その5
宝箱の報酬は100階層の次は200階層だった
100階層毎に報酬があるのか?
そんな思いでいたら裏切られた気分だった。
300階層に来ても宝箱なんてなかったからだ
宝箱が無いのにまだ下の階層があるのか?
疑問が走馬灯のように次々と泉の如く湧いて来る
400階層に来ても何もなかった。
ここからは話を少し飛ばそう
地下ダンジョンに入って6日目
999階層にまで降りてきた
こんな所まで当初は来る予定なんてなかったんだが
宝箱で小遣い稼ぎの念が消えず引くに引けない所まで来た
999階層に来てやっと3度目の宝箱が置いてある
しかしその前方には巨大な赤龍がいた
「人間がここまで来るとはな。正直想定外だよ。私は天叢雲剣を守る守護者。天叢雲剣は天地の構造を変える程の強力な武器。誰にでも渡せるような代物じゃあないんだ。」
「天叢雲剣?俺は別にその剣にこだわってここまで来たんじゃないぜ。」
「じゃあ何のためにここまでやって来た?」
「小遣い稼ぎだよ。宝箱の報酬を高額で買い取ってくれる人間を見つけたんだ。宝箱の中身は当然頂くぜ?」
「小遣い稼ぎで天叢雲剣を手に入れるだと?お前は人間としては底辺に属する勘違い野郎だ。そんな志を持つ人間に宝箱に入っている天叢雲剣は渡せないな」
「ならどうする?闘うのか?」
「闘いじゃない。一方的な殺戮だ。」
赤龍が巨大な炎を吐き出した
999階層がたちまちに炎の海と化す
「いわゆる炎魔術というものだ。現代の人間世界では魔術が廃れてるんだってな?」
「魔術が使えるからって調子に乗るなよ。俺の魔力を見くびるな!」
俺は全力で魔力の圧を赤龍に放つ
空間がひび割れ歪むような空気の圧は頑丈な地下ダンジョンに亀裂を起こさせる
赤龍は壁に激しく吹っ飛ばされ壁が抉れる
「お前みたいな志の人間なんかに……」
赤龍は意識を失った
「直彦、やったな!巨大な赤龍に勝ったぞ!」
「ああ、998階層までの魔物とは比べ物にならない程の相手だったな。」
宝箱には石板が入っている。
石板に文字が刻まれている
【天叢雲剣 Sランク】
「直彦、Sランクって何だ?」
「結構レアな武器って事なんじゃないか?俺も詳しい事はわからねぇ」
ナルカミは石板をバッグに回収する
俺は天叢雲剣を手に取ってみた
その時、天叢雲剣の記憶が俺の体内を駆け回り始めた
「なんだ、これは?」
俺は剣など振った事はないが数々の剣技の記憶が俺にインプットされていく
時間にしてわずか10秒ほどではあるが膨大な剣技のデータが一気に一括ダウンロードされたと直感で分かった。
俺は理解した
宮本武蔵が書いた五輪書の境地
そのレベルの境地が俺の身に備わった
剣を持ったこともないという言わば剣に関しては幼稚園児程度ある俺だが一気に飛び級して大学院の博士課程を卒業したとも言えるような確信を備える。Sランクの武器とは、そんな常識さえも覆すものなのか?
俺は石板をナルカミに持たすが
天叢雲剣は俺が自身で装備する事にした
「なあ、直彦。その剣を俺にも貸してくれよ。」
「なんでだよ。」
「俺だって剣には興味があるんだ。」
「剣に興味があるなら石板を売った金で買ってやる。この剣は俺が装備する」
それにしても999階層が現在の階層
下はどこまで続くのか?
俺たちの飲食料もあと1日分しか無いぞ
「ナルカミ、地上に戻るか?」
「地上へ?次は1000階層だぞ」
「なんだ、1000階層に何かあるのか?」
「絶対あるだろ!数字の桁が1つ増えるんだぞ」
「でも飲食料をこれ以上消費出来ないぞ」
「なら次の1000階層で最後にすればいいじゃんか」
「なんでそんなに1000階層にこだわる?」
「次が最後の階層の気がするんだ」
「まあ本当に最後なら行く価値はあるな。その代わり1001階層もあったなら諦めろよ」
俺はナルカミの猛烈な後押しにより1000階層の階段を降りていく




