第4章 第9話 お前さえ
2018年 12月20日(木) 11:24
「……やば、寝過ごした……」
入院、診察、ケーキ屋ときて4日目。今日こそ学校に行くぞと意気込んでいたが、結果はこの有様。ゴミ大学生か俺は。
「まぁ仕方ありませんよ。朝5時までケーキ焼いてたんですから」
テーブルに並んだ失敗作たちを見てリルは言う。井出さんに教えてもらったことを忘れないうちにと練習したのがミスだった。元々昨日は徹夜だったんだし、もっと早く布団に入っておくんだった。
「こんなに焼いてしまっては食べきれないでしょう。仕方ありません。私が消費してあげます」
「言っただろ。リルにはもっと美味しいものを食べてほしいんだって」
「いいのに……! 充分おいしそうなのにぃ……!」
確かに味的には標準的なケーキの水準には達しているが、デコレーションがな……どうにも気に入らない。本番ではフルーツなんかも使うことを考えるともっと精錬しておく必要がある。
「今から学校に行ったら昼頃だろうし、みんな食うだろ」
冬なのをいいことに放置していたケーキを切り、買っておいたケースに入れ、まとめて手さげ袋に入れたが……。
「重い……」
「仕方ありません! 私が食べて量を減らすしか……!」
「気合い入れるか……!」
「だから! 食べたいって言ってるのにぃっ!」
2018年 12月20日(木) 12:27
「おーひさしぶりだな主水っ!」
「ようようさびしかったかようっ!」
教室に入ると、後ろの方で総菜パンを食べていた金間と真壁が駆け寄ってきて肩に腕を回してきた。一昨日も来たんだけどな。
「悪かった……芽依と月長のこと」
こいつらにはまずこのことを謝らなければならない。金間は芽依と。真壁は月長と付き合えるよう協力するという話だったのに、失敗という結果で終わらせてしまった。……そういえば月長はまだしも、なんで芽依は金間と付き合わなかったんだ?
「気にすんなよ! 女なんて無限にいるんだからな!」
「だからお前も十六夜さんのことは忘れて別の相手見つけようぜ!」
あぁそっか……。俺は十六夜のことが好きってことになってたんだっけ。まぁ告白に成功した奴が自殺なんてするわけがないよな。下手したらフられたから自殺したみたいな話になっているかもしれない。
まぁとにかく、これで状況は理解できた。金間たちはフられたことで、女子組とは一緒にいられなくなった。色々気まずいだろうし、そうなるのも当然だろう。だが、
「金間、真壁。これ適当にクラスに配っといてくれ」
お前がちゃんとやっていてくれれば、こんなことにならなかったんだ。
「樹来、少しいいか」
「……ああ」
なぁ、ヒーロー。俺みたいな脇役にもちゃんとわかるよう説明してくれよ。




