まさかの特級冒険者?
目を覚ましたとき俺は白い部屋で寝ていた。なんとなくここが病院であるということはわかった。
「あっ!起きましたよー」
看護婦さんの声が聞こえた。にしてもなんでここにいるんだっけ?記憶が曖昧だ。
「元気かい?少年」
どこかで聞いたような…そんな声が聞こえる。
「僕は何を…」
「町までの道で夜雀に襲われやられそうになっていたところを僕が助けたんだよ」
思い出した。冒険者試験に向かおうとしていたとき襲われたんだ。しかし不思議な点が一つある。
かなり深い傷を負い更には毒も全身に回っているはずなのにきれいに治っていて、身体もしっかり動く。
「僕は大怪我を負ったはずでは?」
「あー!そのことは心配御無用僕が治してあげたからね。まあ細かいことは気にしなくていいよ」
見ず知らずの俺なんかに親切にしてくれるなんてなんて優しいんだ。彼は僕の恩人だ。どうか御礼がしたい。
「あのっ、名前は何ていうんですか?」
「自己紹介がまだだったね。僕は特級五位冒険者の
水島霧って言うんだ」
「特級?!」
まさか特級冒険者の方に助けてもらえるなんて驚いた。
俺が倒せなかった夜雀を簡単に倒したのも納得だ。
水島さんと俺の違いはなんだ?別に特別な能力を使って相手を倒した訳でもなかったし何か魔法を使ったようにも見えなかった。目の前には特級冒険者がいる。明日の冒険者試験のためにも何かアドバイスを貰いたい。
「水島さん、僕は一番の冒険者を目指しているんですがどうすればあなたのように強くなれますか?」
「中々素敵な夢じゃないか」
褒められたかと思ったが顔つきが変わり真面目に話し始めた。
「はっきり言うと一番になるには全て足りない。身体能力や技術、魔力とか君には武器があるのかい?僕の見立てではまだ持ち合わせていないようだね。」
痛いところを突かれてしまった。スキルも未だ不明で、修行でステータスが上がったとは言え、全体の水準が
上がっただけで武器と呼べるものはない。
「水島さんの武器はなんですか?」
「いい質問するねー。俺の武器は剣の技術そして何と言っても…」
何か重大発表をするかのような間を作り言った
「この伝説品、溶剣 透羅ノ剣だ!」
今日一番のテンションで誇らしげに言った。それもそうで特級冒険者でさえ入手困難な伝説品を持っているのだから。かなり貴重で強力な効果を持つという。
「この剣はさ、昔厄災で現れたスライムからドロップした物なんだよ。そのスライムは食べた物の力などを吸収して強力になり人間を支配しようと魔王になったんだよね。もちろん冒険者サイドから討伐隊が派遣されたんだけど特級6名、一級11名死亡するかなりの強敵だったんだ。俺は一緒に組んでたやつのおかげで生き残ってスライムを倒せたんだ。でもそいつは死んだよ」
重い話で相槌がうまく打てず俺が詰まっていると、
「そんな強い魔物なだけあってこの透羅ノ剣も強力なんだ。君あの夜雀かなり強かったろ?
あれは厄災の魔物だから普通よりも強かったんだ」
「どうりで硬くて二級以上の強さがあると思ったのか」
「硬かったろ?でもこの剣は刃から溶解液を出して大体の物は切れる。あと切った相手にスライムの細胞を付けて傷付いた場所を少しずつ捕食していくんだ。また、 質感や形状なんかも好きに変えられる。敵の魔法吸収 とか色々できる優れ物さ」
そんなに便利なら俺が使っても特級になれそうだ。
「そんな剣なら誰でも特級になれるとか考えるアホが たまにいるんだけどさあ、この剣は使い手を選ぶんだよね。僕以外の使いこなせる人はあんまりいないかな」
まるで思考を見透かしているかのように俺に言った。
「話しは変わるけど君はこれから冒険者試験を受けるのかな?」
「そのつもりです」
「大変だと思うけど頑張ってね!今回の試験監督は特に面倒臭いやつだと思うけど…」
「面倒臭いやつって?」
「あー気にしないで、さて透羅ノ剣の自慢も終わったし行くかー。ばいばーい」
言いたくないのか。話を流されてしまった。
「最後に一ついいかな?君の名前は?」
「カミケルです」
「いい名前だね!覚えておくよじゃあ!」
そういって出て行ってしまった。幸いにも怪我は完治しているし明日の冒険者試験には間に合いそうだ。今日はここの病院で寝泊まりさせてもらうことにした。
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