その2
その2
おとうさんはそれからもずっとおしごとして、おはなやいきもののついたきれいな家具をつくり続けました。
毎朝いちばんに「おはよう」って頭をなでてくれるので、『今日もがんばってね』とおうえんし。
「おやすみ」ってあたまをなでてくれるので『ぐっすりねむれますように』っておへんじします。
何人かおでしをとったけれど、おとうさんほどうまく彫れる人はいません。
おとうさんはわかいころずっと旅をしていて、こういういきものが大好きだったのです。
そのだいすきないきものたちを、かたちにしてわたしにみせてくれるのが、たのしいんだよといっていました。
でも、おでしたちはいきものよりも銀貨のほうがすきでしたから
おとうさんみたいには彫れなかったのです。
おなじうちの中でおでしたちがおしごとやべんきょうをしているので
外へ出られないわたしも、いろいろなことをおぽえていきました。
ここシトリンのまちは王都の北でゆたかなこくそうちたいに近く、商人たちがたくさん住み
おとうさんの家具は生活にゆとりのある人たちがきねんびやおくりものに注文し、ずっと大事に使ってくれるのだそうです。
もっと大きなこうぼうをもてと言われ続けているのですが。
「娘と別れる気はない」と、引っ越して来た当時のまま。
そう、わたしは居間も仕事場も兼用の、大きな部屋の柱に彫られているので
ここから動くことは出来ないのです。