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恋が人を食う〜天使くんと恋愛頭脳戦する怪物の子〜  作者: くびつりのこびと
エピソードI 【フィクションの恋】
15/49

14.結果発表

 演技を終えた俺を拍手で称えるものは一人もいなかった。


 当然か、これを演技と呼べるのかは分からないし、そしてアイドルの隠し子なんて、内容が荒唐無稽(こうとうむけい)過ぎて信じきれないものだからだろう。

 別に今演じた演目とは俺の人生のありのままでは無い。

 口では恩人のように感謝してると言いつつも、俺はジョリーさんやつぶ子の事も何食わぬ顔で利用している。

 まぁつまり俺の本質はそういうものであり、客観的に共感されるようにと、多少の脚色は加えられていたという事だからだ。


 だが俺は生まれて初めて、模倣や技術、演じるという作り物に頼らない、自分の心をありのままに表現するという自分だけの演技を行い、それに大きな手応えを感じていた。

 なので照明の逆光で見えなかった観客側で、ケイとゼンが号泣していたのを見た時に、俺はそこで初めて自分の演技で他人を感動させたという実感を得たのであった。


「うぅ・・・、キキ、俺たちは、俺たちは絶対トップアイドルになるぞ!!」


「ごめんねキキ、僕は君の事を侮っていたみたいだ、ゴリ押しで子役としてブレイクしただけで芸歴が長いだけの三流役者だって、ずっと思ってた、でも、キキはこんなに苦しんで、こんなに強い気持ちでトップアイドルを目指していたんだね、すごいよキキ、君はすごい頑張り屋さんだ、僕らならきっと、本当にトップアイドルになれるよ!!」


 そう言って二人は俺に抱きついてくる。

 俺は思いがけず団結を深める結果となった事により、仮にこのオーディションが落選していたとしても収穫はあったかと、そんな風に結果に対して満足していたのだが。


 そこでおでんはパンパンと乾いた拍手をしながらこちらに歩み寄った。


「キキ、俺は6年間ずっとお前を見てきたが、今日のが最高の演技だった、なぁ、キキ、お前にとって〝最高の演技〟とはなんだ」


 最高の演技、それは今までの俺からすれば客観的に優れている、表現力に優れた天才の演技だと思っていたが、だが、〝正解〟とはそれだけでは無いのだと、今日ここで悟ったのだった。


「・・・それは、たぶん、まだ上手く掴めてはいないんですけど、でもあくまで俺の〝主観〟で言わせてもらうならば、それは、表現力の善し悪しだけじゃなくて、〝人を幸せにするものである事〟です、・・・きっと、本当の演技には、人を救う力があるんだって、今日ここで、俺は()()()ましたから」


 天才であるつぶ子、そして父親。


 二人にどうしようも無く劣悪な人生を救済された俺の主観から見れば、最高とはそれ以外には有り得ないものだった。


 だがそれが正解だという自信は無い、しかしおでんは満足したように頷くと、こう言ったのだ。


「演技なんて所詮はフィクションだ、嘘でしかない、でも世の中にはその嘘を本物に見せかける事が出来る人間がいて、その嘘で人を幸せに出来る人間がいる、『DivADuO』の桜梅(さくらうめ)桃華(ももか)なんてその最たる例だろう、世の中には歌一つで世界を平和にするような規格外のバケモンがいるんだ、それを実現出来るかどうかとは、その嘘みたいな幻想を、テメェが本気で信じられるかって事なんだと、俺は思う────────合格だ、キキ、お前の演技は、俺の胸に熱く響いたぜ、これからは俺の〝夢〟の為に、俺の〝趣味〟に付き合ってくれ!!」


「──────────っ、ありがとうございます!!」


 おでんの差し出した手を掴んで頭を下げると、つぶ子は見計らっていたかのように俺に抱きついた。


「やったね、キキくん!!、4回目にしてやっと、やっと合格出来たね!!、最高の演技だった、私、もう涙が止まらない・・・うぅっ!」


 そう言ってつぶ子は涙でぐしゃぐしゃになった顔で俺の胸に顔を埋めるものの、これくらいの演技はつぶ子にとっては朝飯前だと知っているので、それには俺も演技で応えて、クライマックスの演出を盛り上げるようにこう言うのであった。


「ありがとうつぶちゃん、全部君のお陰だ、君がいてくれたからだよ、ありがとう、今日まで沢山助けてくれたね、でもこれからは同じ劇団の団員として、最高のパートナーとして、俺がつぶちゃんを助けてあげられるように頑張るから、これからも一緒に頑張ろう!!」


「──────────うんっ!」


 そう言って俺は優しくつぶ子を抱き締めてやると、つぶ子はそれに応えるようにぎゅうううううっと更に強く俺の体を抱み込む。


 これにて一件落着フィナーレと閉幕しそうな雰囲気だが、残念ながらつぶ子とのやり取りの全ては茶番であり、俺の物語はまだまだ続くのである。

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