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こんなはずじゃなかったのに。~ボッチだった高校生活をやり直します~  作者: 松竹梅竹松
第3章 高1秋・文化祭

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第3章 第37話 お化け屋敷~芽依の場合~

 月長との事故。キスのことで頭がいっぱいになっていた俺は、お化け屋敷の中にいながらも正気を取り戻していた。



 だからラッキーだった。さっき出会った怯え散らかしている芽依を助けてあげられる。




「ももも主水っ、たす、たすけっ」

「落ち着け芽依! 大丈夫、ここなら……」

「ギャァァァァァァァァっ!」

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」




 やっぱり無理! 怖い! ここ怖いよほんとっ!



「ひよぇぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「芽依待って置いてかないでごめんなさいごめんなさいっ!」



 血まみれ人間の襲来により逃げ出す芽依と、謝りながら追いかける俺。もう限界だ。限界。これ以上ここにいたら二人とも死んでしまう。



「ストップ! 追ってきてないみたいだ!」

「ひぇ……ほんと……?」



 一度立ち止まり、これからの作戦を考える。



「とりあえず一直線に進もう。この迷路をこれ以上行くのは無理だ。諦めてリタイアするんだ」

「うんっ……うんっ……!」



 ポリ袋の壁を突破し続け、体育館の壁に出ることを提案すると、涙目の芽依がコクコクと頷いた。だがどうしたことか、芽依は動こうとしない。



「どうした芽依。早く行こうよ」

「そうだね。ほら、行こう?」

「「っ!」」



 こ、こいつ俺に先導させる気だ……!



「主水男でしょ!? 女の子を守ってよ!」

「ふざけんな令和は男女平等の時代だ!」


「れいわってなに!?」

「ごめん忘れてっ!」



 くそ……罵り合いをしていても一生迷路から抜け出せないままだ。



「わかった……。でも懐中電灯だけ貸してくれ」

「うん……。ごめんね……ごめんね主水ぉ……」



 芽依から懐中電灯を受け取り、目の前を照らす。道はどうなってんだ……? とりあえず右は行き止まりみたいだが……。



「も、主水……!」



 他の場所を照らしていると、へたり込んでいる芽依が俺の学ランの先をちょいちょいと引っ張った。



「右……右に何かいる……!」



 芽依に言われて慌てて灯りを向けると、いた。顔を下に向けて座っている、女子高生が。



「お、置物だろ……の割りにはよくできてるけど……」

「でもっ、でもさ! もし人だったら……追ってくるパターンじゃない……?」


「だ、大丈夫……。たとえ動き出したとしてもほら、俺たちもう仕組み知ってるんだから……」

「そ、そうだよね……! もしもーし! 動いても怖くないからねー!?」



 こ、これで大丈夫。やることがわかってるんだから怖くは……。



 そう思って別の場所に灯りを向けようとした瞬間、



「みーつけた」



 耳元で、芽依のものではない、女性の声がした。それに呼応するように、ふらふらと女子高生が立ち上がる。その顔はひどく爛れていて……。



「私の顔……」

「「ひっ」」


「返せぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」



 俺たちが叫び出すと同時に、ゾンビのようにゆっくりと近づいてくる女子高生。



「め、芽依逃げ、逃げるぞ!」

「たてっ、たてたて立てないっ」


「だって! ギブですギブ! 許してっ!」

「じゃあ私の顔、返して?」

「「ひいっ!?」」



 か、壁の中から腕がっ! 俺と芽依の脚を掴んでっ……!



「芽依ごめんっ!」

「うぇっ、ひゃぁっ!?」



 もう無理だ限界! 俺は芽依の手を掴み、女子高生とは逆の方向に走り出す。壁とかそんなの関係ない。頭の中にあるのは、芽依と俺が助かることだけだった。



「っあ!」

「あぁっ!」



 何枚ものポリ袋の壁を突き破ると、気づけば硬い体育館の壁が目の前に現れた。脱出……できたのか……。



「はぁ……たすかったー……」

「も、主水……手……」

「え? あ、ごめん!」



 全く意識してなかったが、芽依の手を握っていたんだった。嫌いな奴に触られるとか迷惑だろう。慌てて掴んでいた右手を放す。



「……ちがう。そうじゃない」



 十六夜のような口調で、芽依がなぜか俺の手を自分から握ってきた。しかも指を絡めて、これは……。



「怖かったんだから、少しくらい甘えさせてよね」



 恋人繋ぎを強要してきた芽依の顔は、暗闇でもわかるくらい赤かった。



「芽、依……?」

「か、勘違いしないでよね。別に主水だからってわけじゃないから」


「わかってるよ。誰でもいいんだろ?」

「そういう……わけでもないけど……」


「とりあえず体育館出るか?」

「ううん。ここでいい。明るいと……顔見られちゃう……」


「まぁこんな姿他人に見られたら勘違いされるもんな。カップルって」

「っ」


「困るよなそれじゃ。せっかくがんばってリア充グループに入れたのに、俺なんかが隣にいたら迷惑だ」

「そんなっ……つもりじゃ……!」


「金間とかどうだ? 背が高くて顔もいい方。少しチャラいけど、いい奴だと思うぞ」

「わ、わたしは……もん……」


「そうだ。一緒に後夜祭行ってみたらどうだ? なんかジンクスがあるらしくてな、男女でいく……」

「わたしはっ!」



 反響する声。強まる握力。吹き出る手汗。それが意味することは、



「わたしは、主水と行きたい……!」



 俺への、好意――?



「め、芽依ってジンクス知ってる……?」

「ジンクスなんて知らない! わたしは主水と一緒にいたいのっ!」



 あっぶな、勘違いするとこだった……。ジンクスを知らないんじゃ、好意ではないはず。そりゃそうだ。芽依が俺なんかのことを好きになる要因がない。



「だからっ! わたしと……!」

「あのー……」



 ふと、誰かに肩を叩かれた。振り返ってみるとそこにいたのは、



「スマホ、落としましたよ?」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 顔面が爛れた、女子高生。



 彼女の姿を見た俺の視界は、さらに深い闇の中に消えていった。

この話でゴールデンウィーク毎日2話投稿ウィークは終了です。2話……?


ありがたいことに日間ランキングや週間ランキングに載せていただいた期間があり、多くの方に読んでもらう機会をいただけました。全ては読んでいただき、ブクマや評価をしてくださったおかげです。本当にありがとうございます!


明日からは最終日。物語が大詰めを迎えます。この先のお話もお付き合いいただけると幸いです。お付き合いの話に入るので。


あとブクマとか……評価とか……感想とか……レビューとか……もしお暇でしたら……! です!

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[一言] ゴールデンウィークの毎日2話投稿お疲れ様でした。これからも、頑張ってください。
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