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まいたけさんシリーズ

[短編]まいたけさんのお菓子〜飴玉で上司の口害を癒しにするの巻〜

掲載日:2021/12/11

「課長。書類です」

「もう少し早く出せないのかなあ?それと、いくら事務職だからってそんな愛想の無い顔は良くないでしょ。マスクして顔が見えないんだからって、サボってない?」

「…申し訳ありません。気をつけます」


 イラッとしながら、頭を下げて席に戻る。


「口だけだねえ。全然笑いもしない」


 口だけはてめえだろうが。


 殺意を込めてボールペンを握る。

 小さな課とはいえ、課員がじわじわと減っていくのはこのクソ課長のせいだ。


 役に立ちもしない批判ばかりをしてくる。


 イライラとキーボードを強打しながら今日も仕事をする。

 イライラは伝播する。

 職場の雰囲気は最悪だ。





「あー!もうやだー!」


 四つ辻にある立ち飲み屋『もっきり』で日本酒をあおるように飲む。


 向かいにある八百屋から椎茸を買って、店主に炭火で焼いてもらう。

 ゆるい飲み屋で、頼めば八百屋にあるものをすぐに調理してくれる。


 その料理を目当てに来る客も多い。

 隣にいる常連もそのひとりだ。


「ねえ、まいたけさん、聞いてくれる?」

「はいはい、聞いてますよ。今、ニラと舞茸の炒め物食べたら話しますから」


 もぐもぐと専用踏み台に乗ったまいたけさんが話す。


 まいたけさんはお酒に強いがあまり飲まない。五分刈り頭の小さなおじさんだ。

 丸顔でひどく狭い富士額に、眉と唇は太く、ぎょろぎょろとした目に、鼻の脇には大きなホクロのある特徴的な顔。


 時々ここで会う。


「もう何の役にも立たないなら、黙ってろって!それならまだ猫が鳴いていた方が和むわ!」


 女子にあるまじき口調でわたしは叫んだ。

 まいたけさんは、うんうんと頷いて、炒め物を食べ終わると、


「それならいいものありますよ」


 と言って、ポケットから飴玉の入ったガラス瓶を出した。


「これをその課長に食べさせて下さい」


 太い眉と目をにっこりと弓形に緩ませて言った。





 翌日、まいたけさんに渡されたガラス瓶に『のど飴』とラベルを張って、課長に渡した。


「こんな気遣いもできるんだねえ、きみ」


 イラッとしたが、課長が飴を口に入れてマスクをすると、劇的な変化が起きた。


「にゃあん。にゃにゃにゃにゃあん。にゃ?」


 なんて言った?


「…課長、書類いただいていいですか?」

「にゃあん。はい」


 その後も課長は必要な言葉以外はすべて『猫語』になっていた。


 しかも、かわいい猫の声だ。


 時々にやにやして課長を見る。


 課長が全ての課員からニヤニヤと見られて少し口数が減った。


 そして、職場の雰囲気は少しだけ良くなった。








効能は結構長い。

勤務外も有効。

家でもにゃんにゃん言ってる。



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― 新着の感想 ―
[一言] 猫ですか!何か可愛いですね。本人に録音して聞かせたいです。
[良い点] 飲み屋さんが『もっきり』 なんですね。 まいたけさんのポケットには理想的なものがありましたね。 余計な批判がなくなって、しかも猫語に変わるとは。 職場の雰囲気も家の雰囲気も、長期の服用がで…
[良い点]  まいたけさん!! [気になる点]  まいたけさんがモテるかどうか [一言]  まいたけさんとニラと舞茸の炒めもの食べたいです。  顔真っ赤にして怒ってても、罵声が「にゃー!!」だったら…
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