第一章 異世界転生サプライズニンジャ
入社一日目。そこらへんにありそうな、ビルの二階、一室。
出社するや、突然
「新人は、まずはこれだよこれ、懐かしいなぁ。」
先輩社員から一枚の紙を渡された。おいおい、一日目から仕事だ。紙には
「派遣先:Code 3302 ジャンル:異世界」
と見出しの位置に書かれている。
もう始まるのか。落ち着け。仕事内容はとりあえず頭に入ってる。色んなところにサプライズしにいくんだよな。フラッシュモブ的な感じで。
ごめん。前言撤回。何も分かってないや。
だが、先輩社員の言い方から、どうやら新人社員は、まず「異世界」へ派遣されるらしいな。てことは割と良心的な感じか?
この会社が俺を救ってくれたんだ。なんとか頑張るぞ。
「あれ、急ちゃんって忍者家系だっけ?」
先輩社員が声をかけた。
「え、いや、普通に一般人です。鈴木ですよ。鈴木 急。鈴木なんてそこらじゅうにいますよ。それにそういう家系の苗字ってのは大体かっこいいやつなんですよ。鈴木って苗字が忍者家系って……なんかないですよそんなん。」
俺の名前は 鈴木 急。
その苗字の通り、平凡な毎日を過ごしていた俺だが、
見事に就活に失敗。このままでは終わりだと、絶望していた俺を、唯一拾ってもらった会社がここ。株式会社サプライズニンジャ。
藁にもすがる思いで入社をして、意気込んでたけど、冷静に考えて、おかしい、忍者って。職業:忍者ってなんだよ。RPGの新しい役職かよ。
まぁだが、正直わくわくしている。だって男のロマンだろ、忍者って。だってばよって感じだろ。これから俺、忍者名乗れるんだぜ?そんな人生あるか?
いーや、ないね!
「じゃ、明日にはもう行ってもらうから!どういう役に徹するかは、君次第だよ。」
あー、そうか。そういうのを考えなきゃいけないのか。
俺の仕事は世界を面白くすること。俺自身が異世界で、イベントにならなきゃいけないんだ。まって、それじゃあ、忍んでる暇ねぇじゃん。忍者じゃねぇじゃんそんなの……っていやいや、そんなこと今、考える必要が無い。忍者も忍ぶ暇がないぐらいその世界は危機なんだ!
とりあえず明日までに異世界の設定でも見ておくか。
急は、先輩社員から渡された紙に、目を通す。
そこには「派遣先」の項目の下に「世界設定」とご丁寧に書いてあった。
「どれどれ……えーっと、現実世界でトラックに引かれたおじさんが異世界に転生!チートスキルを手にして、ゆっくりスローライフ……ふむ、なるほどね。」
うん。なるほど。で、俺は何をすればいいのこれ。
こんな状況に忍者が突然出てきても転生者の仲間の一人になるか、殺されるかの二択じゃない?
てかさ、今更だけど面白くするって何が基準なんだよ誰目線だよこれ。俺にもなんかスキルあるんだろうな。いつになったら帰ってこれるんだろうな。
急に不安になってきたぞ。
おいおい、この会社、ほんとに大丈夫か!?