの果てを見せつけるために、変異幼体を引き摺る。


 そこにあったのは、土と混ざって泥のようになったイチモツだった何か。




「うっ! うあぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」




 声を上げて号泣する変異幼体。


 それを見て、大爆笑する成体。




「なんでぇ……! なんで、こんなことぉ……! 僕は交尾しただけなのにぃ……! お前らだってしてるじゃないかぁ……!」




 微塵も反省の色が見えない発言に、成体たちからは笑顔が消え、怒りの表情が浮かぶ。


 今度こそ殺してやろう。


 そんな意気込みで成体たちが変異幼体に迫っていると、地面が盛り上がって、その行く手を阻んだ。




「ビキィィィィィィィィィ!」


「ビコビコォォォォォォ!」


「ブキブキ! ブキィィィィ!」


「ボコボコ! ボコォォォォォォ!」




 口々に成体たちは悲鳴のような声を上げ、巣へと逃げ帰ろうとする。


 しかし、地面から飛び出した魔獣に捕獲される。食べるつもりは無いようで、捕獲した端から首を引き千切って捨てている。


 そんな中で、ちゃっかりと変異幼体は光一の元まで逃げ帰っている。




「地上にいないなら、地下にいるわけか。今度はモグラが相手か!」




 空にいるのかとも思ったが、木のせいで地上を襲いにくいし、地上に縄張りを持つ必要性も薄い。だから、地下に縄張りの主がいると思っていたのは正解のようだ。


 光一は「鎌鼬」を纏わせた剣を構え、目の前のモグラと対峙する。


 モグラも、光一を「縄張りを荒らす敵」として認知したようだ。


 モグラとの戦いが始まった。

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