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恋が人を食う〜天使くんと恋愛頭脳戦する怪物の子〜  作者: くびつりのこびと
エピソードI 【フィクションの恋】
18/49

17.待ち合わせ場所で

「お待たせ、1時間前に来るとか、キキくん相変わらず早いね」


「・・・ま、売れっ子天才女優のつぶちゃんを1分でも待たせるのは俺のポリシーに反するし、それにスマホで動画見てれば時間も潰せるからね、・・・てかつぶちゃん、芸能人なのにその格好、目立つ場所で待ち合わせしてそれは無いんじゃない?」


 自分もちゃっかり1時間前に来ているつぶ子の姿を見て俺はたじろぎつつそう返す。

 都心の駅前の広場という、かなり目立つ場所で昼前から待ち合わせしていたにも関わらずに、つぶ子は有名人という自覚を無視したような、変装なんてする気の無い、自分の魅力を遺憾(いかん)無く引き出したテレビから飛び出して来たような120点のオシャレ服で現れた。

 清楚さの塊のような上品なワンピースに、恐らくカシミヤだろう高そうなカーディガンをドレスのようにオフショルダーにして羽織った姿。

 それをお姫様のように演じているつぶ子が着ているのである。


 その見た目のオーラは凄まじく、道行く人々全てが振り返ってつぶ子の存在に目を奪われて注目を集めているが、当のつぶ子はそんな視線の全てを集めた上でこう言うのであった。


「だって今日はキキくんと()()()のデートだし、今日は私がエスコートするから気の抜けた格好とかしたら失礼でしょ?」


 つぶ子がそう言うとデートという単語に反応したのか一同の視線が俺に向けられた。

 俺はそれが悪ふざけの悪ノリなのか、それとも既に演技の稽古は始まっていて、俺の反応を見る為にそう言ったのかの判断はつかなかった為に、なんと返していいかと迷ったものの。

 でも、ここで変に隠そうとしたり、やましい事があるような態度を見せてもつぶ子の評判にも俺の評判にも傷をつけると思って、ノリに付き合うようにして変装用のメガネと帽子とマスクを外して、顔を隠していた前髪をセンターパートに手早くセットし直して、爽やかな好青年である〝乾拭キキ〟を演じてこう言ったのである。


「だったら俺も全力でつぶちゃんを楽しませないとだね、こっちこそ気が抜けないな、あーあ、〝本気デートの練習〟だって知ってたら俺もこんな()にあわせた服装にはしなかったんだけどなぁ」


 俺がそう言うとやはりつぶ子と共演の多い俺は知名度のおかげか、「あれって天使くんの子?」「やっぱ仲良いんだね」「役作りの練習とかなのかな?」と、つぶ子のデート相手として納得して貰えたのか、数名は俺たちをスマホで撮影し、そして何人かの中学生くらいの女子が、俺とつぶ子にそれぞれサインをねだってきた。


「あ、あの、ファンです、天使くんの頃からずっとかっこいいと思ってました、応援してます!!」


「ありがとう、これからも応援よろしくお願いします」


「うわぁ、本物のつぶ子ちゃんだ、近くで見るとすっごくかわいい、感激です!!」


「えへへ、嬉しい、ありがとう!、サインは〇〇ちゃんへって書いた方がいい?」


 この調子で俺とつぶ子はファンサービス全開で対応していると、そこから長蛇の列が出来て近くにいた人間全員からサインを頼まれる事になるのだが、俺とつぶ子は所持していたサインペンのインクが切れる1時間後まで、そのままぶっ通しでサインを書き続けるのであった。


 そしてサインペンのインクが切れたのを一区切りにして解散を告げた訳だが、その頃にはつぶ子の影響なのか駅前の広場には数百人規模の人だかりが出来ており、俺たちはとてつもない注目を受けていたのであった。


「あの、ツーショットいいですか」

「こっちこっち、茂木田つぶ子と、あと天使くんがいる」

「うおっ、すげー、生の芸能人みるの初めて」

「何これ、ドラマの撮影とか?」


 解散を告げてもなお人だかりは治まらずに、俺たちは囲まれて動けなくなっていた。

 これが今をときめく天才女優、茂木田つぶ子の影響力である。

 その辺のアイドルよりよっぽど知名度があるし、賞を取るような大作映画にも何本も出演している、最近では海外からのオファーも来ていて、日本では大人気、覇権、国民的女優と言って差し支えないまだ高校生にして超人気女優なのだった。

 そんな彼女が変装無しで駅前を歩いていて通行人に捕まらない筈が無い、俺はこの状況をどう解決したものかと急いで頭を働かすものの、俺が行動するより早くつぶ子は俺の手を掴んでこう言ったのである。


「すみません、今日はデートの日なので、これで失礼させて貰います!!」


 そう言ってつぶ子は俺の手を引きながら人混みを切り裂くようにして駆け出した。


「え?二人付き合ってるの?」

「撮影とかじゃね?、流石に釣り合わないでしょ」

「天使くんは今ジョリボーイズだしそれは無いんじゃないかな」

「じゃあバラエティとか何かの企画とか?」


 つぶ子の発言をそれぞれ吟味するが、やはり本気で俺とつぶ子が付き合っていると考える人間は多くないようであり、俺はそんな人々の困惑した顔に一つ一つ丁寧に「失礼します」と爽やかにお辞儀しながら、つぶ子に連れられるままに駅前から逃げるように人の群れを駆け抜けるのであった。

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