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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

[短編]色

作者:

色のない世界は生きているのか。

三月の終わり頃、耳に響くクラクションと共に君は天使になった。


白黒だった僕の心に色を教えてくれた女の子。

隣で向日葵の黄色のように笑っている元気な女の子。

ニットに顔をうずめ耳も手先も赤くして僕にくっついてくる女の子。

いつも顔を薄ピンク色に染めて僕に微笑む女の子。

だけど今日は、見たことのない赤色だ。


何度呼び掛けても君は動かない、ただただ知らない赤が広がっていく。

「これは何色なの?」

やはり返事はない。

透明が僕の目を覆う。ぼやける、前が見えない。君の顔が見えない。

昔、君が言っていた


「透明ってね色がないから何色にでもなれるのよ!だから雨の日は何色の傘にするか迷っちゃう!」


何色にでもなれる、それなら僕は今青いだろう。

いや、青く赤い、たしか紫ーー

あれ、さっきよりもぼやけてる、、?何も聞こえない、、。

そこで僕の意識は途切れた

目を覚ますと白い天井と窓から見えるピンクの桜が目に入った。

あたりを見回すも君の姿はどこにもない。

さっきのは夢、、?僕を置いて死ぬわけないよな、

僕は日付を確認した4月3日


エイプリルフールはもう過ぎたよ

くだらない冗談はよせよと笑って言う。

いつもならごめんと笑って出てくるのに今日はいない

買い物に行っているに違いない。きっとそうだ。

僕は信じたくなかった、だって君がいないと色がない

また白黒に戻るのかそんなのいやだよ、、

温い水が頬をつたう

今は何色だろう

ーガラッー

ドアを開けて入ってきたのは君ではなく看護師さんだった

看護師さんは僕を見るなり先生を呼んだ

看護師さんは僕にいろいろ聞いてきた

だけど僕は自分のことは覚えてないし看護師さんは君のことは聞いてこなかった


「看護師さん、一緒にいた女の子はーー」

言い終わる前に先生が入ってきた

看護師さんは先生に質問の話をした。

全部聞き終わると先生はこっちに来て質問をした


「自分の名前はわかりますか?」

「わかりません。」

「自分の年齢はわかりますか?」

「わかりません。」


自分のことなど覚えていない

知らなくていい

君の事を教えてほしい


「、、じゃあ、あなたと一緒にいた女性はわかりますか?」

「わかります。どこにいるんですか?」

「、、、女性は亡くなりました。救急隊員が駆け付けた頃にはーー」

「嘘、だ、」


そのあとの話は耳に入らなかった

死んだ?嘘だ、ドッキリだよな?生きてるよな?

出て来いよ僕の前でもう一度笑ってよ

僕は顔をぐしゃぐしゃにしてその日を終えた。

僕ははっと起きた。疲れて寝たようだ。

ナースコールを押してその日の血圧などを測った。

病院食が目の前に置かれた、

僕はそれを食べることはなかった。

いや、食べたくなかった。君はもう食べることは出来ないんだと僕の心は泣いている。


そうやって何日も飲まず食わずに過ごすと体も限界に近くなってきた。1週間も過ぎた頃、僕は夢を見た。


ん、、。

(あ、やっと起きた!もうご飯できてるよ!)

え、、?い、生きて、る?

(ふふっ、どうしたの?夢の話?)

い、生きてる、、

(ええ!大丈夫?怖い夢でも見たの?)

うん、ご、めん、守れなく、て、。君を、救えな、かった

(大丈夫だよ。落ち着いて。私はここにいるよ。)


僕は話をした。君はうんうんと頭を揺らしながら静かに話を聞いていた。


(そっか。じゃあ私は死んじゃったんだね。)

ごめん。、、ごめん。

(謝らなくっていいんだよ!それよりも私は君に私の分生きて欲しいな!)

君の分まで、生きる、?

(そう!そうしたら私も安心して天国で見守れるよ!)

でも、君が居なきゃ僕はー

(大丈夫!君なら大丈夫!私は君に心に生きてるよ。)

心に、、、

(だから、そろそろ起きよう?ご飯食べて元気に過ごそ!)

え、まだ、君と話したいことがー


ーハッー

夢から覚めた。空はオレンジ色に輝いて君のように僕を照らす西日が眩しい。

そこにご飯を看護師さんが持ってきた。


「起きましたか。ご飯、食べますか?」

「、、た、食べます。あの子の分まで生きます。」

「!わかりました。でも、数日間食べていないところに普通の食事はお腹が痛くなってしまうので、お粥を用意してまいりますね!」

「ありがとうございます。」

「君の分まで生きるよ。君がここにいるから。見守っていてね。」

ー頑張ってねー

えっ。振り向いたが誰もいない。

うん。頑張るよ。ありがとう。


ぼやけた色でも輝いている。

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