その6 街角聖女
その6
しばらくして、包まれた布が解かれると
あたりはすごく明るいのです。
まわりの壁も大きな屋根もなくなっていて
わたしはかわいい差し掛け屋根の下で、外の通りに向かっていました。
二本の通りのぶつかる角にあったお家の跡は広場のようになって
道の向こうの河まで見通せます。
「こんなものでどうじゃな」
差し掛け屋根に小さな魔道ランプが吊るされ、お供えの台がおかれ。
「廃材で作ってきたぞ」
と、おじいさんがベンチを置き。
「ジンゴロさんは花が好きじゃったからの」
と、おばあさんが可愛い草花を植えてくれます。
「これなら嬢ちゃんもさびしくなかろう」
お年寄りたちは、おとうさんの昔話を少しして、それぞれ帰って行きました。
「じゃあな、嬢ちゃん」
『おやすみなさい、良い夢を』
わたしはみんなに小さな祝福をかえします。
日が暮れると小さな魔道ランプに灯がともり
わたしをほんのり照らしてくれます。
にゃ―・・・
虎縞の若い猫がやってきました。
マリクのおうちにいた猫ですが、お引越しに置いていかれちゃったのでしょうか。
ごめんね、おうちはもう壊れちゃったよ。
おそなえのおかしをあげて、青いマントを少し拡げて。
夜は冷えるから、ここにおいで。
心地よくうずくまった猫の周りを、すこし暖かくしてあげて
いやなものは入れないようにして、さあ、これでこの子も安全です。
『おやすみなさい、良い夢を』