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恋が人を食う〜天使くんと恋愛頭脳戦する怪物の子〜  作者: くびつりのこびと
エピソードI 【フィクションの恋】
2/49

1.天使くん、伽羅蕗稀樹のあらまし

すごく影響受けてるとだけ

気になるかもしれませんがご容赦を

 この物語はフィクションである。


 そしてこれは真実の愛を見つけるお話でも無ければ、芸能界の嘘と現実を暴くお話でも無い。


 またこの物語主人公伽羅蕗(きゃらぶき)稀樹(きじゅ)16歳はフィクションの存在では無いし、病室で夢見る老人だったりもしない。


 ちゃんとこの世界に実在する普通の芸能人の卵で、アイドル志望の高校生である。


 だからまずはそんな俺の物語について語らせてもらおう。




 俺の物語において、親の事は今の俺を構成する要素の大半を占めているので最初に説明するが。


 父親は20年以上現役で活躍するような、ほぼ国民的アイドルで。


 ・・・母親は、それに捨てられて心を病みつつ、シングルマザーで俺を育てた少しかわいそうな人である。


 その〝少し〟がちょっとなのかちょっとじゃないのかは諸説あるだろうけど、俺の視点から見た俺の物語からすれば、まだ俺よりも〝マシ〟なので、俺の主観として少しと表記させてもらう。


 そして俺の芸能界での人生は、そんな母親の人生の意趣返しとして、俺を父親を超える大人気スターに育てる為に子役に仕立てる事から端を発する。


 当初の俺は父親がいる業界の末端というだけでも胸踊るものだったし、いつか父親と共演する事を夢見て、物語の主人公のようにひたむきに努力する事に酔っていた。


 しかし残念ながら、子役の世界で頭角を現すのはほんのひと握りの天才だけであり、俺はそっち側では無かった。


 今見返してみても、当時の俺の演技とは徹頭徹尾〝子供の演技〟であり、大人を感動させられるレベルの嘘を本当にする演技力を持たなかった故に、俺が子役として成功出来なかったのは妥当な話だった。


 でも母親は違った。


 100回以上受けたオーディションで一度も主役を取れなかった事に更に心を病んで、今までは捨てられても文句言わずに養育費だけを受け取っていたにも関わらず、「この子を主役にしないと全部バラす」と父親のアイドル事務所に脅しをかけてまで俺に〝主役〟を取ってスターになる事を求めたのだった。


 そして俺は母親の努力と父親の事務所のコネで、とある映画の主役にゴリ押しで抜擢(ばってき)されたのである。


 その映画とは、よくいる善良な主人公の元に神から遣わされた双子の天使がやって来て、その天使が主人公とヒロインをくっつけようとする、ドタバタハートフルなラブコメ漫画が原作の物語である。


 結論から言うとその映画はそれなりにヒットした。


 それも当然の事だった、なぜなら俺と一緒に共演したもう一人が紛うことなき〝天才〟だったから。


 俺は主役と言いつつも、画面の華として映っているだけで、感動的なシーンやセリフの長いシーンなど難しいシーンは全部天才の相方任せとなったのだが。


 でもその映画『天使くんと天使ちゃん』のヒットによって俺は子役としてブレイクして、そこそこの人気と共にそこそこの出世街道を歩むことになったのである。


 今でもネットでは芸名である乾拭(からぶき)キキよりもブレイクした時の役名である天使くんの方が浸透しており、現場でもキキと呼ばれる事は殆ど無いくらいだ。


 俺の相方だった天使ちゃんは天使ちゃん役などその素晴らしいキャリアを彩る端役の一つに過ぎないが、天使くんの俺にとってはいつまでも天使くんが俺の人生における代表作のままだった、という話なのである。


 そんな俺は天使くん以降まともに演技で成功する事もなく、子供の演技で()()ならギリ及第点とも、()()なら普通に落第点とも言える演技を繰り返しながら無事に子役を卒業して、今は父親と同じ事務所に所属するアイドルの卵になったのであった。


 ───────故に今の俺の人生は親の影響が大半を占めるという訳である。


 これはそんな俺が、偶像(フィクション)の世界で頂点まで成り上がる物語である。

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