表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第4章 高1冬・聖夜祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/126

第4章 第7話 ハーケン

2018年 12月19日(水) 05:40




「おはようございます」

「はいおはよー」



 朝……と言ってもまだ陽が出たばかりの早朝。俺は駅前にあるケーキ屋、サジタリウスに来ていた。理由は昨日伝えた通り、見学のためである。



「すいません、いきなり見学したいなんて言って……」

「いーよいーよ。もちろんこき使うからさ」

「はは……」



 愛想笑いが上手くなっている自分に嫌気がさしながらも、裏口から店の中に入る店長の井出さんについていく。店内はごく普通のどこにでもあるケーキ屋という感じだったはずだが、厨房から見るとずいぶんと違った印象だ。



 オーブン、冷蔵庫、作業台……。どれもこれも、大きい。せいぜい1日数百のケーキのために、こんなに大きな厨房が使われているのか。



「なんか、すごいですね……!」

「そう? 普通だと思うけど」



 思わずテンションが高くなってしまった俺に対し、軽い見た目の井出さんが少し引いた顔をした。まぁ毎日見ている人と初見の俺では印象も変わるだろう。



「それより、朝早いけどちゃんと動ける?」

「寝てないんで大丈夫です」

「ちょっとそれは……」



 本当に大丈夫なんだ。陰キャはだいたい夜型だから。それに、



「死なないのなら何でもできます」



 どうせ学校もあるから8時くらいまでだし。




2018年 12月19日(水) 15:40




 気づけば10時間経っていた。



「これで軽く一通り教えられたかな」

「ありがとうございます!」



 どうしよう。楽しかった。確かな疲労感がどこか心地いい。



「じゃあまぁ……これくらいかな。少ないけど取っといて」



 井出さんがロッカーを開けて俺に背中を向けてコソコソし、封筒を差し出してきた。しかもやけに薄い。これってもしかして……給料……?



「いやそんなっ! 本当に教えてもらっただけですし……受け取れません!」



 こき使うと言っていた割に全然仕事押しつけられなかったし、普通のケーキだけでなくモンブランやシュークリーム系まで教えてもらった。しかも夜やるはずの仕込みまで見せてもらったし、その上お給料だなんてとんでもない。



「まぁまぁ黙って受け取ってよ。大人には大人の事情ってもんがあるんだから。恩師の息子さんを教えるなんて光栄なことさせてもらったんだよ? せっかくなら最後までかっこつけさせてよ」



 そう……言われたら……何も言えない……。



「じゃあ……ありがとうございます……」

「はい。あ、ちゃんと友だちに宣伝だけはお願いね? クリスマスケーキはぜひ我がお店でお買い求めを。サービスするからさ」

「はい……なるべく……」



 井出さんには申し訳ないが、俺に友だちはいな……少ないから、ご期待には添えそうにない。



「それとさ」

「はい?」



 荷物をまとめて厨房から出ようとすると、井出さんに呼び止められた。そして一言。



「よかったらうちでバイトしてみない?」



 そんな予想外な提案をしてもらった。



「主水くんなら即戦力だし、なにより楽しそうだったから。結構向いてると思うよ。時給は千……1150円くらいかな。シフト全然融通利かすからさ……どうかな?」



 バイト……? 俺が……?



「嫌なら全然いいんだよ? でも将来料理系の道に進むなら色々紹介できるしさ。こう見えて私、決行色んなところに顔利くよ?」

「しょう……らい……」



 考えたことがなかった。いや、考える余裕がなかった。昔はやりたいことがなくてとりあえず大学って感じだったし、今は生き返ることしか目標がないから。



 でも生き返ったその先。今後何十年も続くであろう道に、一つの道標を立てられるなら、俺は――。



「……すいません。少し考えてみていいですか?」

「ん。いい返事待ってるよ」



 井出さんに再度礼をし、サジタリウスを後にする。



(なぁ、リル……)

「私が決めることではありません」

(そう……だよな……)



 生き返ること最優先なのは変わらない。それでもこれはやり直し。なんとなくで決めた大学進学を取り下げることもできるんだ。



 リップサービスだろうが、初めて何かに向いていると言われた。何をやっても中途半端な俺がだ。まぁ甘いものが苦手というどうしようもない弱点はあるのだが……料理系という道か……。



(リルぅ……)

「まぁ……相談くらいは乗りますけど」

(ありがとう。じゃあさ……)



 突然、さっきまで電源を切っていたスマホが震えた。長い……電話か? 相手は……七海……か。



「もしも……」

「もしもし主水っ!? あんた学校にも来ないで何してたのっ!?」



 どうしよう。なんかめっちゃ怒ってる。今はテスト返却と解説期間だからテストを受けていない俺は行かなくていいのだが……いや聖夜祭関連か……!



「ごめん、すぐ学校行く……!」



 表通りに出て駅まで駆ける。ここからなら20分前後で到着するか……。



「いいよ。こっちがあんたの地元来たから」



 視界の隅。サジタリウスに併設されているカフェに見覚えのある人物が二人。



「サジタリウスってケーキ屋さんわかる?」



 そこにはスマホ片手に電話している七海と、



「芽依といるから。ちゃんと話しなよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今回もよかったです~大変だとは思いますが更新頑張ってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ