34.マインデート
「あ、キキくん、待ってたよ、一緒に帰ろ!!」
次の日の放課後、前日無断外泊した俺を心配したのか、つぶ子はまた校門で待ち伏せしていた。
俺は予告無しで出待ちされていた事に慌てて、人目を避けるように早足でその場を離れながらつぶ子に話しかけた。
「こういうの、変な誤解を生むからやめて欲しいな、関係は秘密にする契約だよね」
「それ言ったらキキくんだって昨日無断外泊したよね、私、朝までずっと待ってたんだよ、電話にも出ないし、警察に連絡するか迷ってたんだから」
「・・・ごめん、心配させたのは謝るけど、でも、それとこれは話が別だから、同棲バレしてアイドル続けられなくなったら契約も無効って話だから、だから人前で過ごす距離感には気を遣って欲しいな」
「分かった、これからは気をつけるね、それでキキくん、今日はレッスンとかはあるのかな?、もし予定とか無いなら私と放課後デートとかどうかな?、退屈はさせないよ」
「放課後デート・・・行先は?」
俺としてもつぶ子とフランクに会話出来る雰囲気作りはしたかった所ではあるが、裕福では無いのでテーマパークや舞台に誘われても金が無いので断るしかない、なので恥をかく前に先に行先を知りたい所だったが。
「じゃーん、ランドのチケット、花狂魔の仲間から貰ったんだ、キキくん好きだったよね?、どうかな」
母さんとの数少ない幸せな思い出にあるランドの記憶は幸せで楽しいもので、宝物のような特別な体験の思い出の場所、だから初めてのデートの場所としてはこれ以上なくおあつらえ向きと言えるか。
「・・・ランドか、俺は1回しか行った事ないからエスコートとか出来ないと思うけどそれでもいいなら、あと変装は完璧にして」
「大丈夫、抜かりは無いよ」
そう言ってつぶ子はさらさらのロングを左右に結んでツインテールにして、制服の胸のリボンをゴシックな黒色の物に換装し、肌をファンデーションを濃く塗って色白にしてアイシャドウを塗りたくり、化粧濃いめで魔性な雰囲気へと変貌する。
それは多分分類的には地雷系と言った感じのキャラなのだろう、天然陽キャ美少女の茂木田のつぶ子の面影を残さないものであり、素材の美しさは覆い隠せていないものの、茂木田つぶ子の面影はすっかり脱色した完璧な変装だった。
「どう?、お母様から聞いたの、キキくんみたいな男の子はこういうのが好きって、似合ってるかな」
・・・確かに、2次元のキャラならそれは人気の属性だろう。
俺みたいな陰の男はつぶ子みたいな陽キャ完璧美少女に対して畏れや劣等感を抱くものだし、文学少女系や眼鏡っ娘も好きだが、そういうのは小柄な少女が似合う役柄であり、スレンダーモデル体型のつぶ子とは若干反りが合わない。
そして変装という元の個性を塗り潰すという目的に於いては、地雷系という強過ぎる要素はつぶ子と完璧に噛み合っていると言っていい。
それならギャルやサブカル系でもいいのでは?という話だが、やはりオタクウケがいいのは断然にゴスロリベースの地雷系だ。
オタサーの姫的なイメージを凝縮したのが今目の前にいるつぶ子であり、確かに目の前のつぶ子からは、キャバクラに入れば一部の太客から沢山金を巻上げられそうなオーラを感じた。
キャバクラ仕込みの母さんの発案というのが不穏だが、しかし目の前のつぶ子が反則的なくらいに完璧な地雷系である事に悔しくも俺はときめいてしまった。
「──────────っ、完璧な変装だね、地雷系まで着こなせるなんて、やっぱりつぶちゃんは凄いや」
つぶ子は既に役に入っているのか、声のトーンを少し落として答えた。
「それじゃ行こうか、私、プライベートでランドに行くのは初めてだからすっごく楽しみだよ」
つぶ子は俺の腕に抱き着いてくるものの、振りほどく事も出来ないので俺はそのままつぶ子と一緒にランドまでそのまま向かった。
俺はつぶ子に抱きつかれながらも、つぶ子に三股の協力を頼むかどうかを悩んだまま、上の空で電車に揺られていた。




