その37
だんだん歩いていると舗装された道に辿り着いた
おそらくこの道は町につながっているんだろう
天気は荒れる事もなく
極めて穏やかな晴天といえる
何気なく歩いていると、ここが神界という事を忘れてしまい
現世を歩いているのか、いや違うのかと
自問自答になる事がある。
道中には人間たちとすれ違う
ここはあの世なので人間たちは皆、頭の上に光輪がある
それが死者である証拠
俺は前代未聞の現世の人間なので
ここの神界では異質の存在となる
時々、道をすれ違う人から言われる
「あんた、現世の人間か?」
そんなセリフは耳にタコが出来る位に聞いた。
そこまで珍しいもんかね。
そんなに光輪がないのが珍しいのなら
手作りで作ってみようか
「おい、天神」
「何ですか?」
「俺の頭の上に光輪を作れよ」
「なんですか、急に。無茶言わないで下さいよ。」
「俺が頭の上に光輪がない事でやたらめったら皆がうるさいんだよ」
「佐藤さんが自分で作ればいいじゃないですか。」
「どうやって?」
「黒魔術で」
「そんな都合の良い黒魔術なんてねぇよ。黒魔術なんか使えてもあまり得しない方が多い」
「戦闘でいっぱい使ってるじゃないですか。」
「そうだぞ、直彦。お前から黒魔術を取ったら何も残らねぇ」
「天叢雲剣があるだろ。」
結局、光輪を作るのは断念した。
なんで神界には現世の人間がいないのかね。
まあ、現世の人間界には魔術を使える奴はあまりいなかったな
俺という存在が極めて珍しいのかもしれない
考え事をして歩いていたら石に躓いて転んだ。
痛てぇ
たかだか転んだ程度なのに痛い
そうか霊力を身体中に行き渡らせてないからだ。
戦闘中は常に霊力で身体を覆ってるから
あまりダメージは受けない。
つまり今は完全なる無防備の状態。
今のを教訓に身体に霊力を纏う練習をしよう。
そんな事を考えていると路上で武器を販売する商人がいる
「九頭龍見てみろ。武器がたくさん並べてあるぞ」
「そうですね。俺は武器なんて使いませんが」
「武器と言ってもバズーカー砲とかは無いようだな。」
「お客さん、バズーカー砲が欲しいのかい?」
「いや、別に欲しくはないけどさ。品揃いが悪いなと思ってね。」
「俺の並べている武器にケチをつけるのかい?」
「なんだよ、そんな言い方はないだろうが!」
「言いがかりをつけてきたのはあんたの方だ。腹が立った。ここで店終いだ。ちょっとあんた、こっち来な。社会というものを教えてやるから」
「社会を教えるだと?」
「さっさと来いと言ってるだろ!」
俺は商人についていく。
よく見ると商人はバズーカー砲を持ってる
「ちょっと待てよ。それはバズーカー砲だろう?」
「これは特別商品なんだ。特注でね。ちょうどいいから、お前に食らってもらうよ。」
「んだと?てめぇ!」
俺は意外にこの商人を侮っていたところがあり
油断していた
この商人、動きが素早く気付けば俺にバズーカー砲が着弾
俺は爆風と共に吹っ飛ばされる
「俺をただの商人だと思ってただろ。甘いな。世の中にはな、心で思っていても口に出さない方がいい事もあるんだ。商人に向かって品揃いが悪いなんて二度と言うんじゃねぇぞ!」
俺は立ち上がる
商人の想像を超えて俺は平然としている。
身体中に霊力を行き渡らせているからだ。
俺の霊力が巨大な為、防御は硬い
それがあまりにも意外だったようだ。
「社会勉強ね。じゃあ今度は俺が社会を教えてやるよ」
と同時に商人は吹っ飛ばされる
衝撃と共に商人は口から血を吐く
「一体、何をした?」
「ただ単に魔力で吹っ飛ばしただけだ。バズーカー砲みたいだろ?」
「なるほどな。魔術師って訳か。俺も神の端くれ。たとえ魔術師相手だろうと望む所だ。」
「ちょっと違うな。黒魔術師だ。」
「何だと?黒魔術師?」
黒魔術 漪波倒置
商人の世界がひっくり返る
実際にはひっくり返ってはいないのだが
黒魔術による意識の混乱
商人は完全に参ってしまった様子
「お前みたいな奴でも神なんだな。神は1人残らず回収すると決めていてね。名前を言えよ」
「名前を言えば、この魔術を解いてくれるのか?」
「解いてやる」
「ヌト!!」
神の腕輪が光りヌトは収納された。
神が収納された事で路上に並べられた武器が残る
「どうだ、天神。何か欲しいのはあるか?」
「いえ、私は武器は使いませんので」
天神は雷魔術師だからどうやら武器はいらないらしい。
この調子なら九頭龍もそうだな。
ナルカミは武器とは無縁だろう。
欲しい武器は無かったので
俺たちはこのまま立ち去った。




