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恋が人を食う〜天使くんと恋愛頭脳戦する怪物の子〜  作者: くびつりのこびと
エピソードI 【フィクションの恋】
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3.母と子

「ただいま、母さん」


 俺はユニットを組んだメンバーとの合同レッスン、そして親睦会となるカラオケを終えて、近所のスーパーで晩飯の買い物をして帰宅する。


 時刻は9時半、夕飯にはかなり遅い時間だし、高校生が帰宅するにもかなり遅い時間だが、ウチの母さんは昼夜逆転生活をした専業主婦なので飯の時間については(むし)ろ今くらいが丁度いい時間だった。


 俺はキッチンで手早くカルボナーラを作り、スーパーで安売りされていたプリン、あとパックのサラダ惣菜を2分割して皿に盛って、それらを載せたトレーを母さんの部屋まで持ってくる。

 月曜日の献立は麺類、火曜日は鍋、水曜日は和食、木曜日は魚介、金曜日はカレー、俺は生活リズムを作る為に献立はある程度固定していた。


 一応ノックしてから母さんに呼びかけた。


「母さん、晩御飯作ったから、入るね」


 俺は部屋に入ると床に置いてある空のトレーと交換するようにして、持ってきたトレーと交換する。


 そして(かじ)り付くように昔のアイドルのビデオを見ている母さんを刺激しないようにそっと、部屋から退出するのであった。




 俺の母さんは今、精神を病んでいる。


 理由は、俺の父親が大女優との熱愛、そして俺以外の隠し子の存在がいる事をテレビによって暴露されてしまい、それによって父親がアイドルを引退しても母さんの元には来ないとはっきりと悟ったからである。


 だから母さんはもう俺に子役を続ける事を強要してないし、俺にトップアイドルを目指す事も強要していない。


 じゃあ何故俺がトップアイドルを目指し続けているのかと言えば、ここで辞めたらただ〝(むな)しい〟からである。


 俺の人生はまだまだこれからであり、青春も今から取り返せるのかもしれないが、思春期の情緒も親の愛情も全部捧げた俺が今更〝普通の人間〟になんてなれる訳も無い。


 そして俺は母さんよりも近くで父親の姿を見ていた為に、父親が尊敬されるべき人間で、母さんこそが捨てられても仕方ない人間だと理解していた為に、父親を恨む気にもなれなかった。


 だから子役時代から情緒を犠牲にして道具として培って来た従順さ、それに導かれるようにジョリーさんが望むままの、父親の跡を継ぐトップアイドルの道を進んでいる、という訳である。


 食事を終えた俺は軽くシャワーを浴びて、歯を磨いて、学校の宿題なんかは明日の俺に丸投げして眠る事にした。


 課題を提出しなければ留年するだけだが、俺が通う高校は芸能科のある高卒資格を与える為だけの高校だし、芸能科の生徒は出席日数すら融通が効くレベルで規則が緩く、留年や中退も殆どない。


 なので俺は課題を未提出にする罪悪感を感じつつも、疲労と睡魔に抗えずにそのまま眠りについたのであった。

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