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シルバニアファミリー物語  作者: ぴちぴちピッチ
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第08話 こちょうのゆめ

始まりは一発の凶弾だったと後世で歴史学者達が激論を繰り広げた。

建国記念日の祭典で第三皇子を狙った教団法王国の使者だったと宮廷画家達によって描かれた。

幼き死者を悼む想いは戦火を生み、やがては大陸全土へ続くだろうと数学博士が導きだした。

その知らせを聞いた皇帝は重い腰を上げ帝国に仇なす敵国への報復としての戦争を宣言した。


戦場で引き裂かれた哀れな少年少女の小夜曲をご覧あれ

深夜遅くに整備室のキョウカのもとにフランが飛び込んでくる


「キョウカさん聞いてください〜アーニャから補充兵の部屋割りの進言があったのですが…うぅ…」


「ああ聞いてるよ、あの短時間で仲のいい者同士を調べるなんて一種の才能だね〜」


「でも!でも!男の子同士、女の子同士仲良くするのはダメですよ〜」


フランの妄想を知らないがキョウカは不思議そうな表情をすると


「ん?そう?男の子でも女の子でも仲良くするのは良いんじゃない?」


フランの言う意味がわかっているのか、いないのか、わからない返答をする、そんな2人のやり取りの最中…チリン…何処からか小さな鈴の音がした、その音に突然2人の雰囲気が変わった。


「場所は?」


「司令室」


それだけ聞くとフランは脱兎の如く整備室を出ると司令室に向けて走り出した。キョウカは窓から走り去るフランを確認すると、そのまま窓から身を出し猫科の動物のような靭やかな動きで屋根に登ると屋根伝いに駆け出す。



深淵を思わせるような闇の中に蠢く3つの影、バルトラント帝国駐屯基地司令室の書類を持ち上げ確認しては寸分違わない位置に戻す、そんな作業を黙々と繰り返す、まるで機械のように正確無比な作業を繰り返しているが、些細な違和感に気がついた影が一人いた。


「待てッ罠だ!!」


声を潜めての発言だったがその声で自分たちの相棒が女だったのかと思う反面、本来有り得ない声を発した事で非常事態を察知し手にしていた書類を投げ落とすとそこには蜘蛛の糸ほどの糸が付いていた。

廊下からは罠を仕掛けた何者かの足音が迫っているが相手は一人、扉を開けた瞬間喉笛を切り裂く、その後、罠にかかったマヌケ2人を逃してから死体を隠せばまだ作戦は可能だろう…さぁ扉を開けろ、私の姿を見た瞬間がお前達の死ぬときだ!しかし扉が開く気配は無い。

不審に思った暗殺者は細心の注意を払いドアノブに手をかける、その時背後に強烈な殺気が迫り振り向くと銀髪の女が窓を蹴破り、体勢を一瞬で整えると小銃を引き抜き扉の前にいた私に向けて銃を構える


「諦めて投降しろ!」


なるほど頭は切れるようだか所詮は素人、ならば先程と何も変わらない喉笛を切り裂くだけだ!銃口と指の動きに注意しながら乱入者に肉薄する、そして懐に飛び込むと短剣を突き刺す、だが乱入者の反応は私の予想より遥かに早く、咄嵯に短剣を持つ腕に蹴りを入れてきた、それならその脚を切り落としてやる!ガキィィン!!鋼鉄をも切り裂く私の刃が切り落とせないだと!?義足!?よく見るとその腕も金属の義手か!?初撃を受けられて、窓を蹴破った音で見張りも気がついたようだ、最早2人を連れて逃げることは不可能、自分の身は自分で守れ、私はココで逃げさせてもらおう、そう決断すると扉に向けて走り出した、そして扉を一閃、そのまま体当たりをして廊下に飛び出す。

パァーン、パァーン、背後から銀髪の女の放った乾いた銃声が聞こえたがあの2人は殺されたのだろうか?仮に捕まったのだとしても大した情報も持ってない、ただの子供だ、どうってこと無いだろう。


深夜に鳴り響く警報の音、敵襲を知らせるサイレンとサーチライトの中、影の中を疾走るように移動する。逃げる女の顔を月明かりが照らす。まだ幼い顔立ちに不釣り合いな鋭い眼光、少女は逃走しながら思考する、今はここから生きて帰る事を考えなければ。少女は通路を走り抜けると、とある部屋に入る、そこは普段は使われていない空き部屋のはずだ。少女は壁際まで移動し、闇の中へ身を潜める。

しばらくすると黒髪に豊満な肉体の女が入ってきた、太極人がいると聞いていたが対峙した瞬間、同業者だと察知した、ならば身を潜めていても無意味だ、だが勝機はまだある、あれだけデカい胸と尻ならスピードに勝る私が肉薄すれば隙はある、その一瞬のチャンスを狙え。


「なぁ…私は子供を虐めるのは趣味じゃないんだ、潔く死か降伏か好きな方を選びなさい…」


黒髪の女の放った格下を相手にしているような言葉に私の殺していた怒りの感情が蘇る、舐めるな!勝機があるのはこの私だッ!短剣を引き抜く動作の中に閃光弾掴み、そのまま女に向けて投げつけると一瞬の閃光が走りその中、黒髪の女に向けて斬りつける。


………はずだった……


なのになぜ私は地に伏しているんだ?黒髪の女は目を潰されている、両手も自然体で垂らしたままだ、だったら何が起きたんだ?私の足が熱い、恐る恐る見てみると踏み込んだ右足首から下が無く鮮血を吹き出していた。


「痛い思いをさせて悪かったね、でも君を説得できる言葉が見つからなくてね、でも君ほどの実力者を野放しにする事は出来無いから斬らせてもらったよ…」


「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!」


余りの出来事に絶叫を上げてしまう、だがそれで終わりではない、黒髪の女がさらに非情な一言を投げかける


「なぁ…泣いてないで早く死ぬか降伏するか決めてくれないかな、それともダルマにされないと言ってる意味わからないのかなぁ」


そう言うと私の左手が落とされた、女は相変わらず自然体で立っているだけで何をされてるのか全く判らない位、実力の差は歴然だった。


私の人生はここで終わるのか、いや、この女にせめて一矢報いるまでは死んでたまるか!そうだ、あの女は今武器を持っていない、だが私にはまだ右手に武器が残されている、そう思って私が短剣を振り上げた瞬間、ヒュンと小さな音が鳴り、右手が温かくなる感触を感じた、そこで何故武器を持ってない左手を落としたのか理解出来た、これは私が出来た唯一の選択、自決する道を相手が残していたのだ!残された右手と左足を落とされた私は口枷を噛まされ帝国の捕虜となった。


「キョウカさーん、向こうにいた2人は何も知らないようでしたから憲兵に引き渡しました…けど…こちらは…治療が終わるまで引き渡せませんねぇ…かなりの使い手のようでしたけど自決も降伏も選ばなかったのですね……」


銀髪の少女が四肢を切断され口枷をはめられた少女を見て、ため息を吐きながらそう言う。


「仕方がないわね、目を覚ましたら、また人生の選択してもらうけど、今度は死ぬことは絶対許さないわ、時間はたっぷりあるんだから道具としての生き方ではなく人としてどう生きたいのか、もう一度考えて貰うわ」



「あのね…ショックが大きいと思うけど気をしっかりもってね」


誰かの声に捕虜の私への拷問の始まりかと思った。私は目隠しを外されるとあの時の銀髪の女に抱きかかえられていた、逃げようと抵抗したが銀髪の女が力を入れているわけでもないのに全く動けない、その理由を確認するため自分の置かれた状況を見て愕然とした、そこには手足の無い芋虫のような醜悪な身体をした自分がいた、受け入れることの出来無い事実に私は意識を手放した。二度目の覚醒は事実を受け入れ冷静に自分の身体を見ることができた、だからこそ未来のない自分に涙が止まらなかった、そんな私を憐れんでなのか、あの銀髪の女がきつく抱きしめてくれた。さんざん泣いてもう涙も枯れ果てたと思った頃銀髪の女が話しかけていた。


「落ち着いた?私はフランチェスカ・エカテリーナ、みんなからはフランって呼ばれているわ、ねぇ、貴女の名前聞かせてもらってもいい?」


名前なんて無かった、奴隷商人に買われてからは番号で呼ばれていた、だから名前を聞かれたことにも驚いたがこんな化け物のような姿になっても普通に接してくれる事に更に驚かされた。


「……道具に名前は……ありません、仲間はナンバー917と呼んでました」


フランは少し困ったような表情をしていたが何かをひらめいたような表情をすると


「ナンバー917だからクイナちゃんなんてどうかな?」


「好きにすればいい…」


「それじゃあミクちゃん、そろそろ、そ、その…貴女のオムツを変えたいんだけど良いかな…」

フランはミクを膝の上から下ろすとミクの股間に手を伸ばした。


「えっ!?ちょっ、ちょっと!」


「ごめんなさい!嫌よね、女の子同士だけど恥ずかしいよね、でも汚れたままだと痒くなるの、そうなったら、そ、その貴女は痒くても掻く事が出来無いから…」


確かに今のミクには四肢が無い、恥辱に顔を隠す腕もなく乙女の秘部を隠す脚もない、その事実にフランのする事から顔を背けて涙も枯れ果てて悲壮な感情を訴えることもできず、すべてを諦めて大人しく従うことにした。


それから数日の間フランはミクのお世話をするようになっていた。いつものように、朝起きるとお湯で濡らしたタオルで尻の穴も含め全身を拭かれる、それからキョウカが用意した義肢を装着した、フランの物と比べれば簡易的な物だかミクにはこれで十分だ、今日から義肢の訓練のため、フランの介助を受け歩く練習をする。


「流石ね私の時と比べたら上達が早いわ、これならすぐに一人で歩けるようになるわね」


クイナの身体を支えるフランの両手両足に付いた義肢を一瞥すると



「フランも……あの女にやられたのか?」


「………そうだよ…」


「…恨んでないのか?」


「…クイナは身体が治ったら……敵兵の私を殺すの?」


「……わからない……」


「……そう……私はキョウカさんを恨むつもりはないわ……だってあの人は私にとっての恩人なんだもの……」


「……どういう意味だ?」


「言葉通りよ、人形だった私はあの人に、人としての魂を貰ったの、それにあの人がいたからこそ今の私がここにいるんだから…」


そう話すフランの顔は凄く優しい表情をしていた。


そしていよいよクイナのリハビリも終わりの時が近づいていた。クイナの前にフランとキョウカがあの日無くした短剣を手渡し、最後の選択を迫られていた。


「もう義肢に慣れたみたいだね、それじゃあもう一度聞くけど、クイナは何をしたい?」


その問いに対してミクは

「死にたい……」

と答えた。


フランが何か言おうとしたときキョウカがそれを遮るように話し出す。


「ねぇクイナ、私は貴女のことが嫌いじゃないの、それはこの数日貴女を見ていて分かったわ、だからこそお願いがあるの」


「……」


フランは二人の様子を黙って見ていた。


「私への復讐でも良い何でもいいから貴女を生かした意味を考えて生きて、出来るなら幸せになりなさい……」


「…わかった」


フランも涙を流しながら笑顔でクイナを抱きしめる。


「ありがとう、生きる事を選んでくれて、さぁ貴女は今度からは一人の兵士よ、貴女の活躍を期待するわね」


「フランも……元気でな……」


「えぇ!貴女も頑張って!」


「それじゃあ帝国と法王国の境界に行きましょう、そこでお別れよ」


キョウカの運転する蒸気自動車に乗り込み森林の中を走りだす、その間車内では全員終始無言だった。しばらくすると国境に差し掛かり、フランとクイナはお互い握手を交わし、フランは涙を隠しながらクイナに別れを告げた。次に会うときは敵同士の身になるのだからからこれ以上余計な事は言わない、だけど帰りの車内でフランは祈りを捧げずにはいられなかった…願わくば彼女ともう一度彼女と戦場で会わないように…

この話は治療に時間がかかる為、時間軸が後々の話との整合性が合わなくなる可能性があります。

その辺はあまり深く気にしないでくださいッ

ご意見、ご感想ありましたらビシバシッ!お聞かせくださいませッ!(`・ω・´)ゞ

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