その44
宿屋とは疲れを癒す場所でもあるが
先程の一悶着の騒動で皆の心は穏やかではなかった。
特に俺は込み上げてくる怒りをなかなか抑えられない
原因はナルカミだ
ナルカミの奇想天外の言動で振り回される事に
苛立ちを隠す事が出来ない。
「ナルカミさん。事は穏やかにいきましょうよ」
「穏やかだと?俺はいつも穏やかじゃねぇか。天神如きが俺に指図するなよ」
「一応、私も神なんですけど……」
「天神も神なのか?」
「え、ナルカミさん。今更ですか?私を人間だと思ってたんですかね。」
「もう天神は人間の分類でいいよ」
「神は人間に転生出来ないんですけど……」
一応俺たちのリーダーは何故かナルカミとなってる為
ナルカミが仕切る事が最近多い
本来ならばナルカミを追放する所だが
俺、佐藤直彦の分身精霊であるため
ナルカミにもしもの事があれば俺も同時に被害を受ける
そのジレンマの為、ナルカミは放置せざるを得ない
「九頭龍、ジュース買ってこい!」
「ジュース?俺はナルカミさんのパシリじゃないんですけど」
「パシリだよ!九頭龍がジュース買って来ないと俺が喉渇くだろうが」
「ご自分でお買いになれば問題ないかと」
「俺は戦闘で疲れてるんだよ」
「ナルカミさんが戦闘した事ありましたっけ?」
「いつも闘ってるだろうが!」
「ムムム。そんな事ないはずなんですけど」
「俺は自分と闘ってるんだ!もういい。俺が自分でジュース買いに行く。覚えてろよ、お前ら!」
ナルカミはわずか20メートル先の自販機に向かう
そこで自販機に並ぶ老人がいた
「どけよ、お前!俺は早くジュースが買いたいんだ」
「今はワシが選んでる最中だろう。精霊は黙りなさい」
「なんだと?時は待ってくれないんだよ。その事は分かるか?ジジイ」
「随分と口の悪い精霊じゃな。少し待ちなさい」
「だから俺は待てねぇんだよ!」
老人はなにやらブツブツ唱え始めた
良く耳を澄ますと詠唱を唱えている
俺は急激な魔力の上昇値を感じて廊下に出ると
ナルカミの目の前で詠唱を唱えてる老人を発見
「ナルカミ!逃げろ!危ねぇぞ」
その時ナルカミは落とした小銭を拾おうとして
かがむ事で老人の炎魔術をかわす事が出来た
「なにしてんだ、ジジイ!」
俺は瞬時に天叢雲剣を引き出し炸裂させた
見事に宿屋が一刀両断された
老人である神が衝撃のもとに倒れている
「……ワシは自販機に居ただけで何という目に……」
「おい、ジジイ!お前、神だな?」
「……お前に関係ないだろう」
「それが関係あるんだよ。俺は神狩りしてるからな。」
「……神狩り?そうかお前が噂の」
「わかってんのか。名前を教えてもらうぜ」
「ワシもここまでか。……ヘケト」
神の腕輪が光りヘケトは収納された。
目的である神狩りは達成出来たが宿屋がぶっ壊れてしまった。
店の人たちは大騒ぎになったが
俺たちは両断された宿屋で一晩過ごす事になった。




